お妙さんと局長話

□印
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今日もパンチされた


多分明日もされるし
明後日もされるだろう

否、キックかもしれない。

お妙さんは技のバリエーションが広いからなあ、とぼんやり考えているのは


道路の真ん中で大の字に倒れて居る近藤勲。



ゆっくり起き上がり目を細めると少し先にまだお妙の後ろ姿が見えた。

ひりひりする頬は
貴女の所偽で。
この傷が治るまでまた貴女を忘れられない。
まるで刻印みたい。


そんな事を思いながらにやりと笑う。



「我ながら詩人だ…」


「死人の間違いじゃないの?」


見上げるとお妙。
驚きすぎて声が出ない。
目を見開きその顔を見る。
だってお妙が引き返してくるわけがないのだ。


「あら、言わないの?『お妙さーん』って」


面白くなさそうに近藤を見下ろすその顔。
表情が無かった。


「いや、あの。びっくりしまして…」


口をばくぱく開く。


「金魚みたいね」


と、お妙は鼻で笑い、近藤はどうしていいか理解らなくなる。
勢い良く立ち上がり背筋を伸ばす。


「なななんで戻って来てくれたんですか」


ロボットのように言ってみる。殴られる準備をしながら。
しかしとんで来たのは拳では無く、溜息。


「随分ですね。只、戻ってきただけなのに。」


何時もとは違う温度のお妙を前にし、調子が狂う近藤は手持ち無沙汰なのか後頭部を掻く。


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