転生シリーズ(歌王子)

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音也が部屋からでていってから、俺と秋矢は黙々と荷物整理をしていた

無言か・・・なんだか気まずいな・・・
まあ、特に何も話すことはないし、作業もサクサク進められていいんだけど・・・

っと、そろそろ片付いてきたかな

カバンの中身は全部出したし、家具、小物の配置もばっちり!
仕上げにさっき音也にくしゃくしゃにされたベットのシートを伸ばしてっ・・・

「なあ」

完了!と思ったら、ふいに秋矢に声をかけられた

『・・・なに?』

しまった、無愛想だったかな
パートナーなんだから仲良くしないと!!

「終わったなら、ちょっとこっち手伝ってくんねえ??」
『・・・いいけど』

突然なにを言われるのかと内心びくびくしていたけど、なんだそんなことか

自分の方は大方終わったし、全然構わない
むしろ、進んで手伝ってやるよ!
そんなんで仲良くなれるなら喜んで!!

『なにすればいい?』

秋矢にそう聞きながら、秋矢のスペースに移動する

「ああ、そこのカバンの中身、こっちのボックスに移し替えてくれないかな」
『ん、わかった』

そう言いながらカバンを指さす秋矢
お安い御用だ

軽く返事をして、言われた通りカバンの中身を移す
中身は服だった

なんだ、つまんないの

いや別に変なもの期待してたわけじゃないけど

変なものが出てきたらそれはそれで、困るしっ・・・

『え・・・?』

順調に服を移動させていた俺
これで終わりだと思い、最後の服をカバンから取り出した

そんな俺の目に飛び込んできたのは

ピンクの卵型の何か

・・・え?これ・・・

もしかしなくても、大人の・・・

『!?』

咄嗟に服をカバンに戻した

どうやら俺は、見てはいけないものを見てしまったようだ


どうしよう!!
てか、なんでこんなもん持ってんだよ!!
いや、所持するのは別に個人の自由だけどっ
持ってくんなよこんなもん!!!

これで何するつもりだ!!

はっ!!本格的に、音也危ないんじゃねえのこれ!?
いや、音也と言わず、他の人たちも・・・
あ、でも、自分で使うのかもだし・・・
って!どっちにしろそういう風にしか使い道ねえよ!

「どうした?」
『!?い、いや・・・』
「あ、終わったか?ありがとな、助かったぜ!」
『あ、ああ・・・』

やばい、どうしよっ
このまま見なかったことにしようか・・・な・・・
それがいいよな
これから同じ部屋で過ごすんだし、気まずいの嫌だし

「??なんだよ、まだ一枚残ってんじゃん」

手を突っ込んだままのカバンを覗き込まれた
やばいっ

「それ、出したら俺も荷物整理終わりだから!」
『・・・・最後は自分でやったら??』
「は?なんだよそれ?ここまでやっといて??」
『・・・・』
「ほら、早くしろよ」
『・・・っ』

ああー、ダメだ、これもう、無理だ

服をパッと出して、速攻カバンの口閉じればいけるかな・・・

よし、それだ

そう決心した途端

「ほら」
『あっ!!?』

急に秋矢が俺の腕を引っ張った

当然掴んだままの服はカバンから出てくるわけで・・・
隠すもののなくなった大人のそれは、俺と秋矢の視界にばっちりとらえられた

「・・・・」
『・・・・お、俺は・・・別に軽蔑とかしない・・・男なら、こういうの持ってても普通・・・だろ・・・俺は持ってないけ、ど・・・』

おおおお俺は何を言ってんだ!!フォローのつもりかバカ!

「・・・使ってみたいか?」
『・・・・はっ?』

秋矢が何を言ったのか理解をする前に、グッと掴まれたままの腕を強くひかれ、そのまま力任せにベッドに投げ飛ばされた

い、痛い!腕が痛い!!なんだよいきなりっ!!肩外れるかと思った!

起き上がろうと思ったが、その前に秋矢が腹の上に乗ってきたため、出来なかった

お、重いっ

「これ、興味ある?」

そういって俺の目の前にさっきの大人のそれを持ってきた

『なっ!?あ、あるわけないだろそんなの!?ふざけんなっ!どけっ!!』

そりゃ、興味ないっていったら嘘になるけど
俺がされるのは嫌だ!それこそ、音也とか、トキヤに使うわ!
って、何言ってんだ俺!最低か!

「興味ない・・・?ほんとか?」
『っ・・・な、ない!!バカ!』

グッと近い距離で囁かれる
や、やめて。俺、低音ボイス弱いんだよ!

あと、その顔!イケメンこのやろう!そのSっぽい表情で見るなっ!

あああ、顔があつい!
この体勢も、やばいんじゃないか!
俺、完全に組み敷かれてるよねこれ!
押し倒されてんだよねこれ!

そりゃ、こういう体験できて嬉しいけども!
心と体の準備が全くできていないので、やめてくんないかな!

