消失点
□見えてくるものD
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後日再びbuonoのリハであの日と同じスタジオを訪れた。
今日はももが一番乗りらしく早くも歌声が聞こえてくる。
消失点。みやの好きな曲。
「ことばにしたら壊れそうで怖くて…いつもふざけ合うことしかできなかった〜♪…」
みやのパート…
歌詞を十分理解して歌ってるつもりだったけど他の人の声で聞くとまた違ったように聞こえる。
「もも…」
「みや!おはよ」
いつからそこに立ってたの?と聞く桃子をぼーっと見ながら
消失点の歌の世界の自分が昨日の夜の疑問に答えてきた気がした。
だけど仲良しって言わないのは目に見えるそれだけで決められたくない。
もっとそんなものじゃなくて
みやの中にももへの愛がある。
すっと出てきた答えはずっと昔から知っていたような、だけど知らん顔していたような気がした。
「…おはよ。もう練習してたんだ?」
「練習っていうか、この曲好きでさ。みやのパート好きなんだよね。」
パート交換しようよぉなんてまたふざけた口調で腕をゆすってきた。
「みやも好きだよ。多分二人の距離はちかくてだけどどこまで行ってもずっと平行線で、ってところ。声が綺麗に出てる」
ももは一瞬意外そうな顔をして、それから一瞬、切なげに笑った。すぐにいつもの調子を見せたが
その一瞬を見逃せなかった
「もう、みやびちゃん今日は素直じゃない?みやがほめてくれるなんて珍しい」
ももの寂しい笑いをみてから一日その表情が頭から剥がれなかった。
「感想言っただけだし」
「またまた〜照れちゃって!」
「はーい、調子に乗るからもうほめませんー」
「えーやだやだ。…でも本当に今の嬉しかった。」
そして、気づいてしまった。いままでにも何度かももがその表情をしていたこと。
そこに気づいたはいいもののその先の理由がまだわからない私は鈍感だったのだろうか。