アスカガ短編小説

□Tea*time
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静かな場所でのティータイム。
忙しい身分と言えども、やはり女の子のおしゃべりは止まらない。
カガリもラクスも時間の合間を見ては、こうして他愛も無い話をしながらお茶を楽しんでいた。


そして今日も、姫君たちはティーカップを片手に話に花を咲かせる。
ちなみに本日の飲み物はラクスお勧めのブレンドティーだ。
ブレンドだけあって個人の好みに分かれるだろうが…なるほど、カガリの好みにぴったりである。

いつものように砂糖を適量入れ、口へ運ぶと芳醇な香りと味が口に広がった。
それでいてどこか体がすっきりした感じになる。

「今日の紅茶はアールグレイ中心なのか?」

「はい。最近は甘い香りのものが多かったので、今回は少しさっぱりしたものにしてみました。」

よく分かりましたね、とラクスが嬉しそうに手を叩くと、それを見たカガリもはにかむように笑った。
最初はあまり味や香りなどにまったく興味がなかったカガリも、この小さなお茶会を通して少しづつ勉強しているのである。
ラクスがこんなに喜んでくれるんだったら、勉強もしたかいがあるというものだ。
もっとも、まだまだお茶の入れ方を勉強する段階ではないけども。


何だかくすぐったい気持ちのまま、再びカップを口へ運ぼうとした時、ラクスがまた嬉しそうに言った。


「あらあら〜?カガリさん、またやられてしまったんですわね?」

「へ?何がだ?」

「首…くっきりと痕が残ってますわよ」

「………っ?!」


ぶっ、と思わず紅茶を噴出しそうになる。
げほっげほっ、と喉を詰まらせると慌ててラクスが背中を擦ってくれた。

「大丈夫ですか?ゆっくり、落ち着いて…」

「うん、ご、ごめん…。い、いきなりだったからつい…」

「はい……。こんなに可愛らしい首元につけるなんて…さすがですわね」


また、噴出しそうになった。


「い、いや違うんだラクス!!わ、私はこんなとこにするなって言ったのにアスランがっ・・・!」

もはや自分でも何を口走っているのかは分からない。
ただ、全身が熱く火照りだしているのだけは感じることが出来た。
ラクスに"ばれてしまった"のも恥ずかしいが、何よりアスランとのことを思い出されたことが無性に恥ずかしい。 それこそ、穴があったら入りたいくらいだ。


「…アスランが…どうかなさいました?」

「へ?」

「てっきり私はどこかの虫さんがカガリさんの首元を刺してしまったのではないかと思ったのですが・・・勘違いだったみたいですわね」

にこっと可愛らしい笑顔を向ける彼女は、どこをどう見ても毒気はない。

「えっ…あっ…」

やっぱり穴じゃなくてマンホールにでも落としてくれと、カガリは心から思った。

「それとも…その犯人は違う"虫"でしたか?」

「いや、あの……うん…」

「カガリさんは可愛いですから、すぐに"悪い虫"がついてしまいますのね。」

お気をつけて下さいな、と彼女はまたいつもの笑顔を向けながら紅茶を口に入れた。






静かな場所でのティータイム。
女の子だけの秘密の時間。


少しだけ、心臓に悪いのは気のせいか………?
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