天空の城

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部室に入り、ロッカーがある部屋の扉を開けると、救急箱を片手に日吉の手首を掴んだまま固まった鳳と目があった。日吉は見るからに嫌そうな表情をした。



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[なんてことはない]



跡部はレギュラーの部室に準レギュラーの日吉がいることに何も言わなかった。しばらくして硬直が解けたのか、鳳はのろのろと救急箱を開けて机に置き、日吉に座るよう促した。日吉はソファーの端に浅く腰掛けた。跡部がロッカーに用があると考えたのだろう。一番離れた位置だった。
日吉は少し迷って、左肘の擦り傷を消毒し始めた。跡部は出入り口に立っていたが、それをきっかけにロッカーへと向かった。
鳳はしゃがんで日吉の左膝の出血箇所の下に脱脂綿を当てた。

「自分で出来る」
「いいから」

鳳の意図的なのかそうではないのか分からない手際の悪さに判断に困ったが、日吉の手つきは彼らしくない酷く緩慢なものだった。跡部がいることで都合が悪いことでもあるのだろう。跡部は用事の物をロッカーから出し、鞄に詰める。一つ用は済んだが、一つ増えた気がした。
扉を開けたまま日吉の方をちらりと見ると、彼は少し手持ち無沙汰気味に鳳を見ながら、腹に手をやり眉間に皺を寄せていた。救急箱は机の上に開いたままだ。
どうした、つまずいて転んだのか、と笑ってやろうかと思っていたのだが。跡部は扉を閉め、ソファーの方に足を向けた。

「見せてみろ」

そう言えば鳳は固まり、日吉は驚いたようにこちらを見た。そして逡巡する。瞳に少しだけ警戒の色が見えた。それだけで跡部は彼に何があったのかほぼ理解した。
彼は頭角を現している二年の中でも、生意気な部類だ。こないだ準レギュラーになったが、相変わらず上を見て力を求めている。その態度が不遜に見えたりもする。
レギュラー達はそんな彼をからかったりしているが、仲は悪くない。準レギュラーにもなれない三年による私的制裁にあったといったところだろう。
別にあまり珍しくもないことだ。跡部はそう思ったが、僅かに青を細めた。

「……もう消毒は済みましたし大丈夫ですよ」
「見せてみろ」

日吉を庇うように言う鳳を無視し、もう一度威圧的に言う。日吉は渋々肘を見せるように、腹を押さえていた左手を上げてみせた。袖越しに腕を掴むと微かに顔をしかめた。体が緊張の為か少し強張る。
彼の反応を見て、確信する。そして、陰湿なものだな、と思った。服に隠れて目につかない場所をやられたのだろう。日吉は立ち上がりかけて、微かに腹部を手で押さえる素振りを見せたが、思い直したのか結局座ったまま手は脇に下げられた。
何も言わないのは彼の矜持故か。やられたこと自体を隠そうとしていたのだから、誰にやられたのかなど言うはずもない。大方見当はつくが。

「大丈夫か」

まるで確認かのようにそう尋ねれば、既にこちらが気付いていることに気付いて、皮肉に聞こえたのだろう、日吉は俯いて下唇を噛んだ。
跡部は大きめの絆創膏を鳳から奪い、片手で器用に貼ってやった。ぱしっと手の平で患部を叩いてやる。日吉は息を飲んだ。


「……樺地を待たせてるんじゃないんですか」
「あーん?俺の個人的な用事だからいねえよ」

いつも一緒にいるが此処にはいない、後輩のことを指摘されて口元だけで笑った。彼にだって自分の生活があるのだ。彼も好きで跡部と一緒にいるのだが、そんなに周りには跡部が振り回しているように見えたのだろうか。
やはり歓迎されない先輩のようだ。腕はまだ掴んだままだ。手の平の下に布越しであるであろう痣のことを思いやって大して力は込めていない。日吉は振り払わなかった。

「もう大丈夫だろ」
「別にもともと転んだだけですし、なんてことはありません」

だから腕を離してもらえませんか、と無愛想に日吉は言う。その瞳に先程の色は見えなかった。ふっと笑って後輩の腕を解放してやる。

「部室の鍵は締めとけよ」

鳳が困ったような顔をしているのを見て、そう言って跡部はロッカー室を出た。明らかに扉越しの空気が緩んだ気がして跡部は薄く笑った。




時軸が分からないものに(-.-;)つか意味不ですいません。ひよが先輩にいじめられて腹とか殴られちゃった話です(こっちの方が意味不だ)

ひよはべに弱味を見せたくないと思う。大人しく手当てを受けるとしたら誰だろ。
ちょたは心配性。二年は仲悪いように見えて仲良いといいな。
べは基本後輩は可愛いものだと思ってればいい(一番は樺地)

最初は二人だったけど、準レギュは何処で着替えてるのか分からなかったからちょたに出演してもらいました。



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