「ぶっちゃけ聞きますけど、真田先輩と桐条先輩の関係って、どこまで進んでいるんですか?」



「………はっ…?」


突然飛び出したリーダーの質問に、明彦はただ間抜けな返答をする事しか出来なかった。


◆◆◆

それは、ある休日のうららかな午後の事。
明彦とリーダーと順平の三人は、ラウンジでくつろぎながら雑談をしていた。
思春期の少年が三人も集まれば、自然と異性の話にもなってくる。
そんな中から生まれたふとした疑問を、リーダーは思い切って明彦にぶつけてきたのだった。
当然の突拍子もない質問に、明彦は怪訝そうな表情を浮かべた。

明彦と美鶴が恋人同士である事は、この寮の者を始め、学園中の者が知っている。
学園一の美男美女カップルなのだから、どういった付き合いをしているのか気にならない者なんて居ないに違いない。
直接、当の本人らに聞けばいいのだろうが、美鶴が答えてくれないのは目に見えている。
ならば、男同士で聞きやすい明彦に聞こうと、美鶴がゆかり、風花と一緒に出かけているこのタイミングを狙って、リーダーは行動に移したのだった。
絶好の機会を逃さんと言わんばかりに、身を乗り出して明彦にじりじりと詰め寄る。
「それ、オレも聞きたいっす!」
便乗して、順平まで迫ってくる始末。
それでいて、二人は好奇心に満ちた目で明彦を見てくる。
目前にあるニヤついた二つの顔に、明彦は一瞬恐怖を感じつつも、それを払拭するかのようにぶんぶんと大きく首を横に振った。
「そんな事言えるか!そういった話ならお前達だけでしてくれ。それに、二人ともちゃんと相手がいるんだから、別に恋愛事の話に飢えているわけじゃないだろう?」
だいたいこの手の話は、一人身の者が興味本位で恋人のいる者に聞いてくるパターンが多い。
だが、リーダーも順平も、すでに決まった相手がいるのだから、今更他人の話で異性への興味を沸かせる必要はないはずだ。
にもかかわらず、こんな事を聞いてくるなんてと、明彦は少し呆れたような、それでいてやや苛立ちを感じながら言うと、
「当たり前です。俺はゆかりと相思相愛ですから、行き着くところまで関係を進めていますよ」
しれっとした態度で、リーダーは言葉を返す。
「チドリはまだ入院中だからこれからですけど、少なくとも、真田サンよりオレっちの方が進んでいると思いますね」
続いて、順平がどこか勝ち誇ったように胸を張ってそう言った。
「じゃあ、何でそんな事を…」
「どこからどう見ても、真田先輩と桐条先輩ってオクテそうじゃないですか。だからどういう風に恋人として触れ合っているのか…と、気になっちゃうんですよね〜」
うんうんと頷きながら言うリーダーに合わせ、順平も首を縦に振った。
明彦も美鶴も、同い年の者と比べて大人びた印象がある。
なので傍から見ると、全てにおいて一八歳という年齢以上に経験が豊富そうに感じてしまうのだ。
だが、恋愛経験については驚くほど経験もスキルもない二人である。
一体どういう経緯で、この二人は恋人同士になったのかも不思議である。
嫌味にも似たリーダーと順平の疑問に、明彦もついムッとして、
「別に…、普通だろ」
と、素っ気無く返すが、逆に後輩二人はこれに食い付いてきたのだった。

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