ドリーム

□あぁなんて生暖かい優しさ
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窓から見る景色は何時もと変わることは無く、耳に入ってきた電車が線路を走っている音がやけにうるさかった。



『……暇だな。』



先日宣告された病気によって、私はこれからの人生を考えないといけなくなってしまった。



別に直ぐに死んでしまうわけではない。



(死んでしまうのは半年後だ。)



『微妙な人生だったなぁ…』



今までの生きてきた経緯を振り返っても、これといって心に残るモノがなければ後悔もなかった。



コンコン--



『入って良いよ。』



そんな時、扉がノックされ外にやっていた視線を入口へと動かし訪問者を待つ。



「具合はどうじゃ…?」



『……まぁまぁ。』



入ってきた人物を見て聞こえないようにため息をついてしまった。



「そうか……リンゴ食うか?」



『ううん。そんなにお腹空いてないよ。』



「それじゃあ…ここに置いておくからあとで食べんしゃい。」



『………そうだね。』



仁王が手に持っていたのは、真っ赤に染まっているただのリンゴなのに…詐欺師の貴方が持つだけで、どうも白雪姫が食べてしまった毒リンゴみたいに見えてしまうわ。



「それにしても…病院は暇じゃなか?」



『うん。暇だよ。』



仁王の質問に即答で答えると、何やら鞄から一冊の本を取りだした。



『それ、何?』



「暇しないように持ってきたんじゃよ。白雪姫の本じゃ。俺が読むナリ。」



あぁ。
リンゴはそのために買ってきたのね。



『ねぇ、仁王。』



「なんじゃ?」



『そんな優しさ…いらないよ。』



「………。」



うん。いらない。
そんな優しさなんていらないよ。



泣かないように、顔に…目に力を入れるが視界が少しぼやけてしまう。



「……俺は、」



『わかってるよ…彼女と仲良くね。』



その言葉と同時に涙が頬をつたった。



ずっと前から仁王が好きだったけど、仁王には白雪姫のような可愛らしい彼女がいた。



私は所詮おとぎ話の脇役にもなれない出来損ないで、気づいてみたら死の宣告をされてたって訳。



だけど後悔なんてしたくないから告白したら、見事に振られました。



「…友達にしか…みれんかった…」



『知ってる。それに仁王がどのくらい彼女を好きかもね。』



「すまん…」



『謝らないでよ。私はただ勝手に好きになっただけなんだから。』



そこまで言うと、やはり涙が溢れてしまった。



でも仁王にはばれたくなくて、急いで布団を被る。



『きょ…うは…ねるねっ…』



「……また…な。」



掠れた声で届いたのか、また会おうとの言葉と一緒にドアの音。



私だけしかいない空間で鮮やかに光っているリンゴを見て、彼の優しさにまた泣いた。



わざわざお見舞いに一人できれくれた貴方の優しさに…胸が痛い。





『あぁなんて生かい優しさ』
(リンゴや白雪姫の絵本よりも、)
(貴方がほしかったわ。)





企画提出 涙腺ノック様
ありがとうございました!

 

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