― 巌戸台分寮
ここで明彦、真次郎、美鶴の三人が一緒に寮生活を始めて一年程が経った。
中学生だった三人も、今は高校一年生。
まだ慣れない高校生活と、勉強と、シャドウ討伐に追われているそんなある日の事…。



「アキが試合に?」
「それは凄いな」
「ああ。一年生は俺だけなんだ」
部活から帰ってくるなり、明彦はラウンジに居た真次郎と美鶴を捕まえて、嬉しそうに今日起きた出来事を報告した。
二週間後に行われるボクシングの大会に、明彦は選手として選ばれたのだ。
中学時代は、無敗を誇るチャンピオンだった明彦。
その明彦が選手として選ばれても不思議ではないのだが、彼はまだ入部間もない一年生。
一年生で試合に出場出来るという事は、相当の実力を持っていなければ難しいだろう。
シャドウ討伐で明彦の実力を知っている真次郎と美鶴も、改めて彼の強さを実感した。
「おめでとう、明彦。そうだ、当日は会場まで応援に行くよ」
「ああ。頼むよ、美鶴」
「チッ…。また食事の面倒は俺がやるのかよ。まぁ、それで勝てれば安いものか」
「いつも悪いな、シンジ。それじゃあ、試合のために、早速トレーニングでもしてくるさ」
美鶴と真次郎の声援を受け、明彦は更にやる気を見せて、報告もそこそこにラウンジを後にした。
自室に戻ったかと思うと、明彦はスウェットパンツにTシャツを着て寮を飛び出して行く。
そんな明彦の姿に、美鶴は思わずくすくすと笑った。
「全く明彦は…。ボクシングの事となると、すぐに回りが見えなくなるな」
「まぁ、あいつは根っからのボクシング馬鹿だからな。んな事より、今日の夕飯はどうするかな」
減量を考慮したヘルシーさと栄養面から、食事のメニューを立てなければならない。
真次郎は台所に行き、冷蔵庫の中身を確認し始めた。
美鶴も真次郎の後に続き、何やらぶつぶつと呟いている彼の背に声を掛ける。



(本誌一部抜粋)

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