穴蔵の宝物庫

□ある日の朝
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「正宗、時間っ」
珍しくいつまで経っても起きてこない双子の兄を起こすべく、則宗は正宗の部屋のドアを開け声を掛けた。
「…ん」
自分を呼ぶ声に起こされ、気だるげに目を開く正宗の視界に則宗の姿が映る。
「正宗?」
いつもなら起き抜けだろうが何だろうが嫌味なくらい真っ直ぐな瞳が、今日は頼りなさげに潤んだ瞳で自分のことを見上げてきた。
「則宗…」
その上、自分を呼ぶ声が掠れている。
「…もしかして風邪引いたのか…?」
いつもの刺々しい口調も凛とした空気も、どこかへなりを潜めてしまっていた。
考えてみればいつもと様子が違うのだ。正宗は普段、こんな風に横を向いて丸まって寝たりしない。性格をそのまま表すように仰向けで真っ直ぐ寝ているし、寝相も悪くない。
何より、(本人には決して言わないけれど)秋田美人の代名詞とも言えるような則宗自慢の正宗の綺麗で健康的な白さを持つ肌が、全力疾走した後のように朱に染まっているのだ。
不審に思って額に手を当ててみれば、いつもよりはるかに高い体温に驚いた。
「ちょ…正宗お前、熱あるじゃんっ!?」
「…そうか、だから夜中に寒かったのか……」
「気づけよっ!つか今日はゆっくり休め!」
熱で頭の回ってないお前なんか気持ち悪いっ!とかなんとか則宗は悪態をつきながらも正宗を気遣い…、たくとも素直になれない性格上、乱暴に布団を掛けてやる。
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