転生シリーズ(歌王子)

□N
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【七海春歌side】






桜田君が歌い終わり、数分立ちましたが、依然教室内はシーンとしたままです・・・

素晴らしかったです、と伝えなくてはいけない、拍手を送らなければ
そう思うのですが、桜田君の歌で感じたこの感動をもう少し味わっていたくて、体が動きません

きっとみなさんも同じ気持ちなのだと思います

そんなクラスの沈黙を破ったのは背の高いメガネの男の人でした

えっと、確か名前は、藤波秋矢さん・・・

「素敵だったよ郁斗!!さすが俺のパートナー!!みんなにはお前の良さがわからねえんだな!」

すごく気さくな方で、Sクラスの中でもすごく人気者です
彼が作曲家コースと聞いて驚きました
キラキラな笑顔がとても素敵だったので、アイドルコースだと思ったのですけど・・・

そして彼は、桜田君のパートナーです
う、うらやましいです・・・
ですが、ビジュアルだけみれば、とてもお似合いです・・・
とてもおいしいです

イケイケ攻め攻めな藤波さんに、少し引きつつも、なんやかんやで許してしまう桜田君・・・
なんて素敵なんでしょう!!

と、それは置いておいて、藤波さんの言葉に少し棘があるように感じたのですが・・・
気のせいでしょうか・・・

「おいおい!お前だけわかってるみたいに言うなよ!俺様だって、スゲーって思ったよ!!」

藤波さんの言葉に違和感を感じたのはどうやら私だけではなかったようで、
来栖君が椅子から立ち上がり、声をあげました

「ふーん??ま、郁斗の良さを一番理解できるのはこの俺。理解していいのもこの俺だけ」
「はあ?」

そう言いながら藤波さんは、桜田君の席まで移動し、そのまま肩を抱きました

ええ!!
今の言葉といい、行動といい
どういうことですか??
今の言葉はどういう意味なのですか!!
桜田君と親しくしていいのは俺だけという、俺の物宣言でしょうか!!

「だから、気安くこいつに歌わせないでくれっかな、一ノ瀬トキヤ」
「・・・」

桜田君の肩を抱いたまま一ノ瀬さんを一睨みしていう藤波さん

こ、これはっ・・・・

確実に俺のもの宣言ですよね!!
独占欲の強い攻め・・・・最高です!!
笑顔のままなところがまた・・・
このままヤンデレルートだとすごくおいしいです!!

ですが、一ノ瀬さんは彼を見つめ返すだけで、なにも言い返すことはありません・・・

「誰も、こいつの良さなんてわからなくていい・・・」

??
藤波さんの今の言い方・・・桜田君と藤波さんは、知り合いなのでしょうか?
も、もしかして、恋人同士!!

「俺だけ、しってればいいんだ」

とても小さい声でボソッと言った彼
きっとクラスの方達には聞こえていないと思います
ですが、隣の席の私にはしっかりときこえました

それに、とても切ない表情・・・

・・・二人の本当の関係がとても・・・気になります・・・

私の想像通り、恋人同士なのでしょうか・・・

「何故そんなことを言うのですか?君は、彼のなんなのですか」
「あ?お前には関係ないだろ、一ノ瀬トキヤ」
『・・・あ、っと・・・』

そんなことを考えていたら、一ノ瀬さんが立ち上がりました

!?これは、なんという展開でしょう!!

今、一ノ瀬さんと藤波さんが、桜田君のことを取り合って!!

(「彼は君だけの物ではないでしょう」
「俺の物だよ」
「・・・では、どちらが桜田くんにふさわしいか、決めましょうか」
「・・・そうだな」
『ちょっと、俺は物じゃない・・・てか俺の意見も聞いてよ・・・』
「聞きますよ、もちろん」
「そ、ちゃんと感想教えてもらわないと」
『か、感想・・・?』
「どっちが気持ちいいか」
「ちゃあんとジャッジしてね」
『っ!?ちょ!2人ともやめっ!やだっ!』)

そして、前から後ろから桜田君の気持ちいいところを攻めるのですね!
私的には前が一ノ瀬さん、後ろが藤波さんが理想です!
そんな2人に抵抗できない桜田君っ・・・

はあ、なんて可愛いんでしょう!

「ちょっと、ちょっと二人とも、ハニーがこまってるじゃないか」

そんなお二人の間に割って入ったのは神宮寺さんでした

「お前もよくわからないよなー、本気じゃないなら郁斗に近づかないでもらえるかな?」
「・・・」

一ノ瀬さん同様、藤波さんに睨まれながらそういわれ、神宮寺さんの眉間に少し皺がよりました

藤波さんも一層強く桜田君の肩を引き寄せました
そんな藤波さんに困惑気味の桜田君・・・

きゃあああ!もう、素敵すぎます!
なんですか!萌え死させる気ですか!私がこういうの好きだとわかってやっているのですか!
ありがとうございます!!!

