転生シリーズ(歌王子)

□D
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【音也side】





俺の名前は一十木音也!
今日は、あの早乙女学園の入学式なんだ!!

今俺は、電車に乗ってそこへ向かってる最中!

それにしても混んでるなあー・・・

人ごみに埋もれる中、目の前の女の子が視界に入る
あれって、早乙女学園の制服??

でもなんだか、すごく辛そう・・・気分でも悪いのかな?

あっ!!

体調が悪いんだと思って声をかけようと思ったら、その後ろのおっさんが、その子のお尻を触っていた

「嫌がってるだろ!やめろよおっさん!!」
「あ・・・」

俺は咄嗟におっさんの手を掴んでいた

いい歳して痴漢なんて最低だな!!

「ちっ、なんだよこのガキ。正義の味方ぶりやがって」
「あっ、こら待て逃げんなっ!!」

おっさんは俺の手を振り払い、人ごみの中に紛れてしまった

くそっ!!

「大丈夫??」
「え・・あ、あの・・・その・・・何と言っていいやら・・・」

かなり混乱してるみたい
そりゃあんなことされたらビックリするよね

「そういう時は、ありがとう、っていえばいいと思うよ」

その子を安心されるようにできるだけ優しい笑顔でいいながら、ポンっと頭に手を置いた

「あ、ありがとう・・・」

素直でかわいい子だなあー

「俺は音也。一十木音也!よろしくな!!」
「あ、はい。あの、ここここちらこそよろし・・・」

そう言っている間に、電車が駅についてドアが開いた
ぞろぞろと人が降りていく

あ、あれ?

その子は波に流されるまま電車の外へ・・・

「えっ!ちょ、ちょっと!その制服、早乙女学園だよね!降りる駅ここじゃなっ・・・」

プシュー

俺の言葉を遮るように、電車のドアが閉まった

だ、大丈夫かな・・・

そして俺は予定通り次の駅で電車を降りた



駅から学園までの道を歩く

そういえばさっきの子、名前きいてないなぁ
無事辿り着けてるといいけど・・・
また会えるかな

あ!見えてきた!
ここが早乙女学園かぁ!
すっごいなぁ!デカいし、綺麗だし!

よーし!!がんばるぞー!!

気合を入れて門をくぐる

ん?

そんな俺の視線の先に、カバンをゴソゴソと漁る一人の男

あの後ろ姿
なんだろうこの感覚
懐かしい・・・?

雰囲気と言うか、オーラというか
どうしても思い出してしまう
俺がずっとずっと憧れてた
あの子に

まさかっ!
いやいや!人違いだよ!
だって、ここ受けるなんて聞いてないし!

ちょっと長めで毛先のはねた明るい髪
身長は俺と同じかほんの少し低いくらい
でも体格はあきらかに俺のほうがいいだろう

んんん・・・気になる

もう何年も会ってないし、確信はないけど
俺があいつのこと間違えるわけない!
その自信はある!

絶対そうだ!

「・・・郁斗?」
『へ?』

一瞬ビクッと肩をはねさせて、後ろを振り向く

大きな瞳に、くっきりの二重
ちょっと厚めの唇
綺麗にとおった鼻筋
整った顔
高いでも低いでもない、ちょうどいい声
ものすごく中性的
ほんと、じっくり見ないと男か女かわかんない

昔と違うのは顔の丸さがなくなってて、大人になってるところ

うん、やっぱり俺間違ってなかった!

「やっぱり!!郁斗だ!うわぁー超久しぶり!郁斗郁斗もここ受けてたんだ!嬉しいなぁー!!」
『うっ、んっ?ん?』

郁斗だと分かった瞬間、嬉しくて嬉しくて、思わずぎゅーっと抱きしめてしまった
そんな俺の腕の中で固まる郁斗

「あれ?もしかして、俺が誰かわかってない?」

まさかと思って体をはなして郁斗の顔をじっと見つめる

『・・・あ、音也!』
「よかったぁ!忘れられたのかと思ってビックリしたじゃん、もー!」
『ビックリしたのはこっちだよ!絞め殺されるのかと思った』

郁斗に名前を呼ばれ、ホッとした
てか、久々に名前呼ばれた・・・

俺だと分かった途端、肩の力が抜けたみたいで、郁斗は昔のように話してくれた

「はははっ!俺がそんなことするわけないじゃん!」
『いや、お前は昔から力の加減がおかしいから』
「えー?そうかなー?」
『てかお前、あー、そっか・・・』
「え?なになに!1人で完結しないでよ!」

超気になるじゃん!

郁斗は結構サバサバしてる
でも、素っ気ないわけじゃないし、嫌味とかにも聞こえないから、一緒にいて物凄く楽なんだよなー











初めて会ったのは、たしか俺が2歳の時
まあ、記憶なんて物凄く曖昧だけど
気づいたらずっと一緒にいたっていうか

孤児院の傍に郁斗が住んでて、公園とか、郁斗の家とかでしょっちゅう遊んでた
その時はいいお兄ちゃんみたいな感じで慕ってたんだけどいつからか、そんな感じもなくなって
周りからデキてるんじゃないかって疑われるくらいに仲良しだった

親友って言葉が一番しっくりくると思う

それなのに、俺が9歳のとき
何にも言わずに急にいなくなっちゃって・・・
物凄くさみしかった
俺のこと嫌いになったのかなーとか、嫌われるようなことしちゃったかなーとか
郁斗がいなくなってから数年はずっとそんなことばっかり考えてた

またあえてホントによかった!

