お妙さんと局長話

□感
1ページ/2ページ

「だからいいっていってるじゃないの」


「いやしかしですね…」


飽きもせずに私が勤める店にやって来て
相も変わらず無駄金を使って
呆れもせず酔い潰れた私を担いで家まで送るこの男。


近藤勲。



私は貴方の何もかもが気に入らない。
なんでそうなの?


苛々する、わ。


だから。


「意気地が無いんですね。」


ご丁寧に私を布団まで運んだ貴方に向かって言ってやった。


「意気地の問題じゃないでしょうが。」


『私を抱いてもいいですよ』と。


だって貴方は
私をどうしたいの?
私をどうしたくて毎日会いに来るの?
ゴールはなんなの?


ゴールが、あるの?



「いいから。抱きなさいよ。」


酒も手伝い、勢いがつく。
多分

ここで貴方に断られても
抱かれても

傷つくっていうのに。


「酔っているんですね。」

「酔ってる女を抱くのは嫌だって言うんですか。」


「貴女らしくもない。あまりがっかりさせんで下さい。」


胸に言葉が刺さる。


なんて、顔。


怖い顔。


意識とは裏腹に視界が歪む。


「あ…泣かないで!すっすいません!でも…いやごめんなさい…!」



謝らないで
謝られたら
許さなくてはいけないじゃない。


「だって…」


慌てる彼の顔。

「だって…今貴方、私が誰にでもこういう事言ってるとおもっ…たでしょ…」


何を言ってるのか
自分でも理解らない。


「思ってない!思ってません!」



「私の事好なんじゃないの…?」




顔を手で覆った瞬間、身体が重くなった。


手を外すと


抱きしめられて居た。
大きな
身体。



「狡い」


「…え?」


「貴女は狡い。そんな顔で、そんな事を言うのは反則です。」


次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