世界で一番恋してる

□pm
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1月3日 pm






そんなこんなで俺達は近所の神社へ初詣へ向かった

「はあ、さすが真田って感じじゃのう」

「まさか我々の分まで用意して下さるとは…」

「歩きにくいぜぃ」

「正月の正装と言えばこれだな」

「オレ、これ着るの初めてだ…顔とマッチしてるか??」

『ジェロみたいでいいんじゃないかな』

「ああ、確かにそんな感じだな」

俺達の会話で気付いた方も多いんじゃないだろうか

そう、今俺達は袴を着て歩いている

出掛ける前に弦一郎が突然言い出したからだ

さらにじーさんも母さんもノリノリだったからだ

押し入れから袴を出してきて全員に着せた

つか、よく人数分あったな

「はー…」

『赤也はさっきからどうした??』

溜め息とも違うよくわからない息を吐きながら俺の事を見つめてくる

「彼方さん、似合いますね」

『まあ、着慣れてるからな』

「いや、そういうんじゃなくて、なんと言うか…(美人…)」

『?』

「わかるぜよ赤也、今の彼方の色気は半端無いからのぉ」

「仁王君、不謹慎ですよ」

あ?色気?
ああ、大人の色気ってやつか
袴はけば誰だっけ歳くって大人っぽく見えんだろ

「これが色気っスか…(彼方さんの色気やべえ)」

『そういえばじーさん』

「誰がじーさんか!!」

『あれ?弦一郎?じーさんがついて来てたのかと思ったら、お前だったのか。悪い悪い』

「彼方貴様…」

拳を握りしめわなわな震える弦一郎

袴はいてさらに老けたなあ

「つきましたよ、2日なのでまだ人は多いですね」

「おお!!屋台出てるじゃないっすか!!」

「俺リンゴ飴!」

「赤也もブン太もまずはお詣りじゃ」

確かに凄い人だし、屋台の数も凄い

こりゃ、ふらふらしてたらはぐれるな…

いや、たとえはぐれてもこいつらならすぐに見つかるか

人波をかき分けながら、なんとか賽銭箱の前に辿り着いた

小銭を投げ入れ、みんな手を合わせる

二回目のお詣り、なに願おうか…

前回と同じでいいか

『(いいことありますように)』

みんなはなに願ったんだろ
交通安全とかか?