『よく俺ってわかったな?』
「んー?そりゃあね!俺が郁斗のこと見付けられないわけないじゃん!」
『6年ぶりか?お前すごいな!』
「へへーん!でもビックリだよー!また郁斗と一緒に勉強出来るなんて!嬉しいなぁー!」
『俺も!音也がいてよかった!ちょっと緊張ほぐれたよ!』
「っー!!ねぇねぇ!クラスどこ!!俺、Aクラス!」

“音也がいてよかった”

その一言がなんだか無性に嬉しくて、もう一回郁斗を強く抱きしめた

あとは、一緒の教室で勉強できたら最高なんだけどな!

『嘘!音也Aなの!?俺、Sクラス・・・』
「そんなっ!?てか、スゴい!郁斗Sクラスなの!?」
『そんなにうまくいかないかぁー』

郁斗の口から出てきたのは、Sクラスという言葉
一緒に勉強できないなんて、残念すぎるよ!

でもすごいや
郁斗歌上手だったもんなー
たしか、ピアノも上手だった気がする

そっか、Sクラスか・・・

がっくり肩を落とす俺だけど、そんな俺よりもっとがっかりした様子の郁斗
その顔には不安の色が浮かんでいる

「・・・俺、会いに行くよ!休み時間とか!ね!」
『え?あー、うん。ありがと』
「あれ!なんか冷たくない!?」
『いや、またなんか、緊張してきたっ』

制服の胸のあたりをギュウっと握りしめる郁斗

「郁斗は人見知りで照れ屋さんだからねー」
『うっ、よく、お分かりで』
「ははっ、大丈夫だよ!郁斗なら!」
『何を根拠にそんな無責任なことっ!この口かっ!』

そういいながら俺の両方の頬っぺたをつねる郁斗

「いひゃい!いひゃいー!ごめんってー!根拠ないけど、絶対大丈夫だよー!」
『あははっ!変な顔!』
「変な顔って!郁斗がやったんでしょ!ひどい!!」

俺の顔から手を放し、声をあげて笑う郁斗
うう、ヒリヒリするー

でもやっぱり笑った顔かわいいなあ

根拠ないなんて言ったけど
そうやって笑ってれば大丈夫だよ
絶対!
それに、もし郁斗に何かあっても
俺が絶対に守ってあげるから

「さて!郁斗の緊張も和らいだことだし、そろそろ行こっか!」
『そ、そーだよな、いつまでもここにいるわけにもいかないしなっ』
「あれ?また緊張してきちゃった?」
『し、してない!もう大丈夫!』

再び表情がこわばった郁斗の顔を覗き込む
まだちょっと緊張してるみたい

「もー!しょうがないなぁーはいっ郁斗!」

そんな郁斗に俺は、笑顔で手を差し出した

『わー、ありがと音也!何て言うと思ったかっ!!』
「いてっ!えー!!待ってよー!」

だけど、笑顔でその手を叩かれた
顔が赤いからきっと照れちゃったんだね

足早に教室に向かう郁斗
俺は叩かれた手をさすりながら、そのあとを追った

「そうそう!!聞いてよ郁斗!俺さっき電車の中で女の子助けたんだよ!」
『助けたって、なにから??』
「ち・か・ん!いい歳したおっさんが、恥ずかしくないのかな!」

思い出したらまたムカついてきた!

『どうだろうな、もしかしたら常習犯とかかもな』
「慣れてる感じだったし、もしかしたらそうかも・・・こうやってさ!!」

目の前を歩く郁斗のお尻を軽くタッチする

『おい!!実践しなくていいって!?』
「へへ、ビックリした?」

ビクッとして思いっきり振り返る郁斗
あ、ちょっと面白いかも

『音也、楽しんでない?』
「え?んんー・・・?」

図星を指されて郁斗から目をそらす

『何とか言えよ、痴漢予備軍』
「違うよ!」
『いーや!違わないね!俺の反応見て楽しんでたろ!』
「そ、そんなことー・・・ないよ?」

い、言い返せない・・・

『・・・』

ジトーとした目でにらまれる俺

「そ、そんな目で見ないでよ・・・でも、その痴漢のお蔭で郁斗に会えたんだよ」
『???どういうこと?』
「良いことしたから、一番あいたい人に会えたんだよ!」

ニコッと笑って郁斗にそう伝える

『!?・・・そっか、よかったね』

あ、照れた

「えへへ」

これからずっと郁斗と一緒にいられるのか
楽しくなりそう!
学園生活楽しみだな!!!

あー、もう行かなきゃ!

「それじゃあまた、放課後にね!!」
『うん、またな音也』

信じられない
本当にまた会えたんだ
ずっと忘れたことはなかった
本当に嬉しい!
んー!もう、郁斗大好き!!

いつか一緒に歌えるといいな!







D
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