忘れな草
□act:03 過先
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「おう、気づいたか?」
そう言ったのは神楽君、こっちを見てニコッと笑ってる。
曇った空はどこにも無くてただ、自分の家の古びた天井しかなかった。
服が着替えてあって、おそらく神楽君が着せ替えてくれた事が分かったし
額に乗せられたタオルからして、恐らく熱が出てたんだと思った。
「何で・・・あれ?・・僕・・・」
屋上に来た事までは覚えている。
綾瀬君に言われた事も・・・多少は覚えているけど、先生と綾瀬君がどうなったのか
意識が遠かった僕には全然分からない。
「色々ありすぎて混乱してるかもしれねーけどな」
「あっ・・・ううん、大丈夫っ・・・」
とりあえずは分かってる。
今、目の前にいるこの人に聞かないといけないこと。
そう決心しながら神楽君を見つめると、察しが着いた神楽君もこっちを複雑な表情で
ため息をしてから僕をジッと見ていた。
「神楽君、聞きたいことがあるんだけど」
「あぁ、分かちまったら仕方ないな・・・お前にはあのまま閉ざしていて欲しかったのにな」
「ううん・・・逆に今まで記憶を閉ざしてくれていた・・神楽君に感謝しないといけないよ」
「いや、俺は結局お前の所まで間に合う事は無かった。」
そう下を向きながら言っていて、僕は自然に体が動いて神楽君を抱きしめると
少し驚いた顔をした後、僕を抱き寄せた。