そういや弦一郎、最近免許とったって言ってたな

よし、今年は俺も免許とろう
そして車買おう
マイカー欲しいしな

じゃあやっぱ交通安全だよな

「(彼方さん、超真剣に願ってる…恋愛関係かな…お、俺も願っとこ!!彼方さんとめっちゃ仲良くなれますように!!)」

「(今年こそ彼方と両思いじゃき)」

「(今年もみんな健康で過ごせますように…欲を言うなら……彼方君がちょくちょく神奈川に帰って来てくれると嬉しいです)」

「(もう少し彼方のデータが取れますように)」

「(食っても太りませんように!あと、今年こそ彼方の手料理食いたい)」

「(彼方と顔覚えてもらえますように!あと、もう少し台詞を…)」


みながみなそれぞれ真剣に願う

『よし』

「なにお願いしたんすか!」

『あ?馬鹿だな赤也、こういうのは人に話したら叶わないんだぞ?』

「あ、そうなんすか!いや、そうっすよね!!」

『あとちゃんと、名前と住所言っといたか?』

「え?なんすかそれ!?」

『はっ、ホント馬鹿だな赤也は。神様この時期、何百人もの願い事聞いてんだぞ?どこの誰か言っとかないと神様だってわかんねえだろ』

「ま!まじっすか!やべぇ!言ってねえ!」

『残念だったな赤也、もうその願いは諦めろ』

「ええ!そんな!」

「彼方君、あんまりからかっては可哀想ですよ」

『はは、悪い悪い』

「嘘なんすか!?」

面白いなこいつ

てか、

『なにホッとした顔してんだ弦一郎、お前まさか…』

「!な、名前と住所言ってなかったから焦ってたわけじゃないぞ!!」

『………はいはい』

「信じてないだろ彼方!!」

こいつ天然なのか馬鹿なのか…馬鹿なのか

「彼方。これ持っとき」

唐突に雅治に袋を手渡された

『雅、なにこれ?』

「厄除けの御守りぜよ」

厄除け?なんで?
まあいいや、もらっとこう

『さんきゅ』

「俺も買ってくるっす!」

「御守りですか、では私もひとつ」

「えーと、恋愛恋愛ーっと」

「赤也、お前はこれだ」

「げっ!勉強運って…」

「これでレポートをやり切れ、ということか弦一郎」

「その通りだ!!」

あわれ赤也は強制的に勉強運の御守りを買わされていた

後でこっそりもうひとつ買ってたみたいだけど

「おーい彼方!!たこ焼き!買ってきてやったぜぃ!!」

両手に食べ物をぶら下げたブン太とジャッカルが走ってきた

どんだけ買ったんだ、食いもんばっかり

「どれ食うよ?チョコバナナ食うか?」

『ああ、じゃあ、ひとくち…』

ブン太の差し出すチョコバナナを食べようと口を開けた俺

「ちょっと待つぜよ!!」

『あ??』

仁王にストップをかけられた
そんな仁王はどこからともなくデジタルカメラを取り出し…

「さ、思う存分頬張るんじゃ!!」

なんだこいつ

「仁王なんかきめえ」

『ああ、同感だブン太』

それからみんなで色々屋台をめぐり、

ようやく家に戻った時には日も大分おちていた

『じゃあみんな、気をつけて帰れよ』

「ああ、正月とは言え、夜道は危ないからな」

袴から私服に着替えた俺ら

時間も時間なだけにそろそろ帰らないといけない

「あー、真田先輩…泊まってったらダメっすか…?」

「なんだ、徹夜で勉強でも見て欲しいのか」

「いや、そういうわけじゃ!!」

『精が出るな赤也、まあ、俺はもう大阪に戻るけど』

「おや、もう帰ってしまうんですか?」

「そうなんスか!?早いっすよ!!」

『ああ、明日の始発で帰るよ』

出てくる時、蔵ノ介に絶対始発!と念をおされたからなあ

「俺のデータが正しければ、始発はたしか、5時半だったか」

『(時刻表も完璧なのか…)まあ、それくらいだな』

「はやっ!!そんなん起きれねえっす!!」

「じゃあ、ここで別れたら最後ってことじゃな」

『そうなるな』

「次はいつこっち来るんすか!」

『うーん……早くて3月…かな?』

「(大分先だ!)彼方さん!」

ガシッと赤也に両手を掴まれた

どうした、やけに気合い入ってるな

『ん?』

「メアド交換して下さい!」

『メアド?別にいいけど』

「ホントっすか!!(よっしゃ!一歩前進!!)」

『ああ』

何を言われるのかと思ったら、そんなことか

「ちゃっかりしとるのぉ。彼方、俺のメアドは入っとるか?」

『変わってないなら入ってる。他のみんなも』

「そうか、じゃあ、こまめに連絡入れるき、ちゃんと返すんじゃぞ」

『??ああ、極力返すようにする』

こうして新たに赤也のメモリーが携帯に記録された

その後弦一郎と家の前でみんなを見送り、見えなくなったと同時に寒いので部屋に戻った


久しぶりに家族で机を囲み夕食

向こうでの話を聞かれたり、去年1年間の弦一郎や花音の話を聞いたりしながら時間は過ぎて行った


風呂にも入り、明日は早いので早々に布団に潜り込む

今、この家に俺の部屋はない

よって、俺は今弦一郎の部屋に布団を敷いてもらっている

「寝たか?」

『まだだけど』

すぐ隣には弦一郎

こんなに近距離で寝るのはいつ以来だろう

『なに』

「いや、元気そうで安心した」

『……熱でもあんのか』

「俺も元気だ」

『あ、そう』

なにが言いたいんだ

「何かあったら、いつでも帰って来たらいい」

『…なんもねえよ、心配すんな』

「そうか、」

『お前も、あんま無理すんなよ、老化が進むぞ』

「……そうだな。」

『(素直すぎる)弦一郎』

「なんだ」

長く離れていると、なんというか少し
不安になる
物足りない感覚
いっても俺の半身だからな

久しぶりだから
せめて今夜だけは

「どうした」

『暖めてよ』

なんだか無性に寂しくなり、俺は弦一郎の布団に潜り込んだ

聞こえる心臓のリズムも、声も、体格も、全く違う俺ら

でも、どこかで繋がるものがある
それが何なのかはわからないけど

暖かい

久しぶりに感じる俺の半身は、想像していたより、遥かに心地よかった

そして俺はいつの間にか深い眠りに落ちていた


「もう少し、言動には気をつけて欲しいもんだな、まったく」

「危機感というものが足りんぞ、まったく」

「……心配にも、なるだろう……まったく」


夢の中で誰かがなにかぶつぶつ言っていた気がする

弦一郎かな?

夢の中まで小言はごめんだぞ




大阪、戻りたくないな、なんて


少しだけ、思ってしまった



こんなこと言ったら、蔵ノ介怒るだろうな


















「(今年一年、彼方が無事に過ごせますように)」
『寒い』
「俺の布団全部持っていっておいて、なにが寒いだ!俺の方が寒いわ!!」


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