転生シリーズ(歌王子)

□O
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『思ってたより、広い・・・』
「ホントだ!!俺もっと狭いかと思ってたよ!」
『俺も』

部屋に入った初めの感想がそれだった

いや、広いにこしたことないんだけどね
そういえば、まだ同室者は来ていないみたい

「ダーイブ!!」
『おい!!それ俺のベッド!!』

部屋に入ってすぐ、俺のベッドにダイブする音也
こういうとこ、無邪気で可愛いんだよなあ

って、そうじゃなくて!俺より先にダイブするなんていい度胸してるじゃないか!

「新しいシーツって気持ちいよねえ!ふかふかだし!」
『今音也がゴロゴロしたことでもう新しくなくなったんだけど』

人のベッドの上でゴロゴロと転がる音也

俺自分のベットに入られんのとかきらいなんだよな
音也だから許してるだけ

「んじゃあ、郁斗も一緒に転がろうよー!」
『どんな誘い文句だよそれ・・・うわっ!』
「へへー!」

音也に手を引かれ、そのままベットに引きずり込まれる

「郁斗の匂い・・・懐かしいなあ。昔はよくこうやって一緒に寝たよね」
『ちょ、ちょっとっ・・・』

ベットの上に転がったまま、後ろから腕を回され抱きしめられる
俺の首の後ろに顔をうずめてクンクンと匂いを嗅ぐ音也

おいっ!!やめ!ゾワッてする!!

俺、人に触られんの嫌いなの!!

音也だからギリギリ許せるけど!!

「いいにおいー!」
『わ、わかったってば、もう放して・・・』
「郁斗・・・」
『!!?ばっ!!調子乗るな!!』

俺の力で音也から逃れるのは無理だと思って、半ば諦めたように身をゆだねていたのだが、
不意に首筋にぬるっとした感触

こいつ、なめやがったな!!何考えてんだ!?

「いたた・・・もう郁斗はすぐ俺のこと叩くんだからあ」
『今のはどう考えても音也が悪いだろ!』
「ええー??」

俺だったからいいものの、他の男にそんなことしてたらお前、即襲われてるからね!

むくりと起き上がりベットの上に並んで座る

「ねえ郁斗」
『んん?』
「大丈夫??」
『・・・なにが?』
「なにって・・・いろいろ?」
『全然大丈夫だし!』
「・・・郁斗がそうやっておどける時は大丈夫じゃないときだよね」
『うっ・・・』
「ねえ、俺はさ、なにがあっても郁斗の味方だから。俺にはなんでも話してよ?」
『音也・・・』
「俺も、郁斗にはなんでも隠さずに話すつもりだよ?」

音也はホント、俺に優しい
誰よりも俺のこと知ってくれてる

俺も音也には心を開いてるつもり

『ありがと、俺も音也には何でも話すよ』
「ほんとっ!じゃあ!!」
『でも、今は、大丈夫、ホントに・・・』
「郁斗・・・」

トキヤに酷いこと言われて、傷ついてます
なんて、音也に言えるわけがない

だって、たしか、音也とトキヤは同室だったよな?
それに仲もよかったはず・・・

俺がトキヤのことを音也に言ったせいで、二人の仲がギクシャクしちゃったら嫌だし

「頑張り過ぎないでよ?」
『おう』
「あはは、素直な郁斗可愛いー!!!」
『ちょおっ!?』

隣から急にガバっと覆いかぶさってきた
音也の勢いに耐えられるわけもなく、そのままベッドに倒れこんだ

「あーあ、郁斗と同室がよかったなあー」

ギューッと腰に巻きついたまま言う音也

『そんなん俺もだし』
「えへへ、嬉しいなあー」
『音也は、大丈夫なのか?』
「うん??」
『その、クラスとか・・・って余計お世話かっ』
「心配してくれるんだ??」
『いや、まあ・・・』
「郁斗が心配してくれるなんて、超嬉しい!!」
『あー、もう、苦しいってぇ!』

とかいいつつ、なんだか今のじゃれあいがすごく落ち着く

人に触られるのも、触るのも苦手だけど
音也にされるのはすごく落ち着く
信頼してるからかな

「ホント嬉しい・・・」
『音也??』

俺を抱きしめる腕の力がいっそう強くなった
あ、なんか、拗ねてる・・・?

と思ったら腕の力が緩み、俺の顔の横に両手をついて見下ろした

これは、なんだ・・・押し倒されてる気分っ

「また会えて・・・もう会えないかと思ってたから」
『・・・ごめん。怒ってる・・・よな』
「怒ってないよ!!怒りはないんだ・・・ただ、すごく寂しかった・・・」
『・・・ごめん』
「じゃあもう俺から離れないで?お願い、だから、傍にいてよ」
『音也・・・』

なんて顔するんだよ・・・
罪悪感で押しつぶされそう
そんな風に思ってたなんて
本当に申し訳ない・・・

「俺、俺ね・・・郁斗のことすごく好きだよ」
『ん、俺も音也のこと好きだよ』

ああ、可愛いな音也
ホント、俺じゃなかったら襲われてるよ

気を付けろよな

「ありがと・・・でも郁斗わかってないよ」
『え』

音也の眉間に皺が寄り、少し怖い顔になった
そしてグッと顔が近づく

「逃げないの?」
『に、逃げるって・・・なにから?』
「俺から」
『な、なんで』
「(拒絶して、お願い・・・じゃないと俺っ)とめられないよ・・・」
『音也・・・?』

苦しそうにそう呟く音也
え、えっと・・・どうしたらいいんだ?これ

さらに顔が近づく

うわあ、綺麗な顔・・・イケメンだなあ
口説かれてんのかな俺
いやでも音也だし・・・
それはないか

この状況、はたから見てたらすげー萌えるのに
そうだな・・・今の俺の位置はトキヤがいいなあ・・・

とかどうでもいいことを考えていたら

ガチャッ

と部屋の扉があいた






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