short stories

□be my SantaClause
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「りゅうくん?」

「うん。」


「お迎え遅いね。」

「うん…」


「えっと…今日のお迎えは…村井さん?」



りゅうくんのお迎えはたいてい
ベビーシッターの村井さんだ。



「ううん。きょうはパパだって。」

「パパ?」

「うん。」

「そっか…」



そうか、シッターさんもクリスマスは休みたいのかな…



「パパ、お仕事で遅れてるのかな?」

「うーん…」



りゅうくんのパパは、たしかレコード会社でミキサーさんかなんだかをしてる人だ。
昔はプロのミュージシャンをしてたこともあったらしい。
その界隈(ってどの界隈だかよくわかんないけど)では
結構人気があって、ファンのひともたくさんいたって、
他の子のお母さん達と女の先生たちがキャーキャー噂してるのを聞いたことがある。



たしかにそうだろうな…

りゅうくんのパパ、かっこいいもん。


いっつも革ジャンにジーンズで、
他のお父さんみたいにピシッとしたスーツってわけじゃないけど、
その革ジャンの皺のつきかたとか、
ジーンズの穴のあき方とか、
なんかかっこいい。

それに笑ったときに目の周りと口の周りにできる皺が優しくて、
目の下の泣きボクロがセクシーで、
ちょっとハスキーな声もいい…


りゅうくんのパパに会うと
いつも「かっこいいなあ」と思って
なんだか嬉しくなる。




あれ…?

ボク、なんか変?




でも、
だれだってカッコいいものは好きだし
カッコいい人に会うのも好きだよね?






そっか…

今日は最後にりゅうくんのパパに会えるんだ。


えへへ…

クリスマスイブの遅番も悪くない。
せめてそのくらいのいいことないとね、
合わないよね、うん。












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