長編小説1

□約束のひだまり 番外編〜不安〜
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アニスの仕事を手伝っていたティアを迎えに来たルークは、ティアを連れてダアトの教会を出口に向かって歩いていた。

ティアは、一歩下がったところを少し遅れて歩いている。

ティアは先を行くルークの後ろ姿を見て、改めて大きくなったなぁと感じ、あの頃を思い起こした。



初めは頼るなんてとんでもないと言わんばかりのワガママお坊っちゃんで、むしろ自分が巻き込んでしまった民間人なのだから守らなければという気持ちで一杯だった。


だが、その我儘が引き起こした一つの悲劇―…。


初めはそれを受け入れられなかった彼も、髪を切り、受け入れる決意をして変わると言った。

ティアも、そんなルークを見守ると約束した。

でも現実は残酷だった。

変わろうと一生懸命で、変わった彼を、悪戯にも運命は生かしてはおいてくれなかった。

死の選択を迫られ、ルークはそれを受け入れた。

しかしティアはそれを認めないと告げた。

それでも内心は意地でも止めたかった。

でも、止めることはルークの思いを踏み躙るから……。

そう思って送り出したが止めたい気持ちはやはり押せえられなくて…。


……消えてしまったと思った。


でも奇跡とは起こるものなのか、生きていてくれた。

本当に心の底から安心したのも束の間、余命がないこと知ってしまう。

そして別れたあの日、あの日のルークの背中………。



ティアは、無意識のうちに前を歩くルークのマントの裾を掴んでいた。

掴まれたルークは後ろにひっぱられる感じがし、振り返った。

ティアが掴んだまま立ち止まっている。


「…ティア?」


掴んだティアの手は、微かに震えている。


「…どうした?」

「あ………」


声が出なかった。

あの時を、ルークと最後に別れたあの時を思い出し、また、いなくなってしまうのではないかと、消えてしまうのではないかという不安に駆られ、気が付いたらルークを掴んでいた。

出ない言葉の代わりに、瞳からは溢れんばかりの涙が零れた。

突然泣き出したティアに、ルークは一瞬驚いたが、震えたまま泣いているティアを何も言わずに優しく抱き締めた。

言わずとも何となくわかったから。

空白の二年間、そして還ってからの数ヵ月間、傷つけ続けたのは自分だから。

何があっても涙を見せなかったティアの涙。

それは、自分が最も彼女を傷付けてしまっている証に他ならない。

弱いところを見せてくれて嬉しいこともあるけれど、強がっている彼女だからこそ、弱いと困ることもある。

ルークは未だ震えて泣き続けるティアの頭を撫でながら抱き締めていた。

参拝する人もいないダアトの教会はシンとしており、その片隅でただただ泣くティアの啜る声だけが響いた。



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