転生シリーズ(歌王子)

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「そろそろ自己紹介でも始めっか。ホントはパートナーを決める前にしたかったんだが・・・まあいい。誰からいく?」

日向先生のその一言でまた緊張が蘇ってきた

いや、落ち着けよ俺
自己紹介なんて、ただ名前言って、よろしくお願いしますって言って、ニコってすりゃそれで終わり!
なんも緊張することなんてないんだよ!
そうだ、落ち着け俺、大丈夫、大丈夫・・・平常心平常心

とは思うものの、手のひらには汗がにじんできている

「愚問だな。トップはこの俺、神宮寺レンと決まっている」

そんな俺をよそに一番に名乗りを上げたのは、先ほど仲良くしようといってきた神宮寺レン

「ん?ああ、神宮寺財閥の3男坊か・・・。いいだろう。とっとと始めて、とっとと終わらせてくれ。後がつっかえてっからな」

なんともやる気のない日向先生。
俺も早く終わらせたいです!

そしてレンが席を立った

「やぁ、Sクラスの麗しきレディ達。俺の名前は神宮寺レン。以後よろしく。ああ、ちなみに恋のパートナー席は空席さ」

最後にバチンとウインクを決めたレン

おお・・・さすがって感じ・・・
俺ならできないな

「ああ、それから、レディ以外のアプローチも受け付けてるから、ね」

などと言いながら、再びウインクを飛ばす

俺に向けて

『・・・・』

違う違う、今のはあれだ。この辺一帯にの人にね、したんだよね
そうに決まってる

その証拠に俺の周りの男子が心なしか頬を赤らめている

「あーはいはい。無駄に騒がしくなるからお前もう座っていいぞ。次いけ、次!」
「そいつは残念俺のこともっと知りたい子羊ちゃんは後で俺のところへおいで、神話のようなロマンスを教えてあげるよ」

などとキザなセリフを吐きながら、ついには投げキッスまでする始末

ばっちり目が合ったけど、これも気のせいだよな・・・うん

「次は俺様だな!」

レンの次に自ら名乗りを上げたのは来栖翔

「キャーかわいいー」
「なっ!可愛いとかいうな!」

彼が立ち上がった途端、クラスの女子から黄色い声があがる
その反応が嫌なのか、顔を真っ赤にさせて怒る来栖君

うん、可愛い
可愛いよ、かなり

「可愛いか可愛くないかで言ったら、お前間違いなく可愛い系のキャラだろ?なんだ、自覚なしか?自分の売りくらい把握しとけよ。なりたいもんと、なれるもんってのは違うもんだ」

日向先生も可愛いと思ってたんだ・・・
日向×来栖

あはは、超しっくりくる

と、妄想はおといて。自分の売りねえ・・・
俺の売りっていったいなんだろう

「な、なんだよそれっ!くそっ!馬鹿にしやがって!いいかよく聞け!!この俺様、来栖翔は空手の有段者だ!どうだ!強そうだろう!」

へえ、来栖君、空手とかしてるんだ
なんだかそれさえも可愛く思えてくる

「なるほど、強くて可愛いキャラ・・・と。それはそれで需要がありそうだな・・・」
「なっ!バカ!メモんな!つーか俺は可愛いキャラじゃねえーーー!!」

たしかに、男なのに可愛いなんて言われても嬉しくないかもな・・・
いや、でも、おいしいと思うんだ俺は

ちょっとうらやましかったり…

「可愛いっつーのはああいうっ!っ!!な、なんでもねえ!」
『・・・・・?』

来栖君が俺のほうをみて何か言いかけたが、何を言いたいのかさっぱりわからなかった
そして顔を赤く染めたまま、席に座った

「・・・(まあ、確かに桜田も見方によっちゃ可愛い部類に入るな)」

ん?日向先生の視線を感じる・・・なんだろ
俺なんかしちゃった??

え、あ、次お前いけ的な?
え、待って、まだ心の準備がっ

「じゃあ次、一ノ瀬いっとけ」

と思ったら、次に指名されたのは一ノ瀬トキヤだった

「はい。」

短く返事をして静かに立つトキヤ

はぁ・・・やっぱりかっこいい・・・

立ち振る舞いとか、雰囲気とか、もちろん容姿も
何もかもすべてが完璧だ

はあ、俺なんかとは釣り合わないよな・・・

トキヤに気付いてほしくて視線を送ってみるが、そんな俺の行動は無駄に終わった
トキヤの視線はどこに向いているのか、一向にこちらを見る気配がない

・・・レンとか翔とは嫌でもあうのに!

