白刃の城book

□cannibalism
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血みどろだった。辺りは血にまみれ、視界は赤一色に染まった。生臭い鉄の臭いに吐きそうになりながらも、それでも俺は必死に目をこらした。だめだ、俺が此処で目を背けたら見つかるもんも見つからない。助かるもんも助からない。
辺りを必死に見渡して、やっと視界に赤以外のものを見つけた俺は、その薄い金色に駆け寄った。見間違いようがない、ジジイだ!俺は倒れたゼフの身体を抱え起こす。そして息を詰めた。彼の身体は血塗れで、顔は土気色をしていた。あのいつもの威圧感は微塵も感じられず、威勢の良い声を出す口は力なく閉じられている。俺はゼフを抱き締めたまま呆然とした。そしてようやくソレがただの肉の塊だということを認識する。
彼の両手両足は無かった。どこも足首、肘の辺りから千切られている。片足は解る。それは俺のために彼が千切ったものだ。では何故、誰が?ゼフではない。最後に片手を残したとしても最後の一本は彼には千切れない。
ガタガタと震える身体をなんとか奮い立たせ、逃げようとする神経を必死に押し留め、俺はゼフの引き裂かれた腹部の服を、ゆっくりとどかした。内蔵がない。俺は思わず吐いた。多分、胃の中のものを全て戻した。そうだ、すべて。しかし視界に現れたのは、赤。赤アカあか。ビチャビチャと音をたてて床に広がったのは、―――ないぞう。
ばっと弾かれるように身を起こせば、いつの間にか俺の傍らには血糊に燦めく包丁が落ちていた。俺のだ。ジジイが俺にくれた包丁。まさか、おれはこのほうちょうでじじいのはらわたきりさいて、くうふくにまけてぜふをくったのか!
身体が震えたゼフの姿を視界に映しながら、俺は泣いた。泣きながら彼の死体に縋り付いた。狂っちまいそうだった。



  

   ァ
ぁ       
アァ


ああああああああああアあああアアあぁぁアあァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああアあああああああああああああああああアァぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ


  あ






――――――ンジッ!!







「サンジ!!!!」





ばしりと頬を叩かれて、俺は眼を開けた。目の前には、ゼフの姿。荒い呼吸を何とか押さえながら、ひりつく喉をさすった。涙と鼻水がごっちゃになって、俺の顔は酷い有様だろう。

「魘されてたぞ。怖ェ夢でも見たか」

俺は頷くことも出来ずにただただクソジジイの顔を見詰めた。それから、腹を、両手を、両足を。でも幸いなことに何処も何時もと変わりなく、俺は安堵してまた泣いた。ジジイの首に縋り付いて声を上げて泣いた。壊れるかと思った。ジジイがいなくなったらきっとおれはいきていけない。もし万が一また遭難したとしても、絶対にジジイに自分の身体を喰わせたりしない。俺にジジイを喰わせたりしない。だったら無理矢理にでも俺を喰わせてやる。そうでなかったら二人で死ぬ。もうだめなんだ、恩とか背負うとかそんなんじゃなくて、おれはぜふがいないといきられないんだよ。

「おれのそばにいてっ!しなないで!!」

大丈夫だと繰り返しながら俺を抱き締めてくれるゼフの熱が、死ぬほどありがたく感じた。








END


胃の中に手を突っ込まれて掻き回されるような文章を書くサイトさんに出会った記念に。
(つまりはさ、スゲェ上手いってことだよ、ね)

やべ、自分でかいてて具合悪くなってきた。これ私には向かないorz



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