夢小説

□1.5話 足立さん視点
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足立にとって女というのは、権力にすり寄って、金をせびって、骨の髄までしゃぶりつくし、目的のためなら男に媚びを売りまくって簡単に身体を許す。
その反面もう価値がなくなれば「はいさよなら」と言うそう言う人種だと思っていた。
現に巷で話題になっている、ここ稲羽市の生田目太郎氏の不倫相手の山野真由美もその一人だったから、足立の苛立ちは相当なものになった。
お茶の間でそこそこ人気があり足立もファンの一人だったからだ。
心のどこかで山野アナだけは違う。
何かの間違いだ、と囁く自分。
多分、本気で好きだったんだろう。
そんな最中の左遷先での杉田真白との出会い。

黒い、墨を落としたような黒髪で、セミロングの髪をストレートに背中にさげ、耳元から髪を一纏めに束ね高い位置で結ってあった。
パリッと糊の利いた白いシャツに、色気もなんもない黒いスーツ。足元はヒールの低い黒のパンプス。
歳は20代半ばぐらいだろう。背はパンプスのヒールと姿勢の良さも相まってか百七十センチくらい。
体型は標準よりやや細めで、自分的にはもう少し肉付きがいい方が好みだがまぁ妥協点としよう。
日に焼けていない白い肌に、温和な顔立ちは可愛い系で、やわらかな黒い瞳がその雰囲気を一層強めていた。
化粧っけはあまりなく、薄く引いた口紅と控えめなアイシャドウだけで厚化粧が嫌いな足立にとって第一印象は合格だ。

しかし

山野アナの事を自覚してからの女刑事。
しかも自分の教育係だと言うから始末が悪い。
教育係という事はこれから一年か二年はずっと一緒ということだ。
「(勘弁してくれ。女はもう懲り懲りだ)」
舌打ちしたくなるのを根性で抑え、ニコリと微笑み握手を求める。
少し強く握ってビビらせてやろうと思った足立の魂胆は、逆に転がされてしまい叶うことは無かった。
噂で聞いたことがある、合気道の垂直落下式握手だ。
何度か自分も試してみたが上手くいかず断念した記憶がある。
なのに、目の前のこの女はいとも簡単に習得している。
それが悔しくて、女に転ばされたという事実が腹立たしくて思わず素の言葉が出てしまった。
だと言うのに目の前の女は、少し眉間に皺を寄せただけですぐ愛想笑いを浮かべ、また俺に手を差し伸べてきやがった。
差し出された手を無視して立ち上がり、爆笑している上司に向き合う。
「こいつは女だが俺でも手こずるじゃじゃ馬だ」
確かにその通りだと思う。
なんで見た目はそこそこ好みなのに、中身が伴わってないのか。
足立は深いため息を吐いたあとこれからの一、二年は苦労することになりそうだと独りごちた。
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