short short
□cherish 8
1ページ/10ページ
21 probably
「俺は、
おまえのことが
・・・好き・・・
なのかもしれん・・・」
そのなんとも曖昧な言葉を告げられたのは
二年前のちょうどこんな雨の日だった。
ポケットに手を突っ込んで
視線は斜め前方横向きで
いつも以上にかすれた声で・・・
<なんですか、
その『かもしれん』っていうの・・・>
そう文句を言おうとしたんだけれど
そのあとすぐ顔がまっすぐこちらに向いて
目と目があって、
じっと見つめられたら
何も言えなくなった。
その曖昧さをあえて付け加えた
意味と意図が
わかってしまったから。
返事もできなかった・・・と思う。
そう・・・
はっきり言い切るなんて
危険すぎる。
ボクたちの恋は、
そんな恋だから・・・
そして
あれから二年が過ぎた。
「まだ・・・『かもしれん』?」
「・・・ああ・・・そやな。」
「・・・そっか・・・
そだよね・・・」
ため息を隠すために立ち上がったボクの背中に
声がかかった。
「前の方は変わったけどな」
「え?」
振り向いたボクを突き刺す視線と言葉。
「愛してる
・・・のかもしれん・・・
おまえのこと・・・」
また、何も言えなくなった・・・
20070526