夢小説

□第3.5話 足立さん視点 殴られた左頬が痛い。
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堂島さんと別れたあと、ふと前の職場にいた頃のことを思い出した。
まだ新人時代、とても可愛がってくれた先輩がいた。
その先輩が口癖のようにある事を言っていた。

「人間の最大の武器は、習慣と信頼だ」
(伊坂幸太郎著 ゴールデンスランバーより抜粋)

新人時代は何言ってんだ?としか思わなかったが、今思えばなるほどと思わざるを得ない。
残念ながらその先輩は立てこもり事件で犯人に発砲され殉職してしまったが、今ではとても感謝している。
まさかここに来て、その言葉の意味を理解するとは思わなかったからだ。

この警察署に就任当初、食堂である人物について話しているのを偶然聞いたことがあった。
「変わらないなぁ。お前は」
「人ってのは変わらないんだよ」
「変わらないと言えば、ここにずっと勤務してる森田さんのことだろ?」
「なんで?」
「あれ?知らない?森田さん、中を確認せずに九時頃に○○の扉を閉めて、十時頃に○○の扉を閉めて、十一時には○○の扉を閉めに行くんだよ。で、十二時半から十三時半までは、昼食とデスクワーク。その後は、自分の仕事を淡々とこなして帰宅するっていう具合に、いつも時間通りの行動をする人だよ。この近辺でも結構有名な人だぜ?森田さんは時計の代わりになるって言われたぐらいで」
「え?俺らの仕事って夜勤とか外回りとか不規則な勤務があるじゃん?森田さんは夜勤とかしてねーの?」
「あぁ。何でも持病があるとかでいろいろ出来ないらしい」
「上はなんにも言わないのか?辞めさせたり」
「何でもお偉いさんの息子とかだから、上も強くは出れないらしい。それに何も問題を起こしてないから辞めさせたいけど、出来ないらしい」
「そりゃまた厄介な人がいるもんだ」

その後は他愛ない話をしていたので内容は覚えてはいないが、なぜかその時の森田さんとやらの事だけは頭にずっと残っていた。


まさか、今回の計画を達成する上でその森田さんも巻き込むことになるなんてな。
真白にゆっっっくり来いと言われていたので最後の下見をしに行くことに。
着いた部屋は案の定、鍵が閉まっていて開かない。
困った振りをして通り過ぎた人に声をかける。

「すいません。この中に忘れ物しちゃって、鍵ってどこにあるんですか?」
「あぁ。鍵なら森田さんが持ってるけど、ってもう帰っちゃったか。スペアキーが、〜〜にあるから取りに行ったらいいよ」
「どうも」

ぺこりと頭を下げて、スペアキーの場所も知り俺は満足したので堂島家に向かうことに。

あぁ。明日が楽しみだ。
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