「一ノ瀬トキヤ、16歳です。皆さんが疑問に思う通り、私はアイドルのHAYATOとよく似ています。しかしそれは私が彼の双子の弟だからに他なりません」

双子の弟・・・
現世で友達が、HAYATOとトキヤは同一人物だって言っていた気がするけど・・・
やっぱり別人だったんだ

「HAYATOに双子の弟?聞いたことないぞ、そんな話」

クラスの誰かが不思議そうにいった

「HAYATOは個人データをほとんど公表してないアイドルです、ですから、このことは内密にお願いします。それと・・・HAYATOのファンだからと、私に彼への取次ぎを頼んでも無駄です。それらの要望には一切答えませんので」

きっぱり言い切ったトキヤ

・・・HAYATOと、あまり仲よくないのかな

「ええー、そんなあー。いいじゃんちょっとくらい」

そんなトキヤに不満そうな声で言うクラスの女子

う、それ本人の前で言っちゃうんだ
すごい度胸だな・・・

「・・・・ふう、あなたもプロを目指しているのなら、ミーハー行為は控えるべきでは?」

溜息をつきながら、すこし睨むように言うトキヤ

こ、怖い

「そうかもしれないけど、何もそんないいかたしなくたって」
「なんかあいつ、性格悪そうだな」
「・・・・・・・」

教室内の空気が一気に凍った

あ、無理。俺この空気たえらんねえ

俺がなにか言われているわけじゃないんだけど、居心地が悪いのはたしか

どうしてこういう空気にするかな、もう!!

『あっ・・・の・・』
「お前、さっそく敵なんかつくっちゃって・・・。示してみろよ。今ここで。偉そうなことを言うだけの実力があるってことをさ」
「そうですね。では・・・」

俺が出る幕じゃないのはわかってる
けど、ただ座っているのはなんだか我慢できなかった
それに、トキヤのこと何も知らないくせに、そういうこと言うのはおかしいと思う

そう思って声をだしたのだけれど・・・
タイミングよくレンと声がかぶり、俺の小さな声はかき消された

く、くそー。なけなしの勇気を振り絞ったというのに!
神宮寺レンのばか!ばーか!!

・・・願わくば今の俺の声、クラスの誰にも聞かれてませんように・・・
だって恥ずかしすぎるだろ!!

赤い顔を隠すように床を見つめていた俺
そんな俺の耳に、トキヤの綺麗な歌声が聞こえてきた

歌ってる。
一ノ瀬トキヤが・・・

本物だ
二次元じゃない、生身のトキヤが、俺の目の前で・・・

自然に顔が上がり、トキヤの声に聞き入った

ほんの数秒聞いただけなのに
鼓動が早い・・・胸が痛いくらいにドキドキしている

綺麗な声
いつまでも聞いていたくなるような
声も、音程も音量も、ブレスさえも、何もかもが完璧で

美しい・・・

トキヤの歌声が聞けてうれしい反面、自分なんか彼の足元にも及ばないという現実に、泣きそうになった

なんだか、トキヤの顔を見ていられなくなって、俺は再び床を見つめた

複雑な心境が頭の中をぐるぐるする
俺は、この世界で、特別な人間じゃない
彼と、いや、彼らと同じこの世界に、居てはいけないんじゃないか
そんなことが急に頭をよぎった
俺はここへ、
早乙女学園へ、
きてもよかったのだろうか・・・

「すげー。こりゃHAYATOとは別人だわ。歌のレベルが違いすぎる」

いつの間にかトキヤは歌い終わっていて、拍手に包まれていた
さっきトキヤのことを酷くいっていたクラスメイトもトキヤに拍手を送っている






この感情はなんなんだろう


妬み、嫉妬


でもそれ以上に、憧れも、尊敬もある


それから、さっき諦めたはずの恋心も


俺はトキヤと、どういう関係になりたいんだ?




友達、ライバル、恋人・・・




なんだかどれもなれない気がする


ただ歌ってほしい、傍で


俺だけのために・・・





・・・なんて


おこがましいよな


はあ、こんなんじゃダメだ


そもそも俺は、何しにこの世界に来たんだ


自分のやりたいことを見失ったら本当にこの世界に必要のない人間になってしまう




大丈夫、まだ始まったばっかり。


これから先どうなるかわからないじゃないか


頑張ったら彼らと同じステージに立てるかもしれない


今は、深く考えず、精一杯頑張ればいいんだ


うん。がんばろう!








「んじゃ、最後は・・・桜田だな」

『!?』

急に日向先生に名前を呼ばれ体が跳ねた

どうやら俺が瞑想している間に、クラス全員の自己紹介が終わったらしい

う、うそ・・・全然聞いてなかった!

え、俺のパートナーは?
トキヤのパートナーの七海さんは!?
他の人たちも・・・


てかまって、

大トリとか、プレッシャーすぎるって!!

・・・いやまあ、なっちゃったものは仕方がない!

とりあえず今は、この自己紹介という試練を乗り越えろ俺!!



・・・みんな何言ったんだろう・・・








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