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□cherish 30
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221 resque













ニュース画面をぼんやりと眺めていたら
思わずつぶやいていた。




「ひとごととは思えない…」


「は?」



「ホントに気をつけてよね、もう。
顔やられたら、おしまいなんだから。」


「はぁ?
おまえな…あほか。」




「だって、この辺…大好きじゃん?」


「え…」




「そういえば、前になんかだれかと写真撮られたのも確かこの辺…」



「はいはいはい…
すんませんごめんなさい、
もうしませんっ!」





ぶっ…


そんなことはどーでもいいんだけど…




でもさ、もしももしも、
万が一、こんなことがあったとして、


あなたが、血だらけで
この部屋に帰って来たりしたら…



ボクはさ…


ボクは、

彼女みたいに警察を呼んだり
救急車を呼ぶことだって、
できないんだよ。


彼女だって、警察呼んだこと
なんだか『軽率』とかいって非難されてるみたいだけれど、

正式な奥さんでもそんなこと言われるなら



ボクなんか…さ…

『なんで?』

ってことになって、大変なことになる…



『たまたま、その日遊ぶことになって部屋で待っていて…』

とかなんとか?


でも、ショーガイ事件とかになったら
ジジョーチョーシュ?とかなんとかいって、
怖い刑事さんに根掘り葉掘り聞かれるだろうし、
この部屋にも入ってきて、いろいろ調べられたとしたら、


ああ…だめそう。

絶対嘘をつき通すなんてできないよ。




だからだから、
もしそんなことが起こってしまったら、



ボクは…


まず、マネージャーさんに連絡をとって、

この部屋の中のまずいものを
いろいろ片づけて、


ここを
できるだけ早くでなければならないんだ。




血みどろのあなたを

ここに残して…






「おい…」


「…ん…」



「おまえ、なんで泣いとるん?」


「…え…」




いつの間にか、目からほほに
涙の筋がついていた。




「ごめんね…」


「どうした?」




「…ボク、やっぱり救急車…
すぐに呼んじゃうよ…」


「は?」




「だって…
知らないひとが怪我してたってほっておけないのに、
大好きな人が大怪我したときに、放っておくなんて…
できないもん…
後のことなんて…考えられない…」



「…え?」



「迷惑かけちゃうかもしれない…
けど、できない…
ごめんね…ごめんね…」



優しい腕と胸が
ボクの泣き顔を包みこんだ。




「泣かんといて…」


「…」



「なんや、よくわからんけど…
大丈夫やから…」


「…」




「おまえに心配させるようなこと、
絶対せえへんから…」


「うん…」




「特に顔だけはな…」


「…え?」




「おまえはなんやかんや言って面食いやから、
顔だけは守らんと、
おまえに嫌われてしまいそうやし…」



「…ぶっ…
別に顔だけ好きになったわけじゃないよ…」





「あっ…そうや、
あれもやな。」



「ばーか。」












20101203

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