長編小説1

□約束のひだまり〜困惑〜
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それから二人は残りの仕事を仕上げ、ティアはユリアシティへ帰っていった。

あのあと、ティアの笑顔が崩れることはなかった。また、ぼんやり悩むような仕草もなくなった。

それでも帰るティアの背を見送るアニスには、何とも言えない悔しさともどかしさがあった。

あのとき、ナタリアとは婚約を破棄したと言っていたのに。ティアと素直に向き合うと言っていたのに…。

ティアには、何よりも、誰よりも幸せを掴んでほしかったのに。

兄という唯一の拠り所を自らの手で消さねばならなかったティアだから……。


「アニス…?」


ティアを見送るアニスの瞳には、知らず知らずの間に涙が溢れていた。

イオンの時と同じように、また、何もできなかった自分が悔しいから?二人がお互いを受け入れられないような後押しをしてしまったから?

どちらでもあるような無いような、そんなもどかしい気持ちだけがただそこには残った。



帰るティアも複雑な想いは断ち切れずにいた。

自分で決めて送り出したとはいえ、待っていたいと心の底から思えるほど愛しい彼を突き放した自分が今は恨めしい。

また諦めきれない自分も憎らしかった。




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