夢小説

□第一話 初めまして
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三月。暦の上では春とはいえまだまだ肌寒いこの季節。空はどんよりと曇っていて、杉田真白は朝から憂鬱だなと思っていた。
なぜなら今日、本庁から転属となった元エリート新米刑事が来る日なのだから。
しかも歳が近いという理由だけで、堂島さんと共に教育係に任命されたのだからたまったものではない。
すぐに抗議したのだが女と言うだけで下に見られているので、誰も私の意見を聞くものはいなかった。
仕方なくいつも何かと助けてくれる堂島さんに、申し訳なく思いつつ新米刑事を待っているのだが約束の時間になっても来ない。
どうしたものかと、呆れていると約束の時間の五分後にやってきた。
案の定、大激怒した堂島さんに怒られているけどあまり反省の色は見られなかった。
まぁ確かに、都会からこんなクソ田舎に左遷させられたら僻みたくもなるよなぁと少しの同情心を持ちながら眺めているとふと、目が合った。
逸らすのも失礼だし、このまま黙って見つめ合うのも何か違うので愛想笑いを浮かべ自己紹介することにした。
「初めまして。杉田真白です。足立さん…でしたっけ?あなたの教育係に堂島さんと一緒に任命されたのでこれからよろしくお願いします」
「あぁ。よろしく」

その時の足立さんの顔はここにいる刑事たちと同じような顔をしていた。
お前には勝てそう。
そんな顔だ。
しかし生憎、私も刑事の端くれ。
堂島さんと肩を並べるとまでは行かないけど、そこそこ大変な任務も任されていて、そんじょそこらの男には負けないほど鍛えてもいるので。

何気なく差し出された手をゆっくりと握った。
瞬間、足立さんは膝から崩れ落ちた。
何が起こったか分からない顔をしている彼に、顔を近づけにっこり。
「どうしました?緊張して腰が抜けたんですか?」
「……やりやがったなこのクソアマ」
堂島さんに聞こえないように小声だったが、近くにいた私にはバッチリ聞こえていてああ、やっぱりこの人もこの署内の人と同じなんだと少しガッカリした。
握っている手を振りほどき、今度はしっかりと立ちいつの間にか大爆笑していた堂島さんに向き合っていた。
「足立。杉田をなめない方がいいぞ。こいつは女だが俺でも手こずるじゃじゃ馬だ」
「そうみたいですね〜」
何がそうみたいですね〜だ。
お互い第一印象は最悪だったが、これからこんな人と共に仕事をしなきゃいけないのかと思ったら少し胃が痛くなった。
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