アスカガ短編小説

□Relative
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ピンポーン…………

いつものように訪問を示すブザーを押しても、これまたいつものようにこの部屋の主からはなんの反応もない。
続いて2回、3回と押してもやはり反応はなかった。

「……もう!勝手に入るからね!」

がちゃっとドアノブをひねると、やっぱり開いている。
その事実に少しむっとしつつも、キラはおかまいなしに部屋に上がりこんだ。


相変わらず何もない部屋。
その中の数少ない家具達も白やグレーというシンプルな色で統一されているため、生活感の無さがより強調されていた。
アスランらしいといえばアスランらしいけど……。
何だか親友の不器用な一面を見ているみたいで、キラは少し苦笑いをした。

と、隣の部屋からカチャカチャと何かをいじっている音が聞こえてくる。
部屋に入ると、案の定アスランが工具とパソコンを使って仕事をしていた。

「ちょっとアスラン!人が何度もブザーを鳴らしてるのに居留守はないんじゃないのっ?!」

「……な゛、キラ?!」

「他の誰に見えるのさ、まったくっ」

ふん、と顔を背けるとキラは頬を膨らませて拗ねた。

「…すまなかった。ちょっと仕事が立て込んでて………」

そんな親友の仕草に苦笑いをしつつ侘びをいれると、パソコン画面をちらりと見た。
促されるようにキラもそちらに視線を移すと、複雑な製作図とプログラミンが交互に表示されている。
どうやら開発部からの仕事の一部らしい。

「相変わらず仕事ばっかりだね、アスラン。そんなんじゃ将来ハゲるよ?」

「…キラ。お前、そんなことを言うためにわざわざ来たのか?だったら……」

「冗談だよ、冗談っ。……っていうかアスランこそ今日が何の日か分からないの?まさか忘れちゃった訳?」

「は?今日?…………何かの記念日か?」

「…………」


予想通りと言ったら予想通りだけど……。
さすがに付き合いの長いキラも、ここまで鈍い反応を示してくれる親友に同情せずにはいられない。
涙が出る程、綺麗さっぱり自分の誕生日を忘れる奴が他にいるだろうか。
……キラの中で、その答えはノーだ。

「誕生日でしょ!アスランの誕生日!…いい加減覚えなよ、自分の誕生日くらいさ。」

「あー……そうか。そういえば今日だったという気も……」

……しなくもない。
確か仕事の納品収めの日と被ってたなという記憶が……なかった。


「ラクスやマリューさん達も、みんなの予定が合うんだったら食事会しようって言ってくれたんだよ。メールも出したんだけど…それも見なかった?」

「あぁそういえばそんな話もあったような……」

……なかったような。
膨大な数のメールを消化している時、そのまま流してしまったんだろう。
ふむ、と妙なところでアスランは納得する。

「もう、さっきからアスランはそればっかりじゃない……」

深くため息を吐くと、キラも怒りを通り越して呆れる他無いという感じだ。
むしろわざわざ教えに来た自分が滑稽にさえ見えてくる。
いくら親友だからってここまで世話をするのもどうなんだろうか。

------今更だけどね。

結局自分達はいつもそう。
似てないけど、似てる。不思議とお互いのぽっかり空いてる部分が綺麗に埋まってしまう。
確かにアスランは不器用だけど、キラだってマイクロユニット製作では特にお世話になってた訳で。
そんな一定の距離を置きつつ、ここまで親友以上兄弟未満の関係を築いてきた。

だからどちらかに何かがあるとほっとけない。
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