□幻
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あばれたらまたあんたにあえるかと思って








手配書の写真みたとき、俺の頭は真っ白に


「えー今配ったのがまあ、ようするに過激派の攘夷志士の写真だ、あと今後の対応は」


とっつぁんはしゃべる、もっとも俺の耳はこわれたみたくなってその声は左から右へ


「たかすぎ…」


見間違うはず、なかった


「近藤さん?」
「…」
「おい、大丈夫か」
「ん、ああ」


トシの声さえ、俺にはとどかない
俺、はしってる、忘れるはずなんて、なかった
今だって覚えてる、煙に混ざる血のにおい、高杉の、におい







「祭に来ると思うんだ」
「ん、誰が」
「高杉」


手配書に写る高杉を見てからどれくらい、たっただろう でも忘れてなかった、いつでも、忘れるはずがない


「この機会、のがすはずがねえと思う、隊士達にもいっといた方がいい」


トシの吸うたばこ、煙管の煙とは少し色がちがう気がする


「そ、うだな」
「明日の朝礼でいうか」
「トシにまかせるよ」
「は」
「トシがまとめてくれ」
「…あのよ、」
「ん」
「いや、…」


トシは勘がいいし俺は嘘が下手だしで、いつも高杉の話がでたらこんな感じになる、
高杉、高杉、おまえ、なにやってんだ?これがおまえの望んだことなのか?俺は幕府の犬になったよ、それをおまえはしっているのかな、しってるはずない、もししってたならこんなことにはならないのだ、そうだろ、そうだよな


「これが図面だ」


打ち合わせが終わったトシが部屋まで来て説明してくれる、本当に、申し訳ない気持ち、だって俺は


「狙うならここからだな」
「ああ」
「さっきの朝礼で総悟がよ、侍みたら片っ端からやっていいかとかいいやがって」
「…」
「…」


こんなことで悩みたくなんかないのに
たった一枚の写真は簡単に俺をだめにした


「いいか、持ち場についたら各自連絡しろ、祭だから調子にのるやつもいるだろうがほっとけ、狙いは攘夷志士、とくに」


トシが俺をちらりとみた、きがした


「高杉だ」




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