世界で一番恋してる

□6日
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「しまった・・・」

やってもうた

俺の手のひらにあるのは

彼方のメガネ

もっとも、現状を維持してはいないが・・・







1月6日






昼飯を食い終わり、彼方が買い物に出かけたのはほんの数分前

寒い寒い言いながら出かける彼方を玄関で見送った俺は

部屋に戻りお茶をいれコタツに入った

そのとき、

自分のおしりのしたから、バキッといやな音がした

何や?昨日食べてたポテチのカスでも踏んだか?

いや、そんなかわいい音やない

これは・・・

「げ、彼方のメガネや・・・」

俺のしたから出てきたのは、無残にもフレームの破壊されたメガネだった

「ど、どないしよ・・・」

ちゅーか、こんなところにメガネ置いとく彼方が悪いよな!!

「せや、俺悪ないわ」

べ、別に、怒られんのが怖いから開き直ったわけちゃうし

「とにかく、それとなく置いとくか」

隠すと見つけたとき怪しまれるからな・・・

「どこ置いとこ」

彼方の壊れたメガネ片手に部屋の中をうろうろする俺

『なにしてんだ』

「!?」

急に背後から彼方の声

「な、何でおんねん!!」

サッと背中にメガネを隠した

帰ってくるの早すぎやろ!

『?財布忘れたから取りに・・・つか、なに隠した』

「・・・財布忘れるとか、あほやな彼方!!」

『なに、隠したって聞いてんだ』

あかん、誤魔化せん

「・・・なんの話や?」

『とぼけんな。手になんか持ってるだろ』

バレとるし

「何も持ってへんし」

『じゃあ手見せてみろよ』

「ほい」

そういって俺は右手を彼方に見せる

『左手』

「ほい」

右手にメガネを持ち替え左手を見せる

『ふざけんなよ。両手同時に見せろ』

「・・・・・・・すまん」

彼方の眉間にこれでもか、というほどしわが寄った

これ、かなりイライラしてきとる証拠や

これ以上刺激したらあかんと思った俺は素直に謝り、メガネを彼方に見せた

『・・・・・・・・・』

「ほんま堪忍な!!置いてあるの気付かんかってん!!」

無言でたたずむ彼方に必死に頭を下げる俺

『はあ・・・』

「彼方?」

何かをあきらめたようにため息を吐く彼方

『いいよ別に。それ大分レンズ傷付いてきたし、度も会わなくなってきてたから、丁度買い替えようと思ってたんだ』

「ほ、ほんまか??」

『ああ』

なんていいやつなんや!!

はあ、心配して損した!

こんなんやったらはじめから素直に謝っとくんやったわ

『春ぐらいに』

「へ?」

えっと・・・春?

つまり、まだ買い替える気はなかったと?

『ありがとな、買ってくれるんだろ?』

「・・・・・買わせていただきます」

やられた

結局俺は彼方のメガネを弁償することになった

『じゃ、今から行くか。買い物ついでに』

「せやな、どうせ今日暇やし」

お金もちょっとなら余裕あるし

はあ、ほんま無駄な出費や・・・





そしてショッピングセンター内のメガネ屋





「どんなんがええの?」

『んー、とりあえず視力測りなおしていいか?』

「ええよ、ほな俺、彼方に似合うかっこええの選んどくわ」

『ああ』

そういって彼方は店の奥へ消えていった

よっしゃ!ほな彼方にバッチリ似あう無駄のないかっこええの見つけたる!!!



そうして10分がたった


「どうやった?」

『少し下がってた。いっそのことコンタクトにするか・・・』

「いや!!コンタクトなんてもったいないて!!」

『そうか?』

「ちょっと出かけるだけで1つ使うとか無駄すぎるわ!!」

『・・・それもそうだな』

コンタクトやったら、いずれなくなるからまた買わなあかんし

メガネやったら一生使えるしな!!

