白刃の城book

□終末に待つ希望
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彼は、不思議そうな顔をした。
甲板は真っ赤に染まり、あちこちに人が倒れている。ジリジリと太陽に焼かれているのは、赤髪だけではない。

「何故、殺さないんだ?」

潮風に運ばれて聞こえて来るのは、小さな呻き声。倒れた人間の誰一人として死んでいないことを知って、彼は赤髪に訊ねた。
赤髪は自分よりも頭一つ分は低い彼の顔を見る。癖のある黒髪は肩より少し長いくらいで、その口には何時もの煙草はない。幼さの残る顔は仏頂面ではなく、肌は白く、まだ発達途上の身体は、細い、と形容してもいいくらいだった。

「殺して終えば簡単なのに」

何故だか、赤髪は解らないでいた。彼の声は少し高かったが、聞き間違えようがないものだった。

「簡単だからさ、ベン」

――そう、彼は"赤髪"の船の副船長だった。少なくとも、大人の彼は。
今のベックマンは、シャンクスの知るベックマンではない。先程も表したが、子どもなのだ。歳は大体、14、5くらいだろうか。船のことは愚か、シャンクスのことさえも記憶にない、シャンクスの知らないベックマン。

「殺すことは簡単だ。だから、今でなくてもいい」
「――ふぅん…」

あまり納得してはいない響きだったが、シャンクスは何も言わなかった。
この歳にして、ベックマンの頭脳はほぼ完璧だった。基礎が作られたのはもっと前なのだと思えば感嘆してしまう。

「甘いな、あんた」

呟きと共に、血が舞った。
いつの間にかカットラスを手にしたベックマンが、倒れていた男の首を跳ねたのだ。
シャンクスは噴き出した血液越しにベックマンを見る。冷めた、瞳だった。虚を抱いたような瞳に胸騒ぎを覚える。

「ベック…」
「あんたは」

深い嘲りの色を含んだ笑いを浮かべ、ベックマンは続ける。

「いつかその甘さ故に命を落とすことになるだろう」

それか誰に対しての嘲笑なのか、シャンクスは解らなかった。ただ、この子どもにこんな表情をさせてしまったことが、とても悲しいと思った。










こんな話が読みたい(←
ベックマン子ども化っちゅーか、何つーか…。

裏話としては、とある不思議な実を見付けた船長以下二人(狙撃手と斬り込み隊長)がまんまと副船長に食べさせたはいいが、次の日縮んでいた副船長。しかも記憶なし。一定期間そのままで、ある時記憶だけ戻るとか(イイネ!←






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