消失点

□気づきF
1ページ/1ページ






…_




長く続く駆け引きのような状態に私はだんだんイライラしてきていた。



「もーいいや、やめやめ。変に考えてもどうせ挙動不審になるし。かんがえるのやめた!」


と一人で宣言したら本当に気にならなくなってしまった。我ながら単純。





流れるように月日が経ち、
ライブも無事に終わりわたしが本当に桃のことを変に意識しなくなったころ




レッスンの休憩中、携帯をいじるももの姿が見えたからなんとなく、近くに行った




「もーも」



「んー?」



「なにしてるの?」




「ブログの更新中。」



「おっ、えらい。どれどれ?」




携帯を覗くためにももの背後から乗り出すと
桃の体が自分よりあったかいことに気づいた。



たしかに思い返すと桃の手はいつも温かい。




「ももって平熱高くない?」



「そ?」



そのせいか、首の辺りからももの匂いがする。



あ…ももの匂いだなー…。




「だからかな、ももってめっちゃ匂いわかりやすいよね」



そういうとすんっと鼻を鳴らしてももの匂いを吸い込んだ。無意識だった。




ももが肩でわたしを押し退けながらこっちをむく



「みやさー…そういうのってみんな勘違いしちゃうよ?」




ももの瞳がまっすぐこっちを見つめてくる。
いつもは多い瞬きもせずに。



「……え、」



思わず言葉が詰まる。みやの行動今おかしかったかな


瞬時に言葉の裏を見ることができない




一瞬の沈黙の後


「…いいや、みやのおばかさん〜どんかーん!」



瞬きを癖のようにパチパチと2回して
いつものテンションに戻るももに戸惑う



「ももほどじゃないしー」



と私もいつものテンションでかえす。


なんとなくこの空気が嫌でももの頭をわしゃわしゃっと犬みたいに撫でた。




まるで犬みたいにきゃんきゃん髪が崩れただとか文句を言うももに笑いながら、面白くって写真に残したりしていたけど心では冷静にまた別のことを考えていた。




家に戻れば今日も10時を過ぎている。


ご飯やお風呂も早々にベットに入ると1日の終わりにメッセージをチェックする。




仕事の内容はグループのメッセージを使うのでほとんど使っていないがももとの個別メッセージの背景を今日の写真にした。

みやがわしゃわしゃーってしたから少し眉毛がのぞいてる。





最後のメッセージはbuonoのコンサート前、頑張ろうねって内容のメッセージとスタンプ。



キャプテンなんかとは日常のくだらないやりとりもこまめにする方だけどなんかうちららしいな、なんて写真を見つめながら頬が緩む



独り言のように
「好きだなぁ…」
なんて溢れてた。


「…………」
あれ。わたし、好きって思った?





混乱してるのにやけにしっくりきてる気持ちと言葉



「いや、おかしいでしょ。だってみやは、」




色んな否定する理由を考えたけど
ついには思い浮かばなかった。
否定する理由なんて、ない。



この1ヶ月のもやもやが晴れた気さえした



既視感のある状況に頭を巡らせ
そして気づいた



「……はっ、前もみやこんなことあったわ」




思わず乾いた笑いがでた。



初めてじゃなかった。buonoが結成されて一緒にいる時間が増えた頃、家で三人で撮った結成記念写真を眺めながら同じように呟いていた。




あの頃はまだ幼くて、きっと勘違いだ。羨ましい気持ちとか憧れとかが変なふうになっただけって言い聞かせたんだっけ。





誤魔化しているうちに仕事も忙しくなって、ありがたいことに忘れられてたんだ。




「やばいなー…」
また忘却の術を使うか。



伝えたところでももはきっと拒否する。そんな感情。



ももはああ見えて普通を大切にする子だ。
王子様♡とかいってるし、子供も好きだからいつかは結婚して……



そこまで考えて涙が落ちていることに気づいた。



わたしにはとっくにももが側にいることが当たり前で普通になってる。
なのにももはいつかみやを置いていってしまう。



そう思うと涙が止まらなかった。




自分がそう感情的になるのも仕方なかった。

その頃から少しずつベリーズは個々の将来について話し合い始めている時期だったのだから
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