長編小説1

□約束のひだまり〜記憶〜
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「ルーク!昨夜のあなたの態度は一体何なのです!?」


元気よく罵声と同時にファブレ公爵邸にある、中庭から入れる少し離れたルークの私室の扉を開いたナタリアは、朝一番に昨日のあの態度について問い詰めにきたのだ。


「ナ、ナタリア様、ルーク様なら今朝早くに出かけると言って出て行かれましたが…」


ルークの部屋の掃除をしていたメイドが、突然大きな声で入ってきたナタリアに驚いて応えた。


「出かけた?何処へですの?」

「さ、さぁ?それは私は聞いておりません…。ラムダス様なら知っておられるかもしれません」

「そうですか。ラムダスは何処に?」

「応接室に居られると思います」

「そう。ありがとう」


メイドは丁寧に頭を下げ、ナタリアのおかげで止まっていた掃除を再開させた。

当のナタリアは、ラムダスにルークの行方を訊ねるため、応接室へ向かった。




「ラムダス!」


今度は応接室の扉を元気よく開いて目的の人物を探し当てた。


「これはこれはナタリア様。本日は如何されましたか?」


ルークの帰還祝いでもあるのか、ラムダスは応接室を綺麗に整えていた。

しかしナタリアはそんなことはお構いなし。

ずかずかとラムダスのところまで行くと、開口一番、ルークの行方について問い詰めた。


「ルークが今朝早くに出かけたと聞きました。何処へ出かけたかご存じありません?」

「ルーク様ですか。今朝早くに出かけられたことは存じ上げておりますが、行き先までは…」

「貴方も知らないのですの?」


呆れた、と言うように、ナタリアは盛大なため息を吐いた。


「ルーク様ももうご成人ですし、我々が縛るわけにも参りませんから」

「あのルークがレプリカのルークだから、また貴方がたのことですから、興味がないというように放っておいていたのかと思いましたわ」


ナタリアの冷たい一言に、ラムダスは焦った。


「そんな滅相もございません!それに、あのルーク様は誘拐されるまでの記憶を持っておられましたよ」

「そ、それは…?」


突然のラムダスの言葉にナタリアは戸惑った。

てっきり、レプリカのルークが帰ってきたのかと思っていた。

どうやら、“レプリカの”ルークだと決め付けるには早すぎるらしい。


「はい。私、昨夜お帰りになられたルーク様とお話致しました。そしたら、ガイがお屋敷に召し抱えられた頃のことをお話致しまして」

「ガイがお屋敷に召し抱えられたのはルークが誘拐される前ですわ…」


確かに、ラムダスの言うことが正しければ、あのルークは誘拐されるまでの記憶を持っていることになる。

しかし、オリジナルのルークであるアッシュは死んだ。

それに、タタル渓谷に、しかもホドがよく見えるからとあのときあの場に帰ってきたのならレプリカのルークのはずだ。

なぜアッシュの記憶である誘拐されるまでの記憶を持っているのか…。

この答えを知っているとしたら、ジェイドだ。

しかし、聞いたところで応えないのもジェイドだ。


「はぁ…。仕方ありませんわ。ルーク本人が帰ってくるのを待つしかありませんわね。わたくしも、考えたいことが出来ましたし。ありがとう、ラムダス」


ナタリアはラムダスに礼を言うと、応接室を出た。


(一体、どういうことなのかしら…?昨日のあの態度と、何かしら関係があるのかしら?)




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