藤波さんに、一ノ瀬さんに、神宮寺さん・・・これは現実的に桜田君総受けの可能性が出てきました!!

(「俺も混ぜてもらおうかなあ」
「ダメです、三人では桜田君の体がもちません」
「大丈夫だよ、郁斗慣れてるから、大勢のほうが嬉しいよな?」
『っ・・・秋矢、トキヤ・・・』
「郁斗、俺も気持ちよくしてあげるよ」
『レンっ・・・』)

一ノ瀬さんは一見桜田君の体を気遣っているように見えますが、本当は独り占めしたくてそんなこと言っているのですよね!
そうはさせないと言わんばかりに攻め続ける藤波さんに、
いつか自分だけのものにしようと思っている神宮寺さんっ!!

はあ、もう・・・なんて妄想し甲斐のある人たちなんでしょう!

そして、快楽に弱い桜田君っ

誰かこれで漫画も書いてくれないでしょうかっ

そんなことを悶々と考えていたら、

「なあーんて!困った顔も可愛いなあ郁斗!歌、すごかったよ、さすが俺の選んだパートナー!みんな感動して何にも言えなかったんだよ、な?そうだろ?」
「・・・あ、ああ」

桜田君の肩をポンポンと叩き、いつもの明るい顔と声色で言う藤波さん

そんな藤波さんに教室内がザワザワとし始めました

そして教室内を満足な顔で見渡して、桜田君を席に座らせたあと、自分も席に戻って行きました

次第に教室中が騒がしくなります

一瞬で教室内の空気が変わりました
彼は本当にすごいです・・・

「まあ各々言いたいことはあるだろうが、残念ながら時間だ。藤波、お前も、少しパフォーマンスがすぎるぞ」
「すみませんセンセー!」
「やっぱりわざとかよー!ビビったっつーの!」
「やり過ぎだぞ秋矢―!」
「ごめんごめんっ!」

唇を尖らせて言う藤波さんに、クラス中から笑いが起こります

藤波さんはすごい人です、クラスの人気者で・・・

でも私は・・

彼が少し怖いと感じました

クラスメイトが笑いながら藤波さんを見る中、一ノ瀬さん、神宮寺さん、それから来栖君だけは怪訝そうな顔で藤波さんを見ていました

「桜田も、ありがとな。先生もいいと思うぞ、お前のうた」
『え!あ、ありがとうございます』

日向先生に褒められ、嬉しそうに頬を染める桜田君
可愛い!可愛いです!!
やっぱりクールなのは表面だけで、これが素なのですね!

それと、みなさんは気づいていないようですが、藤波さんは、桜田君を褒めた日向先生に鋭い視線を送っています

ですがそれは一瞬で、元のニコニコとした表情に変わりました

「さて、全員自己紹介終わったな。今日はこれで以上だ、この後寮に移動して、同室者と顔合わせ、それから荷物の整理だ。んじゃ、移動!」

日向先生の声でみなさんが教室から出ていきます

私も気持ちを切り替えて、片づけを始めました

ああ、みなさん一緒に行く友達がいてうらやましいです・・・
私はまだ一緒に行動する友達がいないので、すこし寂しいです

早く友達が出来るといいのですが・・・
萌えについて語り合える友達が!!!

同室の方が同じ趣味の方だということなしです!
私からカミングアウトする勇気はありませんけど・・・






「私は君の歌、好きではありません」

カバンに必要なものを詰め終え、席から立った私の耳に入ってきたのは、一ノ瀬さんのそんな言葉でした

声のする方に視線を向けると、そこにいたのは声の主の一ノ瀬さんと、桜田君でした

初めての2ショット!!これは写真に収めておきたいところです!!

