虚空の城2

□計算されし世界の終焉
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※別れ話のようなそうでないような。

計算されし世界の終焉

卒業の季節がやってくる。
大抵の生徒はそのまま高等部へ。一部の生徒はそれ以外へと進む。
跡部が高等部へは行かず留学することは前から分かっていた。本人から聞かされたのではなく、周りの人間からでもなく、雰囲気や小さな噂から何となくそう感じていた。
日吉は一年後このまま高等部に進むつもりだった。将来の夢など決まっていなかったし、出来れば大学まで進むつもりだ。兄が家業を継ぐ気がないのなら自分が継ぐことになるのだろうと漠然と思っていた。
間違っても彼の後を追うような道は取らないだろうな、とも思っていた。そして今も思っている。
しかしこの空白感はなんだ。
跡部はもう少しで卒業だと言うのに日吉に何も言わなかった。日吉も何も言わない。ただ確信だけを胸に秘め跡部に会う。進路のことを何一つ話さず、時間は過ぎる。
大人になったら若気の至りだと笑ってすませるような、その程度の関係なのだ。お互いにとって。
大人になってもし再び会うことがあるのなら、酒の席ででも言ってやろうと思う。
あの頃、俺は子供なりにあんたのこと真剣に好きだったと、別れたくなかったのだと。
きっと彼は驚くだろう。

(そして俺はそれを見ていつものような馬鹿にした笑みを浮かべるんだ)

だから、今は。
大人になったらもうきっとあの人のことでは涙は流せないから。
視界の半分を埋める半透明の滴が、頬を伝うことなく落ちていった。
どうしたと問う声に目にゴミが入っただけと応えた声が震えてないことだけを祈る。





人を好きになるってなんなんだろうなぁと思う今日この頃。


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