忍旋風伝

□愚痴ばっかですけど何か?
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「親父のばかやろーっ!!なんでわかってくれねーのっ」


 だんっっ!!


怒り任せに私は握りしめた拳を地面にたたきつける。
痛みなんて知ったこっちゃない。
それ以上に怒りが私の体中を駆け巡っていた。

「護身術とかいって、散々格闘術学ばせたのは親父のくせに、今更になって『女の子らしくしろ』ってありえねーっ」

わしゃわしゃと頭をかきむしりながら、私は森の中を歩く。
何処へ行くかって?
そりゃ、私が今一番落ち着ける場所。
通常ならちゃんとした道(獣道だけど)から行くんだけど、今はそんな余裕はない。とにかく茂みを豪快にかき分け押し進む。

「だいたいさー。親父の言う『女らしく』の基準ってなんなん?私にスカートはけってか?」

言っとくけど、私は料理は人並みにできる方。
掃除も…まぁ何とかだ。
だから、そんなぎゃーぎゃー言われる筋合いねぇ。
てかスカートなんて…

「似合うわけねーじゃんっ!!きもっ」

自分のスカート姿を想像して、思わず身震いした。
ありえないよ。現に今だって甚平姿(夏だからね)だってのに!!

「たく…何考えてんだかあの親父は」

ありえないを何度となく呟いてくうちに、薄暗かった森の奥に光が見えた。
それを見た私はすかさずダッシュ。
怒りに震えていた身体が、じんわりと喜びに満ちていく。
あの光を見ただけでこの変わりよう。
うちは耐えきれず、愛しい名を呼ぶ。

「マザーーーーッッ」

暗い森を抜けたそこには…

ぽっかりと空いた空間…そこには光を燦々と浴びて育った大木があった。
周りの木々より一回りも大きい幹。ふわりと広げられた枝。光を目一杯受けて輝く葉。

「マザー会いたかった!!」

私は両腕を広げ、その太い幹に飛びつく。
かたく、けど暖かい幹は私の心にじわりと染みる。

「聞いてよ。マザー!!あのバカ親父がまた女らしくしろってうるさくてさぁっ」

自然と愚痴がこぼれてくのはいつものこと。

「私は私のまんま生きてきたいのに……駄目なのかなぁ」

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