唇を寄せた。求めた。絡めても絡めても足りなくて、繋がりを求めた。何回も体を重ねた。でもやっぱりこの心は満たされたくて、虚しさが残っただけだった。愛してると囁いてみた。そして、また唇を重ねた。 空っぽの愛に縋った 街行く人々を見た。皆、幸せそうに笑っていた。私も隣の彼と指を絡めた。彼は私を愛してると言った。私も、と言って微笑んだ。街行く人々は私たちを見た。素敵だと呟く声が聞こえた。私たちは愛に紛れた。 不透明な愛を掴んだ 「土方さん、最近変わりやしたねェ。」 「そーか?」 「ほら、前のアンタならそんなむかつく面しなかっただろィ。」 そう言われて、俺は初めて自分の頬の筋肉が緩んでいたことに気付いた。総悟にはふうんと適当に返事をしておいた。内心、驚いていた。今までの俺ならありえなかったことだから。1人でにやにやしてる俺って相当気持ち悪いんじゃねぇか。ふと窓に目を向けると、見慣れた背中が校舎から出てきたところだった。考えるより早く、俺は鞄を手にして教室を飛び出していた。後ろで見せ付けてくれやすねィ、と呟く声が聞こえた。 「夜道には気を付けるヨロシ!」 「うん、また明日ね!」 そう言って神楽ちゃんは走っていってしまった。私は近くの木に寄りかかりながらぼんやりと前方を見ていた。遠くに幸せそうに笑っている男女の姿を見つけた。2人はとても綺麗な笑みを浮かべていた。私が欲しくて欲しくて堪らないものを持っていた。どんなにがんばっても、私はあの2人のようにはなれない。わかりきってることなのに。なんでだろ。今更こんな関係が寂しい、だなんて。 愛しあうふりをした 寂しくて悲しくて温もりを求めて愛を求めて、いつのまにか私たちは色あせてしまった。 「片思い切符」に捧ぐ企画夢! 素敵な企画ありがとうございました!by紫音 |