長編小説1

□約束のひだまり〜深淵〜
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「……ナタリア、婚約破棄、取り消してくれねぇか?」

「え……、ど、どうして…」

「ティアに…拒絶された…」

「ルーク……、あなた、ティアに一体何をなさいましたの!?」

「へ…?」


落ち込んでいる自分に対して思っていたのと逆の反応をされて思わず間抜けな声が漏れた。


「な、何のこと…」

「二年間もティアに逢えなかったストレスからティアにあんなことやこんなことを…」


ナタリアは不埒だと言わんばかりに両手で顔を覆って恥ずかしいという仕草をした。


「ちょ…、ちょちょちょちょっと待て!何でそうなる!?」


濡れ衣だと、寧ろそんなことする前に触れることすら拒絶されたとルークは訴えた。


「……本当ですの?」

「ったり前だ!!誰にんなこと聞いたんだ!っつか教わった!!」

「アニスですわ。あなたがティアに逢いに行っている間に来ましたの」


やっぱりアイツか、と、ルークは頭を抱えた。


「では、ティアに拒絶されたと言いますのは…?」

「あぁ…、これ」


改まって聞いてきたナタリアにルークはティアからの手紙を見せた。

それをルークの手から受け取り目を通したナタリアの顔は見る見るうちに硬直していった。


「そ…んな…。で、でもルーク、あなたは…!」

「ティアが好き、って言いたいのか?…まぁ、そうなんだろうけど…。よくわかんねぇんだよ」


そういったルークの声に覇気はなかった。


「ルーク…」

「ま、そういうわけだから、よろしくな」


そう言って席を立ち、出口へ向かうルークをナタリアは声だけで止めた。


「でもルーク!あなたは、それでよろしいんですの…?」


困惑したように訊ねるナタリアにルークは振り返らずに答えた。


「良いも悪いも…、ティアがそう望んでるんだ。アイツの想いは…無駄にしてやりたくない…」


その言葉だけを残して、ルークは城を出た。



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