白刃の城book

□チョコレート・ロマンス
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「…そんなものは取るに足らない問題です」


竜崎はイスの上で膝を抱えながら無表情に告げる。

「少なくとも今私には関係ないし興味もない」

竜崎はちらりとこの部屋に一つしかないドアを見た。



* チョコレート・ロマンス *




「一切関知しないなんて…お前らしくないな」

夜神がそう言えば、竜崎は心外だという表情を形ばかりだが浮かべた。
手を擦りながらまたドアを見る。そして小さく息を吐いた。

「私らしくないとは適切な表現ではありませんね。私の中にはこういう一面も在るのだと私は認識しています」
「それでもやはりお前らしくないな」
「…人には」

竜崎はドアから目の前の小さなテーブルに視線を移す。そこには既に食べ終えた菓子の包装紙が散乱していた。

「自分も他人も知っている開放された領域、他人だけが知っている気付いていない領域、自分だけが知っている隠している領域、そして自分も他人も知らない未知の領域というものが存在するそうです。それを総称してその人、つまりここで言えば私ということになります。よって夜神くんが知らなくとも私が知っている私…隠している領域下の私も確かに竜崎なのですよ。ちなみにこれはジョハリの窓といいますがご存知ですか? 」
「知っているよ。…お前らしくないと言ったのは、大半のお前が黒なのだとしたら、今のお前は白を持っていて、いつものスタイルに比べお前は今お前らしくないということを言いたかったんだ」
「そうでしたか。言わんとしていることは解りますがそれも何だか面白いですね」

にこりともしないで竜崎は淡々と述べる。夜神は溜息を吐いた。

「それよりも夜神くん、見てください。まるでカンバスに描かれた絵のような空ではないですか。幾重にも雲が連なり、それの何が気に食わなかったのか筆で線を引いたようです」

深い漆黒に強く促され、夜神は渋々と窓の外をみ、そして「本当だ、凄いね」と在り来たりな感想を述べると竜崎に視線を戻す。その時竜崎の視線はまたドアに注がれていた。逸らされたのだと気付いたときには遅く、夜神は一瞬苛立ちに顔を顰めたがすぐにまた微笑を浮かべた。

「竜崎…」
「今私にとって問題なのは」

カチャリ、とドアの取っ手が下ろされる音がしたのを聞き、夜神もドアに視線を移す。


「私が頼んだ最高級チョコレートケーキが届くか届かないか、それだけです」


部屋に入ってきた渡りが持っている某有名メーカー名が印刷された袋を見て、竜崎はやっと表情を和らげた。








END

何だこれ。こうじくんの小説読んでたら影響されたのか
同じような話というか構成になってしまった…(Let’sダメ人間



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