言の葉を紡いで何処へ行く

□生誕
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*一護生誕のクセに今年の話ではありません。

一応一護ともう一人のキャラは現在の時点ではつき合っています。が、去年の話が主体ですので殆ど出てきません。
序でに、もう一人のキャラは自分の好きなキャラでどうぞ。
個人的には旦。 BLNLどっちにも対応…していたらいいですが、どうも言動的にBL寄りかも知れない。

ではどうぞ。








***


これはまだ、二人がつき合う前のお話。

***

光が窓から射し込む、暖かい昼間。
コンの奴はどこに行ったのかまた姿が見えない。
最近はこんなのばかりだな、なんて頭野はしに思考が浮かぶ。そして、去年もそうだったな、と言うことを連鎖的に思い出す。多分それは偶然なんだろうけれど。
外の喧噪が聞こえるも、それはいつもと同じ日曜日の騒がしさで。
ああ、いつも通りだな、なんて思いながらベッドの上に腰掛けていた上体を崩し。
ゆっくりと寝転がると、そのまま目を閉じた。 


アレは確か、一年前の俺の誕生日。
俺の誕生日と知ってか知らずか、アイツは昼が過ぎたぐらいの時にやってきた。
時間はもう流石に覚えては居ない。大体時計を見た覚えもないのだから当然だ。
そのタイミングでやって来たアイツは、俺が外へ行こう、と言うと笑って手を引いたのだった。

町は思った通り賑わっていたのを覚えている。
土曜日だっただろうか。確か。
そこまでは覚えていないのだけれど、とにかく公立の学校は休みの日で、すれ違うカップルやら友達連れの集団が多かった。
そんな中で、俺達はどう見られて居るんだろうな、なんて。
そんなことを考えたのも覚えている。
その時の答えはたぶんもう誰も知らない。

ゆっくりと散歩するように歩きながら、ウインドウショッピングを楽しんで。
たまには通りかかった少し気になる店に立ち寄りながら。
時間を潰している内に、いつの間にか空は紅くなっていた。
「そろそろ帰るか」
俺が切り出すと、アイツは頷いて。
人がいるというのに、俺の手を引いて人の少ない河川の道へと連れて行かれた。

そのまま暫く歩くこと数分。
いきなりアイツが立ち止まり、つられて俺も歩みを留めた。
引っ張られ初めてから背中ばかり見えていた彼奴がいきなり振り返り。
そのまま抱きしめられたのは、抵抗しなかったのは、俺がアイツをスキだったからで。
少し申し訳なくなったんだ、あの時、あの瞬間だけは。
けれどもいきなりアイツに言われて。
その時の言葉は…教えない。考えているだけだけど、それでも教えない。
俺とアイツだけが知っていればいいよ。俺の頭を覗く奴も居ないと思うけれど。っていうかそれ、人間業じゃないだろ。
それでも秘密。絶対言ってやらない。
直後、俺が言われた言葉に対して拒絶せず、仕返しだとばかりにこちらからも腕に力を入れてやったと言うことだけは言えるけれど。

外で俺を呼ぶ声が聞こえる。
去年と同じ声。
来い、と叫ばれて。
俺はおう、と返事をすると階段へと向かった。


***

何を考えていたのかと外に出た瞬間に問われる。
去年のことだと答えると、アイツは勝手に俺の手を取り。
引いて、河川の方へと向かって歩き出した。

河川の草の上に座ってどうでも良いことを話して。
日が紅くなり始めると、アイツは立ち上がってまた俺の手を引き。
今度は浦原商店の方へと歩き出した。

着くなり、アイツは俺の背を押して店の中に入れた。その瞬間、パンと大きな音がして俺の頭の上に紙吹雪や紙テープと言ったパーティグッズの残骸が降ってくる。
「遅っせーぞ、一護」
「主役が遅刻してどうするんだよ」
「ああでも、どっちかっていうとこれは迎えに行った人の責任かな?」
口々に皆色々な事を言い。
そしてアイツは俺だけに聞こえるように言った。
その直後、皆も言うその言葉を。

「Happy Birthday. 一護」



初出:20070715
up:20070716




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