□千
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あいしてるを千回



「トシー」
「ん」
「ピザって十回ゆってー」
「ピッツアピッツア」
「なんでそんな無駄に発音いいの!?ピザだってば」
「それ、しってる」
「なーんだ」

近藤さんはごろりと寝転び足をぶらぶらさせる、俺は刀の手入れ。約束もしてないのに偶然か必然かこうやって縁側に二人並ぶのはうれしい。


「流行ったよね、昔。」
「そうだな」
「トシは小さい頃どんな子だったの」
「は」
「子供のとき」

首をひねりはて、と考えるガキの頃の、俺、かわいくなかったことだけは確かだ
「わすれた」
「目つき悪かったんだろね」

にやにやと俺をのぞきこむあんたはきっと今とかわんねえ、馬鹿正直で優しいガキだったんだろうな

「桃太郎て十回いって、ってのもあったよね」

うーん、と背伸びしながら欠伸混じりの、声
俺は煙草に火をつける

「あったな」
「考えたやつ天才じゃない!?なんでわかんなくなるんだろうね、十回いうだけで」
「十回いったってわかんなくなんない言葉のがいっぱいあるだろ」
「トシトシトシ」
「なんだいきなり」
「わかんなくなるかなと思って」
「ひっで」
「うそ」


わかんなくなるはずないじゃん


「わかんなくなったらまた十回いいなおす」
「わかんなくなんのかよ」
「十回いいなおしてまたわかんなくなったら百回、千回」


明日俺は遠くへ行く多分長いこと。
帰ってくるのは一ヶ月後かもしれないしその倍かもしれないしもしくは。
俺は寂しいけどこの人も寂しいかな、寂しいといい、悲しんでくれるといい百回でも千回でも俺の名前よんでくれればいい

こうやって縁側に並ぶのは偶然なはずなかった、俺は近藤さんのこと待ってたし近藤さんは俺が待ってるのしってた、そういう人なのだ、この人は


「はやく、帰ってきて、ね?」


何度でも呼んで
何度でも


おわり


甘えるこんどうさんがかきたかったんですけど無理でした

 

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