転生シリーズ(歌王子)

□㉚
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テスト返却後

「よし、今回のテスト、みんなよく頑張った。さすが、優秀なクラスだ。おれも鼻が高い。
だが、気を抜くなよ。筆記のテストが終わったら次は実技のテストだ。早速次の課題をだす」

「さすが、業界排出ナンバーワン学校だな」

「その通りだ。本気でデビューしたいならまずは無事に卒業することだ」


この前のテストが返却された

俺の結果は、まあまあいい方だと思う
龍也先生の言い方だと、みんな結果は良かったみたいだ

最初のテストだからか、そんなに難しくなかったけど

ここで気を抜いちゃダメなんだよな


「それで、だ。次の課題はペアで行う」


ペア?


先生のその言葉のあと、クラス内がすこしざわついた
各ペアがお互いに目を合わせている


俺も秋矢の方を見た


もちろんだけど、ちゃんと目があった


ニコッと微笑まれたけど、別にそういうの求めて見たわけじゃない


クラスがざわついている中、先生は黒板に文字を書いていく


「よし。いいか!今回の課題は、編曲だ!」


編曲・・・?


「編曲、つまりアレンジだ。黒板に書いた曲、わかるな?この中から一曲選んで歌ってもらう」


そこに書かれているのは、ここにいる皆なら誰でもわかるようなとても有名な曲ばかりだ


「アレンジって言うのは・・・」


誰かがそう呟いた


「そのままの意味だ。作曲家志望のやつらには選んだその曲のアレンジをしてもらう。そいつのアレンジによってはオリジナルとはまったく違った曲にもなるだろう」

「・・・なるほど、作曲家の力が問われるわけだ」


その言葉に隣の七海さんの体がすこし揺れた気がした

今回のこの課題、レンが言ったように作曲家がかなり重要になりそうだ


「それだけじゃないぞ神宮寺。この曲で試されるのは作曲家のアレンジ力ももちろんだが、どれだけペアにあうアレンジをできるか、いわばシンクロ率が試される」

「シンクロ・・・」


まさかそんな言葉が出てくるとは思わなくて、つい口から出てしまった


「リズムや音域、曲の雰囲気なんかもそうだな。どれだけ歌い手にあうアレンジができるか、そして歌い手がそのアレンジを作曲家の意志を組んできちんと表現できるか」


そう言いながら、黒板に重要なキーワードを書いていく

そうか、どれだけいいアレンジをしてもそれをうまく表現出来なきゃ意味がないんだ


「ペアとして、どこまでお互いの事を理解できているか、ということですね」

「その通りだ一ノ瀬」


さすがトキヤ
やっぱりなんの不安もなさそうだな・・・


「どちらか一方が完璧にできても、もう一方が出来なきゃいい評価は得られない」

「お互いをよく知って、歩み寄る」


翔の言うとおりだ

一学期からなんてハードな課題なんだ


「そうだ。入学当初よりはどのペアも仲は深まってるだろう」


たしかに、最初に比べたら秋矢との仲も深まっていると思う
でもまだ全部を知ってるわけじゃない


不安はある


けど、俺は秋矢のこと信じてるから
俺がしっかり秋矢についていかないと・・・


「今日はこのあとペアでどの曲にするか話し合って、決まり次第始めてくれ」


早速始まるのか


「発表はレコーディング室で一人づつ行う。期限は1ヶ月。もちろん審査は一回きりだ。悔いの残らないよう最高のものを作り上げてくれよ」


1ヶ月・・・

短くないか・・・


「もちろん期限内に完成できなかったペアは評価はなしだ。それ相応のペナルティがあると思えよ」


ペナルティ

普通の学校と違うんだからきっと居残りや再テストなんて生易しいものじゃないんだろう

最悪退学とか


考えただけで背筋が凍る


なんとしても1ヶ月で完璧なものを完成させなければ

退学なんて絶対にしたくない


緊張のせいか無意識に拳を握っていた


隣を見ると七海さんが大きく深呼吸をしていた


そうだよな


相手はあの一ノ瀬トキヤなんだ


どんなアレンジをしたとしても完璧に歌い上げるに決まってる


そうなると重要なのは七海さんのアレンジになる

すごいプレッシャーだと思う

俺だったらそのプレッシャーで押しつぶされていたかもしれない

頑張って欲しい

二人の曲、早く聞きたいな


「郁斗」

『!秋矢?』

「見すぎ」

『え』


俺の席に来て七海さんの方に視線をやる秋矢

なんでここに

と思って周りを見回したら、もうみんなペアで集まって話し合いを始めていた


「そんなに七海さんが気になるのか」

『い、いや・・・』

「七海さん、じゃなくて。一ノ瀬か」

『・・・』

「焼けちゃうなあ」

『どんな曲を作るのか、ちょっと気になっただけ』

「ふーん。俺を見て。郁斗」

『!?』


秋矢から視線を逸らしていたのに、ぐっと顔を掴まれて無理やり視線を合わされる


「・・・」
『・・・』


いつもの万人受けする顔じゃなくて、たまにみる真剣な顔


「信じてるよな俺のこと」

『・・・うん』

「じゃあ大丈夫だ」

『・・・』

「このクラスで一番最高のものを作る。誰よりもいいものを作ってみせる」

『・・・うん』

「だからついてきてくれ。俺がお前を輝かせるから」

『・・・うん』


なんて


力強くて頼もしいんだろう


俺は頷くことしか出来なかった


頑張ら

ないと


「行きましょう、七海さん」

「は、はい」


隣から声がする


トキヤを超えなければ


そう思ったら心臓の奥のほうがギュッとなった気がした





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