長編小説1
□約束のひだまり〜決意〜
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「ふぇ〜…。やっと終わった…。結局徹夜しちゃったよぅ。でも、あのままティアに手伝わせるわけにもいかなかったし…。さ、トリトハイム様に持ってかなきゃ」
「お疲れ、アニス」
昨日、結局ティアを帰したために、残り少なと言えどもわりと量の残っていた仕事を、徹夜して仕上げたアニス。
ヘトヘトだけど、休んじゃいられない。
早くこれをトリトハイム詠師に届けなくては。
足早に仕上げた仕事を持ち、図書室を出たアニスを、今、向かおうとしていた詠師トリトハイムが迎えた。
「おぉ、アニス。丁度良かった。今、君を呼びに行こうとしていたところだよ」
「ほぇ?急ぎのご用事ですか?あ…それとも、仕事の催促でしょうか…。大丈夫です!ちゃーんと仕上げましたから!」
どーんと目の前に山と積まれた書類を、アニスはこれでもかと差し出した。
「おぉ、仕事も終わらせてくれたか。ご苦労だったな。ところで、ティアは…?手伝いに来ているとパメラから聞いたが…」
「あ、ティアなら、気分が悪そうだったので帰らせました。もう一人でも十分な量にまで減っていましたので」
「そうか。それは残念だ」
「どうかされたんですか?」
トリトハイムの気になる言葉に、アニスは体ごと傾けて何事か訊ねた。
後ろに背負っているトクナガも一緒に揺れる。
「いや、今朝早く、ルーク様がいらしてね。イオン様にも挨拶を、とわざわざいらしてくれたのだよ」
「ルークが!?」
昨日、ティアと話した考えたくない思考が頭を過ったが、頭を振って紛らわせた。
ルークが来ているとは丁度良いではないか。
真相を確かめられる。
「ルーク様なら今はイオン様の私室においでだよ。アニスも、顔を見せてきなさい。お還りになってから、逢っていないのだろう?」
そりゃあ、相変わらずの仕事の山でしたから、という思いは飲み込んで、アニスはイオンの私室に足を向けた。
「ありがとうございます、トリトハイム様。ちょっと、ルークと大切な話があるので、しばらくイオン様の私室に誰も入れないでくれますか?」
「わかった。ルーク様によろしくな」
「はい」
そしてアニスはイオンの私室に向かって駆け出した。
イオンと初めて逢った場所。イオンを騙して裏切った場所…。
その因縁の場に、ルークはいる。
全てを聞き出して、ティアの考えが正しいのか、判断しなくては…。
アニスは夢中で走った。
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