アスカガ短編小説

□AM11:00
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ピチチチチ…
そんな小鳥のさえずりが聞こえたと思ったら、今度はほのかに甘い香りがした。
ん・・・と、重たい瞼を開いてみると、窓から差し込む光でうっすらと部屋が明るくなっているのが分かる。

「…もう朝か。。」

瞼に続いて重たい体を起こそうとすると、いきなり隣でもぞもぞと怪しげな音が聞こえてきた。

「…うわわわわっ」

我ながら情けない声を上げると、その声に反応するようにまたもぞもぞと動く。
一瞬起こしてしまったかと焦ったが、どうやらまだまだその気配はないらしい。
ほっと一安心すると、気が抜けたせいか昨夜の出来事が一気に思い出される。




----甘い声・甘い蜜

----止まらない激しい鼓動・求め合う温もり

----愛しくて愛しくて仕方が無い、止められない


まるで一から十まで初めてのカガリにとって、あれ程恥ずかしいことはなかった。
現に少し思い出しただけでも、体中が熱くなってくる。
……でも……嬉しかった。
それも多分…本当の気持ちの1つだろう。
未だに体はだるいけど、何故か心は落ち着いて…それでいて澄んでいるようだ。

しかし隣で寝ている主はことあるごとに呟く。

「ごめん……」と。

彼は優しい。
それでいて人の何倍もの思いやりを持っている。
自分に無いものをいっぱい持ちながらも、それを誇示しようとしない姿はまさに尊敬すべき存在だ。
なのに、彼はいつも自分に言う。
責める者など、何もないというのに………なんで?








「俺はバカだから・・・・」



ふと浮かんだフレーズに、思わずふふっと笑みを漏らしてしまった。
そう・・・・・・・それもまた彼の性格。彼の全て。


「……本当に大バカだ、アスラン」

こんな自分でいいのかと。
こんな可愛げのない女でいいのかと、何度も何度も尋ねた。
なのにいつもろくに返事を返さないまま、アスランは言う。


「俺はカガリが好きなんだ」

答えになってないぞ、と反論しても笑ってそのまま抱きしめられる。
その力はすごく強くて…それでいて優しい。
すっぽりと包まれた格好の自分は、いつもその温もりで温められてきた。

ちらっと眠るアスランの顔を覗くと、その瞳はまだ閉じたままだ。
…やっぱり綺麗、だと思う。
非の打ち所が無い程の、整った顔立ち。
そんな彼の全ての表情を見たいと思うのはワガママだろうか?

起こさないよう触れる程度のキスをすると、アスランはまたもぞもぞと動き始めた。
そんな仕草に少し笑いつつ、ベットを出ようとするといきなりベットに戻される。
はっと振り返ると、昨日の晩と同じように意地悪く笑う彼がいた。
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