何度も言うけど、俺、人に触られるの嫌いなの!
だから、早くどいて!変な汗かいてきた!

「く・・・ふふ・・・はははっ!!」
『!?なっ』

ジッと俺の顔を見つめていた秋矢だったが、急にこらえきれないといったように笑い出し、玩具をポイっとカバンに投げ入れた

な、え・・・なに・・・

「なるほど、それが本性ね」
『え・・・??』
「言っただろ。“いろんな顔、俺に見せてね”って」
『いっ・・・てた・・・?』

気がする
確かパートナー決めの時・・・そんなようなこといってたような・・・
あの時もだいぶテンパってたからあんまり覚えてない、けど

「俺と話す時と音也と話す時、全然態度違うだろ。よそよそしいつうか、壁があるっつうか」
『・・・そりゃ。初対面だし・・・』
「だから、こういうの見たり、俺に襲われたりしたらどんな反応すんのかなって思って、仕込んでたんだよ」
『うっそ・・・』

なんだよ、それ
俺の葛藤無駄だったんじゃん

「おかげで郁斗の可愛い反応見れたし、大成功だな」
『だ、だからってこんな!』

手の込んだことっていうか・・・
もっと他に方法あっただろ

おちゃらけて言う秋矢に少し怒りが湧いた

「まあ、パートナーなんだし、変に猫被んないでさ。本音でやってかないか。そうじゃないと、いいものなんてできない。だろ?」
『・・・・』

秋矢の言う通りだ
そんなこと、俺だってわかってた
わかってても出来なことってあるだろ
それだよ

「・・・わかった?」
『が、頑張る・・・』
「はああ、まだ固いなあ!!さっきの感じでいいんだって!」
『・・・そんなこと言われても…』

急に全部出せって言われてそう簡単に出来るわけない
ただでさえ人見知りなんだから・・・


「なにをそんなビビってんだよ」
『べ、べつにビビってるわけじゃ・・・』
「人に嫌われるのが怖いんだろ」
『っ・・・』

的確過ぎて、何にも言えない・・

全くその通りだ

過去にそういうことがあったわけじゃないけど
これは現世でもずっと思っていたこと

俺はなにより、人に嫌われるのが嫌いだった
そのためなら、自分を犠牲にだってできた

だから本当に心から信用している相手にしか本音で話せなかった・・・

「好きだぜ」
『・・・はっ?』
「郁斗が何をしようが、何を言おうが、俺が郁斗を嫌いになることはない。だから安心しろ」
『な、何言って・・・』

いや、ホント、何言ってんだ

「俺の物なのに、嫌いになんてなるわけないだろ」
『お、俺の物って・・・だから俺は・・・』

物じゃないっつーの!!

「いや、俺の物だ、誰にも・・・渡さねえ」
『!?やめろっ!!』

急に近づいてきた秋矢の顔
無意識に俺は秋矢の頬を叩いていた

部屋に乾いた音が響いた

「それでいいんだよ」
『それでいいって・・・・ドMか』
「!?ははっ!!いいねその調子!」
『・・・意味がわかんないんだけど』

ホント、なんなんだこの男は・・・

心の扉を無理矢理こじ開けられた感じ

今までに出会ったことのない人種

人を叩いて罪悪感がなかったなんて、初めてだ

そもそも、人を本気で叩いたこと自体始めてだ

「よろしくな、郁斗」
『・・・よろしく。とりあえず上からどいて』
「・・・嫌だっつったら?」
『もう一回殴る、今度はグーで』
「それもいいね」
『マジでMなの』
「いや、どっちかっつーと、鳴かせる方が好きかな」
『・・・』
「そんな嫌そうな顔すんなよ!興奮すんじゃん?」
『マジでどけ!!!』
「はははっ」

さわやかな笑顔が癇に障る
けど、怒りの感情もないし、むしろかなり穏やかだ

秋矢は人と距離を縮めるの得意なんだな
現に、この俺も、少し・・・
心を開けそうな気がする

“好きだ。何をしようが、何を言おうが、俺が郁斗を嫌いになることはない”

さっきのこの言葉が、思ったより効いているみたいだ
正直、心が軽くなっているような気がする
新しい環境になじめるか不安だったから、余計に

「郁斗のことは、なんでも知りたい。包み隠さず教えて」
『っ!?』
「うん、なるほど。耳が弱いっと」
『なっ!!もっ・・うっ・・・』

恥ずかしすぎる、消えてしまいたい!!!
腕で顔を覆い隠す俺
絶対顔赤い・・・

「んん、加虐心をくすぐるとはこういうことか・・・」
『な、なに・・・』
「音也も言ってたろ?全力で抵抗しないと、あっという間に食われちゃうぞっ」
『ちょっ!』

顔を隠していた腕を掴まれ、そのままベッドに縫い付けられる

おい、やめろよ!これマジで、襲われてるみたいじゃん!!
だからそういうのは俺じゃなくて他の奴にやってってば!
俺はこっそり見てるから!!

