澤村大地
□君との距離まで
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最初は友達に誘われてついて行っただけだった。
そう
きっかけは、あの日……。
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友達「縁下ー!明日試合だよね?」
縁下「うん、県大会!」
私の友達が、同じクラスの縁下の周りに集まっていた男子バレー部の輪の中に入って行った。
友達「何高だっけ?
なんか強い所とやるんだよね?」
縁下「伊達工業だよ。」
西谷「ぜってー負けねぇ!」
友達「何時から?応援行くよ!!」
田中「マジかよ!やったゼ!よろしくな!」
友達は縁下から時間や場所を聞き出し、私の元へと戻ってきた。
友達「ソラ、お願い!!
明日の男子バレーの応援、一緒に行って!」
「え?男子バレー!?んー…別にいいけど。
もしかして誰か狙ってる?」
男好き とまではいかないが、いつもイケメンに
キャーキャー言っている恋多き私の友達は、バレたかと舌をペロッと出した。
友達「菅原先輩!」
「へー。」
友達「爽やかで優しそうでかっこいいなんて
最強じゃない?」
「本当にそうならね。まぁ、縁下達 最近また
頑張ってるみたいだし、応援してあげようか!」
友達「やった!」
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翌日。
「本当だ。爽やかそうで優しそうでイケメンだ。」
友達「菅原先輩ー!頑張って下さーい!」
友達の声は館内に響き渡り、黒とオレンジのユニフォームを着た男子達が一斉にこっちを向いた。
優しそうに笑った先輩は友達に向かって手を降り、田中と西谷はこちらをニラんでいた。
友達「本当に爽やかで優しいー!」
確かに。
「田中と西谷も呼んであげて。」
友達「……。」
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試合が始まり、私達は声を張り上げ応援した。
けれど……
友達「伊達工 デカイね。」
「うん。スパイクなかなか決まらないね。」
(頑張れ)
祈るように何度もつぶやいた。
けれど烏野の強面の先輩が放ったスパイクは、
壁の様なブロックに跳ね返されてしまう。
西谷が滑りこんで のばす手も届かない。
少しずつ選手達の顔が暗くなり、そして3番の
ユニフォームを着た先輩は覇気を無くした。
西谷「旭さん!?」
澤村「スガ!ライト!!」
3番の代わりに1番の先輩がとっさにトスをもらったけれど、やはりスパイクは決まらなかった。
終わりを告げる笛が響き、肩を落し立ち尽くしていた選手達が整列に走った。
「悔しいね…」
友達「うん、残念だったね。
……ってソラ泣いてるの?」
「え??あ、本当だ…。」
私は選手でもマネージャーでもない。
バレーもよく知らないし、バレー部の人達と特別仲がいいわけでもない。
今までの練習を見てきたわけでもない。
たったこの数十分応援しただけ。
だけどすごく悔しくて、いつの間にか涙が出ていたようだ。
「負けたけど、皆カッコよかった。」
友達「うん。」