転生シリーズ(歌王子)

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【七海春歌side】





『秋矢、ここの部分なんだけど』

「あ?あー、そこな」
  

教室の中がざわざわとしています

その理由ですか?


『ありがと』

「頑張ってんな」

『ん、ふふ』


なななななんなんですか!あの空気は!!

桜田くんがノートを手に藤波さんの席へ

そしてそのノートを覗き込む藤波さん

まあ、ここまでは特に気にするところはないのですが

しいていうなら距離がものすごく近いということでしょうか

問題はそのあとです

頑張ってるな、そういったあと桜田くんの頭を

ポンポンっと

優しくポンポン・・・と・・・

そして、照れたような顔で微笑む桜田くん

その様子に、その場にいた全員が胸を打たれたことでしょう








入学式から1ヶ月がたちました



先日、初めてのテストも無事に終わり、クラスの雰囲気もだいぶ良くなってきました

それは彼らも同じことで

ルームメイトだからでしょうか?とても仲がよくなったように思います

普段はまだクールな表情の桜田くんも、藤波さんの前では笑うようになった気がします


しかし・・・


『っ』

「っ・・・」


桜田くんが教室から出ようとしたところに、廊下から一ノ瀬さんが

ですがお互い何もはなす事無くすれ違ってしまいました

やはり、まだ二人の間には溝ができたままなのですね・・・

あれから桜田くんが歌っているところはみていないのですが、一ノ瀬さんはまだ彼の歌
嫌いなままなのでしょうか


「はあ」

「はーるか!!」

「きゃ!!と、友ちゃん!」


今私の背後からギュッと抱きついてきたのは、渋谷友千香さん

私のルームメイトで、この学園で初めて出来たお友達です


「なんか暗いわねー。どうかしたの?」

「い、いえ!なんにもないですよ!!」

「ふーん・・・桜田でしょ」

「え!」


にやりとした顔でいう友ちゃん


「変わったわよね彼。少し丸くなったっていうか。まあ、まだ近寄りがたいオーラはでてるけどね」

「ち、違うんです友ちゃん!」

「え?彼のことじゃないの?」


彼のことに違いはないのですが


「あ!わかった!!」

「?」


再びにやりと笑うと、顔を私の耳元に寄せて


「妄想でもしてたんでしょ」

「ええ!?」

「誰と誰でしてたのよー!!!桜田と?やっぱ藤波!?」

「とととと友ちゃん!!」


お察しの方もいらっしゃると思いますが

そうです。

バレてしまいました・・・

まさか私のこの趣味を誰かと共有する日が来るなんて夢にも思っていませんでした


「やっぱあの二人、絶対何かあったわよね!」

「な、なにかって・・・」

「何って、ナニよ!!ルームメイトな上にペアなんでしょ?絶対一線超えてるに決まってるわよ!」


私が荷物の整理をしているとき、こっそり隠し持っていた


その・・・
男の子同士のそういう・・・本をですね・・

見つかってしまいまして・・・

彼女も初めこそ「なあにこれ?」という感じだったのですが

興味を持って読み進めているうちに

どうやらどっぷりとハマってしまったらしいのです

私としては、こういう形でも友達になれてとても嬉しいのですが


「友ちゃん、そういう話は部屋でしましょう!!」


ずっと隠し通してきた私としてはやはり、人がたくさんいる中でこういう話をするのは

やはり抵抗があります

そりゃあ、私だって、藤波さんと桜田くんの間に何があったのか考えるのは楽しいです!

一つ屋根の下、どこまで進んだのかだとか

きっと最中の桜田くんはとても可愛いんでしょうね

藤波さんもさわやかな顔に似合わず、ガツガツ攻めて・・・


「はーるーかー」

「!!と!友ちゃん!」

「顔に出てるわよー」

「すすすすみません!!」

「わかる。わかるわよ。ほんと、妄想し出したらキリがないわよねあの二人」

「そうなんですよね」

「それにしても、一ノ瀬トキヤ」

「え?」

「あの二人、あれ以来ずっとギクシャクしてるわね」


椅子に座り、楽譜を見つめている一ノ瀬さん

彼に最高の曲を作るために、少しでも彼を知ろうと頑張ってはいるのですが

彼の音楽に対する思いはとても大きく深いもので

彼を目で追えば追うほど、なにを考えているのかわからなくなります

それに、桜田くんとの仲もあまりいい感じというわけではなさそうなので

とても心が苦しいです


「・・・ええ」

「心配なんでしょ」

「・・・」

「あんたってそういう子よね。桜田の歌も一ノ瀬の歌もどっちも好きだから仲良くしてほしい。わからなくもないけど、あんたがそこまで悩むことないのよ」

「でも、私は・・・」


決して現実でそういう関係になって欲しいわけではないのですが

もう少し、彼ら二人の関係が良好になってくれれば

欲を言うと、お互いの歌を理解してゆくゆくは
一緒にうたっていただきたいです

私の作る二人のための歌を

二人がお互いの為を思って


「歌ってほしいな・・・」

「はるか?」

「あ!いえ!なんでもないです!!」


そんな日がくるとは、とても思えないのですが・・・

私の一つの夢なんです


「それじゃ!私は行くわね!また夜に!」

「はい!また後で!」


そう言って友ちゃんは教室を出て行きました

友ちゃんはいつも私のことを励ましてくれます

そんな彼女と同室になれて、いえ、友達になれて私はとても幸せものです

こんなことではダメですよね

私も頑張って曲を作らないと!!


「頑張らないと!」

「七海さん」

「!?はい!!」


驚きました

顔を上げたら目の前に一ノ瀬さんのアップが


「な、なんでしょうか!?」


声が裏返ってしまいました

恥ずかしいです・・・


「今回の課題曲の件なのですが」

「あ、はい」

「進み具合はどうですか」

「え、えっとまだあまり進んでいなくて・・・すみません」

「そうですか、できているところまででいいので見せていただけますか」

「は、はい」


そうなのです
最初の学力テストが終わり次は作曲のテスト


私は一ノ瀬さんの期待に応えることが出来るでしょうか


不安ですが、精一杯やるしかありません!!






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