転生シリーズ(歌王子)

□A
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歌は好き。スゲー好き。
聞くのも、自分が歌うのも
だけどそれを仕事にしようなんて、思ってもいなかった


あの日、友達と遊んだ帰り道
俺達に向かって一台の車が突っ込んできた

助けられる、なんて微塵も思わなかったけど
反射的に俺は友達の前に飛び出していた

そのあとの記憶といえば、人の叫び声と、車のブレーキ音
それから、視界いっぱいの赤
そして俺はそのまま気を失った




・・・・・




『ん・・・』

ふと気がつくと見知らぬ天井

どこだろう?病院??
ぼやける視界
体が思うように動かない
ああ、俺死ななかったんだ

体は動かないけれど、別にどこも痛くない
麻酔とかのせいかな?
てか、結構派手にぶつかったと思ったんだけどな・・・
即死レベルのさ

どうやら俺はまだ生きているみたい
そういや、友達はどうしただろう?
無事かな
俺が無事なんだから無事だよな

『あーう(誰かいませんか)』

あれ?

『あう、ああ?(喋れ、ない?)』

自分では声を発しているつもりなのに、口から出てくるのは、あー、ばかり
ウソ、もしかして、事故の後遺症!?

『あああー!!あーーーうあー!!(誰か!!看護婦さーん!!)』

誰かちょっと来て!誰かいませんか!説明して!
なんだか急にすごく不安になってきた

「ママー!ふみとおきたよ!」
「ホントね、おはよう郁斗」
『あ?(え?)』

俺の視界に急に入ってきた5歳位の少年
当たり前みたいに俺の名前を呼んでるけど、俺、この子知らない、です

「わー、かわいいねー!」

俺を覗き込みながらそういう少年
こんな小さな子に可愛いなんて、初めて言われた
てか、君の方が何倍も可愛いんですけど

「ママ!ボクだっこしたい!」
「ふふ、龍斗はもう一人前にお兄ちゃんね」

抱っこ?ですか?
いや。無理でしょう
普通に考えて
俺、23歳だよ?
俺が君を抱っこするならわかるけど
君が俺を抱っこするのは無理でしょう、絶対に

それに、お兄ちゃん?ってどういう意味?
俺にお兄ちゃんは居ないですけど??

「パパ、手伝ってあげて?」
「わかったよ、ほら、おいで郁斗」
『あ!?』

いやいやいやいや!ちょっと待って!
あなた誰!?
俺の視界に入ってきた第二の人物
何この人超イケメン。

じゃなくて!!
俺の方に手を伸ばす男性
いやいやいや!いくら大人のあなたでも、俺を抱っこは無理でしょう!?

しかも今、パパって言った?
誰のパパですか一体!?
さっきの少年のパパであることは間違いなさそうだけど
3人の会話を聞いていると、まるで俺のパパでもあるみたいな言い方・・・

そんなことを考えていたら、男性の両手が俺の両ワキに差し掛かる
うそ!?いや、無理無理無理!!!

さっきからわけのわからないことだらけで、大混乱の俺の脳内

無理だろ!絶対!と、思っていたのだが

「よいしょっ、ははっ、やっぱり小さくて軽いなあ」
「パパ首気をつけてね?」
「わかってるよママ」

いとも簡単に持ち上げられてしまった
しかも男性の腕の中にスッポリと・・・・

俺のサイズ感どうなってんの??
てか、どういうこと!?

「パパ!ボクが!!」
「はいはい。気をつけるんだぞ」
「うん!おいでふみと!」

まさか。
君も、俺を抱けるというのか
しかもまた気安く名前呼ばれてるし
誰なのこの子

男性から少年へと移る俺の体
本当に俺の体??
なんだか嫌な予感がしてきた

「うわあ!ちいさくてかわいいー!!」
『あうあー(余裕で抱かれてるよ)』
「はじめまして、僕がお兄ちゃんだよ??」
『あう?(お兄ちゃん??)』

だから、俺にお兄ちゃんなんていないってば
いるのは弟と妹!
しかも完全に君俺より年下だよね!
何故か抱っこされちゃってるけども

「パパ!ママ!いまふみと、おへんじした!」
「本当ね!きっと龍斗のことがお兄ちゃんだってわかったんだわ。よかったわね龍斗」
「さすが、お兄ちゃんだな!」
「えへへ!」

どうなってる?
一体何がどうなってる??
龍斗?そんな名前の子俺は知らない

一瞬とんでもないことが頭をよぎった
いや、まさか
そんな事、あるわけない
だって、そんなん、物語とか、妄想の世界の話だし
いやでも・・・

『ああ、あうああえあ(しゃべ、れないよなやっぱり)』

動かしにくい体を捩って横を見ると、視界に入ってきたのはずっとママと呼ばれていたであろう
女の人の姿
ベットの上に横たわるその人は
まるで、出産を終えたばかりの母のようで・・・・

出産を終えた?

「おっと、危ない危ない!」

それから俺を支えたこの男性
これが、彼女の旦那ってこと?
それで?今俺を抱いているのが、この二人の子どもであって、俺のお兄ちゃん・・・・?

混乱する頭を一旦落ち着かせ、ゆっくりと整理する

視界の端にチラッと入った姿見

鏡にうつる自分を見れば、今自分がどういう状況にあるのか一発でわかるはず
先ほど頭をよぎった考えが、本当か否か・・・

意を決してもう一度体を捩る

鏡に映っていたのは
生まれたばかりのような赤ん坊と、その赤ん坊を抱っこする先ほどの少年

これが。俺??

そんなこと、現実ではありえないと思っていた
けど
本当にこんなことってあるんだ
てか俺やっぱりあの時死んだんだなあ

生まれ変わり

ここまで前世の記憶ってあるもんなんだ

どうやら、今日から新しい人生が始まったらしい

『あー(なんなんだこれ)』

やっぱりというか、当然というか
口から出てきたのは、あー、の一言だった

人生、やり直しか
それもいいかも



「よろしくねふみと。ボクが、ぜったいまもってあげるからね。だいすきだよ!」










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