今回みたいにしりの下敷きにせん限り・・・

『で、なんかいいのあったか?』

「ぼちぼち。コレなんかどうや?」

とりあえず、スタンダードな無駄のなっ・・
いやいや、フレームのないメガネを手渡した

『ダサっ。てか、こんなのかけたやついなかったか??』

何塚くんのことやそれ?
ダサいとか言うたら怒られんで

とかなんとか文句言いながらも鏡の前で試着をする彼方

「うわ。ガリ勉やなー、頭よさそう・・・」

『実際いいんだから問題ないだろ』

俺のことを小馬鹿にしたようにニヤっと笑う彼方
俺かて頭良いっちゅーねん

しかし、似合うとるな
悔しい・・・

『でもこれはないな。』

「せやな」

じゃあかけさすなよ、と聞こえたが、まあ、無視しとこ

「これは?どや」

次は赤いフレーム

『ああ、なかなか』

「インテリやな、」

それから次から次へといろんなものを試していった

「黄色」

『笑瓶か』

これも似合うって、こいつどないやねん

一通り試した結果。

どれも似合うことが判明した

ったくどこまでイケメンやねんほんまむかつくわー

変なやつかけさして笑ったろうとおもっとった俺の密かな企みは失敗に終わった

『無難に黒淵かな』

「せやなー」

『何テンション下がってんだよ』

「べつにー」

やって、どれも似合っててつまらんねんもん

『・・・すいません!黒のフレームで一番高いのってどれですか?』

「すまんすまん!!真剣に選ぶさかい!!!」

まったく油断も隙もあれへんな

「いやでもほんま、黒が一番似合ってると思うで?」

『前のやつはフレームないやつだったからな』

「おしゃれメガネっぽくてええやん!!」

『じゃ、これにする』

そういって彼方は黒のちょっと太めのフレームのメガネを手にした

は。そういや、俺が払うんやった・・・

「い、いくらや?」

おそるおそる値段を確認しようとしたが

『いいよ別に。あれ冗談だし』

「え、ほんまに・・・?」

『ああ』

そういって彼方は颯爽とレジに向かっていった

なんやそれ、せっかく金おろしてきたのに・・・

でもまあ、助かった・・・

壊したんは紛れもなく俺何やけど・・・

なんやかんやでこいつ、ええやつやねんな

今度なんかお詫びに買うか

『レンズ入れるの時間かかるらしいから、今のうちに買い物してこよう』

「せやな、ほな行こか」






それから、食品売り場をぐるぐる回り、1週間分の必要な食料を買い込んだ

「まさか、ここで払わされるとは・・・」

『仕方ないだろ、メガネ代で俺の持ち金なくなっちゃったんだから』

「はあ」

まあ、メガネ代に比べたら安いもんやけど

『じゃ、これ持って先帰ってて。おれ、メガネ受け取ってくるから』

そういって紙袋を三つ俺に持たせた

「は!?全部!?自分はなしか!?」

『当然だろ。お前がメガネ壊さなかったらこんな遠いショッピングセンターまで来る必要なかったんだから』

「うっ・・・・何も言えん。」

こうして俺は重い紙袋を3つ持って一人孤独に家に帰った

「さみし・・・」






俺が家についてから15分後くらいにようやく彼方も帰ってきた

「遅かったな」

『ああ、途中でコーヒー飲んで帰ってきた』

「はあ!?コーヒー!?何一人だけ優雅にコーヒーブレイクしてんねん!俺もつれてってーな!」

『だって、ナマモノあったし』

そらそうやけど・・・

「いったん帰ってきてから一緒に行ったらええやん」

『めんどくさい』

そう言いながら彼方はこたつに潜り込んだ

なんちゅーやっちゃ

「晩飯は、なにすんの?」

『んー。さっき鮭買ったから、ムニエルにでもするか』

「お!ええな!」

そうして彼方は買ったばかりのメガネをかけて料理を始めた

うん、やっぱメガネ似合うはこいつ

俺もメガネかけてイメチェンでもしたらモテるやろか

でも俺、視力悪ないしな

伊達メガネなんかかけて視力下がったら嫌やしな

イケメンメガネ作戦はもうちょい後やな


そして今夜の献立は

鮭のムニエルにシーザーサラダにオニオンスープでした


うまかったです。




そんな俺らの1日。



























「明日はバイトか?」
『うん』
「ほな今日は早めに寝なな」
『お前いつから学校始まるの?』
「11日から」
『ずっと家にいるつもりか、働けよ』
「・・・・・・・・」


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