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□逢いたくなったら
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きり丸に逢いたくなって、小銭を落としてみた。
流石のあいつでも、何里も離れたドクタケ城で小銭が落ちる音なんか聞き取れる別けないのに、ぼくも馬鹿なことしてるよな。

「ほら、やっぱり来ないじゃないか」

なに、期待してんだよ。馬鹿らしい。
足元に転がる小銭を拾って握り締めた。

「それおれの!」
「!」

声の先を観ると、今一番逢いたかったやつがぼくの手を指さして立っていた。

「きり丸…なんで…」
「おれが見付けたんだっ」
「話聞けよ!」

驚くぼくがまるで観えていないかの様に、きり丸は小銭を握ったぼくの手を掴むと開こうとしてきた。
きり丸との距離がいつもより近い上触れられてると思ったら心臓がドキドキして来る。
きり丸はぼくのことなんて何ともおもっていないだろうけど、もしかしたらきり丸に心音を訊かれてるんじゃないかって、いてもたってもいられなくなって、ぼくは声をあげた。

「わ、わかった、わかったから!ほら」
「儲けぇっ」

小銭をきり丸に渡すと、きり丸は小銭を愛で始めた。
よくもまあ小銭一つでそんなに喜べるもんだわ。
…でも、そんな姿も可愛いと思っちゃうぼくは相当末期なんだろうなあ。
ぼくが呆れ半分にやついていると、小銭を愛でていたきり丸が、ひょい、と、顔を上げた。

「しぶ鬼、サンキュー」

不意打ちのように出会した、心の底から嬉しそうな笑顔に、ぼくはまた驚いた。
逢えればいいって思ってただけから、こんな笑顔を観れるなんて思ってなかったんだ。

「あ、ああ…」
「しぶ鬼?顔赤いけど大丈夫か?」

きり丸に顔を覗かれて、ぼくの頬がもっと熱くなるのがわかって焦った。

「余計なお世話!小銭も手に入れたんだし、さっさと帰れよ」

あちゃぁ…やっちゃった。
ついきつく言ってしまうのがぼくの悪い癖だ。

「ちぇ。なんだよ。人が折角心配してんのに。そんじゃあなー」

本当はまだきり丸と一緒に居たかったけど、つい焦ってきつく言ってしまった台詞を取り繕うことをしなかったせいで、きり丸は口を尖らせて不服そうにぶつくさ言ってから、ぼくに背を向けて歩き出した。
きり丸が、行っちゃう…!

「きり丸!」
「ん?」

ぼくは咄嗟に、きり丸の背中に声を掛けていた。
きり丸は振り返ったけど、さっさと帰れって言ったくせに呼び止めるのか?と言いたそうな顔をしている。
それを観て、ぼくは思わず苦笑いしそうになった。
だけど、なんとか真剣な表情を保ってきり丸と真っ直ぐに視線を交わす。

「今度はさ、小銭の為じゃなくてぼくの為にここへ来てよ」

やっと言えた。
折角逢えたのに、終始小銭に夢中だったきり丸にさっきからずっと言いたかった言葉。
きり丸をしっかり観ると、今度はきり丸の頬が赤くなって居ることに気付いた。
まさか、そう思った時、

「気が向いたらな!」

とだけ言って、きり丸は走って行ってしまった。

赤くなるってことは、ちょっとは期待していいってことなのか?

それはまだはっきりはわからないけど、あの小生意気なきり丸があんな反応をしたんだから、嫌われては居ないんだろう。
そう思うと、酷く安心してしまう。
元々ぼくらはドクタマと忍たまで敵同士だから、その分溝があって、嫌われいて当然だと思っていたから。

来ない日があってもいいから、これからはきり丸に逢いたくなった時、また小銭を落としてみようと思った。
きり丸の気が向くのを待つのも楽しそうだし。

ぼくたちの距離は遠いけど、きり丸が来てくれた様に、ぼくからも、歩み寄って行けたらいい。
そしていつかこの気持ちを伝える事が出来たらいいな。









20101201

リクエスト頂きました
しぶきりでございます!

敵同士っていいですよね><*

しかし、なんだか
しぶ→きりって感じに
なっちゃったので、
もう一つ、
今度はちゃんとした
しぶきりを書かせて
頂きたいと思います!
すみません;

リクエスト
ありがとうございました!

またもう一つの
しぶきりでお逢いしましょう!←












 

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