捧げと頂きの恋歌

□愛しあうふりをした
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唇を寄せた。求めた。絡めても絡めても足りなくて、繋がりを求めた。何回も体を重ねた。でもやっぱりこの心は満たされたくて、虚しさが残っただけだった。愛してると囁いてみた。そして、また唇を重ねた。

空っぽの愛に縋った


街行く人々を見た。皆、幸せそうに笑っていた。私も隣の彼と指を絡めた。彼は私を愛してると言った。私も、と言って微笑んだ。街行く人々は私たちを見た。素敵だと呟く声が聞こえた。私たちは愛に紛れた。

不透明な愛を掴んだ


「土方さん、最近変わりやしたねェ。」
「そーか?」
「ほら、前のアンタならそんなむかつく面しなかっただろィ。」

そう言われて、俺は初めて自分の頬の筋肉が緩んでいたことに気付いた。総悟にはふうんと適当に返事をしておいた。内心、驚いていた。今までの俺ならありえなかったことだから。1人でにやにやしてる俺って相当気持ち悪いんじゃねぇか。ふと窓に目を向けると、見慣れた背中が校舎から出てきたところだった。考えるより早く、俺は鞄を手にして教室を飛び出していた。後ろで見せ付けてくれやすねィ、と呟く声が聞こえた。


「夜道には気を付けるヨロシ!」
「うん、また明日ね!」

そう言って神楽ちゃんは走っていってしまった。私は近くの木に寄りかかりながらぼんやりと前方を見ていた。遠くに幸せそうに笑っている男女の姿を見つけた。2人はとても綺麗な笑みを浮かべていた。私が欲しくて欲しくて堪らないものを持っていた。どんなにがんばっても、私はあの2人のようにはなれない。わかりきってることなのに。なんでだろ。今更こんな関係が寂しい、だなんて。




愛しあうふりをした


寂しくて悲しくて温もりを求めて愛を求めて、いつのまにか私たちは色あせてしまった。


「片思い切符」に捧ぐ企画夢!
素敵な企画ありがとうございました!by紫音


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