つか、抵抗しようにも、上に乗られて腕掴まれてちゃどうすることもできないんですけど

「郁斗―!!片付け終わったからご飯行こう!!」
「『・・・・』」

どうにかして秋矢の下から抜け出そうとしていると、部屋のドアが勢いよく開いた

音也、トキヤ・・・

お、おお、なんというタイミングっ
これが漫画によくあるヒーロー登場のシーンなわけだな
こんなことってホントにあるんだ、すげー

とかどうでもいいこと考えながら音也を見た

「はあ、んだよ。邪魔すんなよ」
「はっ!?郁斗!!」

入り口で俺たちを凝視しながら固まっていた音也だったが、秋矢の声を聞いて我に返ったようだ

『あ、音也、これは別にっ』
「全力で抵抗してっていったじゃん!流されちゃだめっていったじゃん!」
『え、俺が怒られんの』

何故かすごい形相で怒られた

「ははっ」

そんな俺と音也を見て、軽く笑いながらベッドから降りる秋矢

「秋矢も!!郁斗になにしてるの!」
「音也が思ってることはなんにもしてないよ?なあ」
『・・・音也が何思ってるのか知らないけどな』

押さえつけられていた腕をさすって起き上がる

手首、赤くなってるし・・・どんな強さだよマジで、怖っ

「郁斗・・・!」
『お、おいっ音也』

ベットに座る俺に駆け寄ってきて、そのままギュウっと抱き着いてくる音也

「ホントに、何もされてない?なにもなかった??」
『・・・お、おう』
「・・・郁斗」

何もなかったってことはないけど、うまく説明できないし・・・
なかったことにしたいし・・・

どもってしまったから音也には嘘だってばれたかもしれない

「・・・何故そのような状況になったのか、説明できますか」
「・・・トキヤ?」
「・・・入ってくんなよ」
「何もないのに何故そのような体勢になるのかと、聞いているんです」

突然喋り出したトキヤに、俺も音也も、驚いたようにトキヤを見つめた

な、なんか怒ってる??
あ、男同士のベッドシーンっていう不快なところ見せたから・・・かな

それともやっぱ、(「私以外の男にそのようなこと・・・」)っていう嫉妬の怒りかな
うん、そっちの方が萌える

「ど、どうしたのトキヤ?」
「・・・なにがですか」
「何がって・・・」
「他人に興味とか持つんだ」
「・・・っ。それもそうですね。私には関係のないことでした。先に食堂へ行きます」

そしてそのまま部屋から出て行った

「・・・トキヤがあんなこと言うなんて」
『・・・そんなに珍しいのか?』
「うん・・・」

不思議そうに首をかしげる音也
可愛いな

てか、音也とトキヤは入学前から知り合いだったんだな
知らなかった

「・・・んじゃ、俺らも飯行こうぜ」
「ちょっと!話はまだ終わってないよ!」
「いいだろもう、郁斗が何もなかったって言ってんだから。それとも、大好きな郁斗の言うことが信用出来ねえの?」
「そっ!そんなことっ!」
『音也、大丈夫だから』
「・・・・わかった・・・信じるよ郁斗」
『ん、飯いこ』
「うんっ!!」

音也の何とも言えない寂しそうな顔を見ていられなくて、半ば無理矢理話を変えた

はあ、音也にあんな顔させるなんて・・・最低だ俺
音也には笑顔が一番似合うのに・・・
これ以上心配かけるわけにはいかない
しっかりしないとな

「腹減った!何食おうかなあ!」
「うわあっ!」
『秋矢!』

ガシっと俺と音也の肩を組む秋矢
お、重い・・・

「先に言っとくわ、俺、スキンシップ激しいから。誰に対してもな?だから、勘違いすんなよ音也」
「んー、それなら仕方ないかあ」
『あ、そこ納得するのかよ』

ニコニコ笑って言う秋矢に納得した様子の音也
お前、それでいいのか

さっきまであんなに秋矢のこと睨んでたのに、今では笑顔の音也
なんか、心配だなあ

「さっき言ったことは本心だから。安心しろ」
『??さっき』

俺の耳元で小さな声でそう言う秋矢
多分音也には聞こえていないだろう

「お前のこと、嫌いになることはないって」
『あ・・・』
「好きだぜ郁斗」
『っ・・・』

だからっ!耳元で低い声で囁くなって!!しかもそのワード!
勘違いするだろうが!ありがとうございます!!

「なに?」
「ん?秘密。いくぞっ!」
「えー??なにそれずるいよお!郁斗!」
『ははっ・・・、気にすんな』
「郁斗まで!!仲間外れはやだよ俺!」

なんて会話をしながら三人で食堂へ向かった

そういえば、秋矢に触られるの、慣れたかもしれない・・・








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