ですが、そんなことが出来る雰囲気ではなさそうです・・・

「君の歌は聞き手を選びます。皆が皆、あの感情を押し付けるような歌い方に感動するわけではないと、覚えておいてください」

聞いてはいけないと思っていても、一ノ瀬さんの言葉が耳に入ってきてしまいます

腕を組み、桜田君に向かって辛辣な言葉を浴びせる一ノ瀬さん

一ノ瀬さんは素直に思っていることを口にしているだけかもしれません・・・

ですが

『っ・・・』

桜田君の表情が少し歪んだのが分かりました

「桜田君、」
「酷いです一ノ瀬さん!!」
『??』

そんな桜田君の顔を見て、私はほとんど無意識にそう叫んでいました

「君は・・・」
『七海、さん』

一ノ瀬さんも桜田君も、驚いた顔で私を見ています

「私は、桜田さんの歌、感動しました!胸の奥に響いてきて、涙が出ました!そんな素敵な歌をどうしてそんな風に言うんですか!」

わかりません、一ノ瀬さんが桜田君にそんなことを言う理由が・・・

私は、桜田君の歌に、力を貰った・・・
それなのにっ・・・

悔しいです。悲しいです。

「ですから、聞き手を選ぶと言っているんです」

桜田君の歌が、一ノ瀬さんの心に届かなかったことがっ

「確かに一ノ瀬さんの歌もとても素敵でした・・・でも今の私の心に響いてきたのは桜田さんの歌です!」

こんなこと、言ってはいけないと、自分でもよくわかっています
だって一ノ瀬さんは、私のパートナーなのですから・・・

それでも言わずにはいられませんでした

私は、桜田君の歌が好きなんです!

「っ・・・君がそうだとしても、皆がそうとは限りません。感情を押し付け、完璧ではない物を誤魔化している。私の歌は完璧です、誰にも負けるつもりはありませんので」

一ノ瀬さんは一体、なにと戦っているのですか

気持ちを伝えるために、周りを元気にするために、目的は人それぞれ違うかもしれません、

でも、誰かの為に、誰かのことを思って歌うのではないんですかっ

「勝ちとか負けとか、そういうっ」
『七海さん!!』
「っ、桜田さん・・・」

声を荒げる私を制したのは桜田君でした
肩に手がかかり、そして優しく微笑まれました

『一ノ瀬君の言ってることも間違いじゃないから。それに俺は七海さんの言葉素直に嬉しかったよ、ありがと』

そういって取り出したハンカチで私の目元をぬぐってくれました

私・・・知らないうちに泣いていたみたいです・・・

こんなに感情的になったのは初めてかもしれません

それほど、桜田君の歌を否定されたことが悔しかったのです

その相手が、一ノ瀬さんだったから余計に・・・

『そもそも君たちパートナーなんでしょ?パートナーの歌を一番好きにならないで、いい曲なんて書けないと思うな俺』

少し怒ったように、けれど、その場を和ませるように言う桜田君

どうしましょう、困らせてしまいました・・・

「・・・桜田さん、私・・・」
『俺のこと庇ってくれたのはわかってるよ。でも俺なんかのせいで、七海さんと一ノ瀬君の曲をダメにしたくないんだ』

ニコッ微笑まれ、ポンポンと頭をなでられ、また涙が流れそうになりました
桜田君は優しすぎます・・・

私が勝手に一ノ瀬さんと言い合ったのに、私たちペアのことを考えてくださるなんて

「・・・・ごめんなさい」

すごく申し訳ない気持ちになり、うつむいて謝ることしかできませんでした

『あ、謝らないでよ!俺こそごめんね』

目を閉じていても、今桜田君がすごく焦っているのがわかります

理不尽ですが、なんだか可愛いと思ってしまいました

「・・・・私は、君のそういうところが嫌いです」
『・・・・・っ』

眉間に皺をよせ、一ノ瀬さんが言いました
そんな一ノ瀬さんを、少し悲しそうに見つめ返す桜田君

どうしましょう、私のせいで二人の仲が・・・

なんとかしなければ!
で、でも、なんて言えばっ・・・

さっきは何でも言えたのに、こういう時に限って何も思い浮かびません!!

「郁斗―!!!あれ、トキヤ?」

何を言おうかあたふたとしていると、教室の入り口から桜田君を呼ぶ声が・・・

『音也!』

赤い髪に元気な声、ええと、彼は確か、電車の中でお会いした!

「なになに!2人仲良くなったの!?あれ!君、電車の中で会った子!!ちゃんと学校つけたんだねえ!!」
「あああ!あのっ!朝はありがとうございました!」

急に笑顔で話しかけられ、男の人に慣れていない私は慌ててしまいました!

『お、音也・・・』
「え?なに??」
『いや、なんでもない・・・』
「??」

音也、と親しそうに呼ぶ桜田君
も、もしかして、二人はとても仲がいいのでしょうか?
桜田君のこういうのフレンドリーな部分は初めて見ました

「私はこれで失礼します。七海さん、寮へ行く前に渡したいものがあります。それからパートナーとして、君に話しておきたいことも」
「は、はい・・・あの、さっきは、その・・・すみません・・・」
「・・・いえ」

一ノ瀬さんに呼ばれ、先ほどのことを謝りましたが、許していただけたのでしょうか・・・

桜田君のためにも、私は一ノ瀬さんに素敵な曲をかきます

頑張らなくてはですね!

それともう一つ・・・

一十木君も攻め要因に追加です!!!













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