ドラマ展開にしてみよう

□2話 図書室
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side yuuri

私が先に教室に入り、少ししてから教育実習生の山本さんが入ってきた。彼女が入ってきた途端、教室が静かになった。ざわざわすると思っていたから、少し驚いてしまったが案の定騒がしくなった。めっちゃ美人じゃんとか、髪の毛綺麗どんなケアしてるんだろうとか、彼氏いるのかなとか、高校生らしすぎて笑えてくる。

「みんな!静かにしよ〜」

学級委員が声をかけるとすぐに静かになった。このクラスの学級委員はザ・陽キャラでとても目立つ人物だから、その人の一声にみんな従うのだ。これもまた、私とは無関係な話だ。

「ありがとう、小林さん。皆さん、初めまして山本彩です!○○大学から来ました。主に日本史を担当します。まだまだ、分からないことだらけですが、一生懸命頑張るので3週間よろしくお願いします。」

自己紹介の定型文ともいえる文章をズラズラ並べていた。きっと真面目なんだろう。クラス全員の名前を覚えていそうだ。

「先生は彼氏いますかー?」

無駄に大きな声で叫ぶ男子に同調して、周りも各々叫び始める。煩わしい、静かに手を上げて聞けばいいものをなんでそんなに、、、と思ってしまう。

「彼氏はいるかもしらんし、いないかも」

「じゃあ、好きなタイプ教えてください!」

「う〜ん、好きになった人かな、。」

「「え〜〜」」

ごまかすのが本当にうまいと思ってしまった。いたずらっこのような笑顔で、あんなふうに答えられたら、何もいえなくなる。みんなの落胆のような声にもクスクスと笑いながら、話をする姿は、とても大人を感じた。この人のこと苦手かもしれない。

「これでHRは終わりです。昼休みとか社会科室にいるから、なんか聞きたことあったらきてください。」

ひらひらと手を振って出て行ってしまった。クラスの人は興奮さめやらぬ様子でずっと言い合いをしている。確かに、あんな美人な教師はアニメやドラマの中にしかいない。こんな場所で出会える訳がないのだ。彼女のことは苦手だが、昨日のこともあって興味がある。気のせいかも知れないが、確かめたいと思った。

彼女がなぜ何かを恐れるような目をしたのか。


昼休み

非常階段でご飯を食べた後、いつもどおり図書室に向かった。その途中で、突然声を掛けられて振り返る。

「なぁなぁ、太田さんっていつも一人でご飯食べてんの?」

『なんでですか?』

「ん?さっき非常階段から出てきたし、お弁当箱もってるからそうなんかなって。」

『そうですね。いつも一人ですよ。』

「ふーん。寂しくないん?私は寂しいで。」

『そうですか。』

何なんだこの人は、人の懐に土足で入ってきてなにがしたいのかまったく読めない。寂しくないのかと聞かれるとは良くあった。ずっと一人で生きてきたし、友達なんか必要最低限いればいいと思っていたから。普段の私だったら、こんなに冷たくあしらわないが、なにを考えているのか分からないし、つかめないから気分が良くない。私は大人には翻弄されたくない。

「今からどこ行くん?一緒に行ってもいい?」

『図書室です。行きたいなら勝手にどうぞ』

「ありがと、太田さん」

そんな顔して見つめないでほしい。不覚にもキュンとしてしまった。そもそも、なんで一緒に行きたいなんて言い出したのだろうか。それから、そのありがとうは何に対してなのか、何かも分からなすぎて、戸惑ってしまう。この人といると、調子が狂う。

図書室に着いて、私は読みかけていた本を取り出し、定位置に座った。

「なに読むん?」

『小説です。』

「なんで、そんな冷たいの?私のこと嫌い?」

『嫌いというか苦手ですね。、、、、でも、興味はあります。』

子犬のような眼差しを向けてきた。一体全体何がしたい。心臓の脈打つ音が早くなった。気持ち悪くなってきた。今まで感じたことのない、不思議な感覚に頭がついていけない。
体の異変を無視し本を読み進めた。そんな私を、少し遠くの席で見つめる彼女のことが気になって、まったく集中できない。昼休みは社会科室にいると言っていたのに、ここにいていいのかと思いながらも、声をかけることはしなかった。意外と悪くない。

「あ!!山本先生こんなとこにいた!!もう探したんですから!!」

静かで私と彼女しかいなかった図書室に、大きな声が響く。図書室だから静かにしてほしい。語尾にエクスクラメーションマークを六個ぐらいつけたような声量で、声を発するものだから私だけでなく、彼女もびっくりしていた。

「どしたん?なんかあったん?」

「先生がお昼は社会科室にいるって言ってたのにいなかったから、探してたんです!聞きたいこと山ほどあるんですから。私以外にもいろんな人が先生のこと待ってますよ?行きましょ」

「あ、ごめんごめん。完全に忘れてたわ」

やっぱり忘れてたのか。明らかに人気が出そうな見た目をしているし、初めて見る物に好奇心が生まれる。そりゃ話したい人はたくさんいるのだろうな。

「太田さん、またな?」

なんて、眉毛を下げていってきた。申し訳なさそうにする意味が分からなかったが、とりあえず無言でうなずいた。二人が出て行ったあと、いつも一人でいたはずの場所に少しの寂しさを覚えた。この寂しさはなんなのか、今の私には理解できなかった。



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