消失点
□いつものことだけどA
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…_
疲れた〜と話してる二人の近くにどさっと腰掛ける。厳密に言えば少しみや寄りだけど。
ついついみやにちょっかいを出す。
「みや、最後らへん疲れて息上がってたでしょ、ももみてたよ。歳きてるねぇ〜?」
あ。あからさまに嫌な顔された。
だけどももにとってこのいつものおふざけはじゃれあってるようなものでとっても居心地がいい。
けど今回は愛理がみや側についたからあっさり終わってしまった。
みやも疲れてるのかテキトーだし…。
そんな風に思ってたら顔に出てたのか笑われた。
「顔に出てるって。もー気をつけな?みんなのアイドルももち!なんでしょ?」
やられた。今日はみやに負けた気分。
でも楽しくて顔が綻んでいるとみやが私の鼻を指先でついてきた。
この距離感。いつからだかみやとの距離が近くていまだにどぎまぎする。
みやは私より人懐っこくて人との距離がちかい。それはメンバーに対しても一緒。
そう言い聞かせて心を落ち着かせていると愛理が
「なんでそんな距離が近いの?」
なんて聞いてくる。
愛理の素直な疑問に、自分の考えてたことと同じ事に一瞬時が止まってしまった。
なにか言わなくちゃと必死に頭を回していると
「梨沙子や愛理にも同じじゃない?」
…ほら。みやの中ではみんな同じなんだよ。
余計なこと言わなくてよかった。
まだ二人はあーだこーだ言ってるけどとりあえず困ったら
「みーやん、ももちのことだぁいすきなんだもんねっ」
みーやんはももだけが呼んでるあだ名
だから実は大切にしてる。
こんなところでしか特別感をだせない
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リハが終わったのは10時をすぎた頃だった。
ここから家に帰ってなんだかんだしてるともう日付越しちゃうだろうな
帰り道、ひとりになってやっとため息が出た。
「……いろいろ疲れた。」
それでも、みやとの小さなやりとりを思い出して少し口角が上がる。
そっと携帯からbuonoの古い写真をあさる。
まだ結成されてすぐの頃の三人の写真が1番上に出てくる。
「ふふ。懐かしい 三人とも何だか若いな」
まだ幼い顔つきの写真。
あの頃はbuonoも手探りで、みやにたくさん頼っていた。
buonoとしての時間が増えるのに比例して、みやとの距離も前に比べてぐっと近づいた。
それがたのしくて嬉しくて、桃子はしょっちゅう雅と腕を組んで…あの頃のベリーズでの写真はみやと写ってるものが多い。
写真を家につくまで一つずつ見ていると
胸がちくっと痛む写真がでてきた。
「あ…これ……」
みやの数少ないももに好きって言ってくれた日。
ふたりがジャージ姿でレッスン室にいる写真だった。
みやはいつも私のことをテキトーにまあまあだとか普通だとかいう。
「みやはもものこと好きなんだから〜」を照れ隠しに言い始めてからは尚更すきと言ってくれなくなった。
りーちゃんやまぁさにはいうのに…
このレッスン室でももが次のソロスケジュールのために急いで支度をしていると
後ろに座ってのんびりしていたはずのみやがふと、
「意外ともものこと好き」
なんて言ってきた。
普段そんなこと言わないから脈絡もない好きにびっくりしておそるおそる振り返ると
「なーんてね、やっぱ普通だわ」
正直ちょっと傷ついた。
ももはみやのこと可愛いし楽しいしすきなのにな。みやはからかうだけでほんとの好きじゃないんだ、って。
好きと言われた時一瞬だけみやと付き合ってる自分を思い浮かべていた。
そんな意味じゃないかもしれないし、付き合ったからって何していいかもわからないけど、なんかいいな。
この短い一瞬のうちにそんな風におもってしまった。
くるっと雅から視線を外して
「ももは前からみーやんのこと好きだけどね〜」
あっそと返ってきた声が冷たく感じて
思わずこの空気を明るくしたくて、ももだってウケ狙っていったんだって思われたくて。
「もー照れ屋さん!もものこと大好きなくせに」
と明るい声をつくっていった。いえなかった。ほんとはどうなの?なんて
あれからこのセリフは困った時に今でも使ってる。
「はぁ………」
過去の自分に思わずため息がでる。
自分で言い始めたくせにそういうと決まって雅はまあまあね とだけ定型文みたいに返してくるのが寂しかった。