お妙さんと局長話

□醜
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土方さんが貴方を想っているからこそ

貴方と寝るのが趣味、なんて


誰にも言えない私だけの私の秘密。


「幸せだなあ…」


くすぐったそうに微笑む男。私の大嫌いな笑顔。


そうでしょうね。
だってそうでしょう?
貴方は私の事が好きなんだもの。幸せなのは当たり前。

「大袈裟」


この優越感。
そりゃあそうよ。土方さんなんて、男なんて。
この人を喜ばす事なんて出来ないんだから。


大体


男が男を、好きになるなんて。無理なのよ最初から。ほら、見て。この人の嬉しそうな顔。
私を抱く時にさえ敬語を使う、彼は―――


「そうだ、もう帰らなくては!」


弾けたように起き上がる。

「なんでよ」


慌てて下着を身につける太い、腕。大きな背中。


「これからトシと打ち合わせがあるんです」


…出た。
トシ。


「いいじゃないの…そんなの。居て下さい。」


本音だった。
抱かれた後一人になる寂しさなんて貴方には理解らないんでしょうけど。


「そういうわけには…」


私の為ならなんでもするって何百回も言ったくせに。生涯かけてとかなんとか都合のいい言葉を並べて

信じたわけじゃないけど
信じたわけじゃないけど


「いや、よ…」


彼はこちらを振り向き慌ててしゃがみ込む。

シャツから見える鎖骨。
さっきまで私を抱いて居た身体。


「俺だって一緒にいたいです」


じゃあ居ればいいのに…!嘘つき。嘘つき。


言葉に出したらやきもちのように聞こえるかもしれないから言わない。でも。


何処から間違えたのかしら。最初は、ただの優越感だった。
男になんて、土方さんになんて負けないと思う自体可笑しいのだ。
放っておけばいいのよ本当は。土方さんの事を疑う時点で私は


土方さんに怯えているんだ。


「お妙さん…?」


私は近藤さんの事なんて


「やっぱり大嫌い」


って思わないと
そう、思わないと

危ない。


「そんな事言わんで下さい…」


悲しそうな顔。
私の大好きな顔。


それでも貴方はこの襖を開き土方さんの所へ向かう事を私は知って居た。


おわり200746
 

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