世界で一番恋してる

□9日
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1月9日


成人式当日





「ん・・・!?彼方!貴様またか!」

『・・・・・・?』

早朝、いつもの癖で早く起きてしまった弦一郎
当然まだ彼方は寝ている様子
だが、そんな彼方に朝イチから怒鳴りつける

それもそのはず
眠い目をこすって不機嫌そうに弦一郎を睨む彼方は
何故か弦一郎の布団の中にいたのだから

「貴様っ、どういうつもりだ!また人の布団にっ!」

『・・・ほんとだ。ごめん無意識だったわ』

どうやら無自覚のようだ

「っ・・・一緒に暮らしているとういう白石に、迷惑等かけてないだろうな」

『迷惑もなにも、あいつとはもともとおんなじベットで寝てるし』

「!?なにっ!?そんな話聞いてないぞ!!というかどういうことなんだそれは!」

衝撃の事実を知ってしまった弦一郎

『うるさいな、まだ寝る時間あるんだろ?もう少し寝かせろって・・・』

そういって彼方は再び布団にくるまった

「・・・・・(いくら男友達だからといって、一緒に寝るのはどうなんだ、双子の俺でさえ・・・・・大丈夫なのか白石)」

いろんな意味で心配になる弦一郎だった




そんなことがあってから数時間後



「そろそろ起きろ彼方」

『・・・・・眠い』

朝のジョギングを終え再び部屋に戻り、彼方を起こす弦一郎

「もう下で母さんが準備してるぞ。顔洗ってこい」

『はいはい』

うーんと背伸びをして布団から出る彼方

『寒っ』

「おい!!」

『下まで運んで』

そのまま弦一郎の首にまとわりつき全体重を預ける

「自分で歩かんか!!」

「ふふっ、朝から仲良しね2人とも」

「母さん!なんとか言ってやってください!」

「あら、いいじゃない、そのままおんぶでもしてあげたら」

「母さん・・・(楽しんでるな)」

「彼方、いい加減起きなさい、美容院予約してあるんだからね」

『・・・はい』

母の言葉を聞き、ようやく弦一郎から離れ、階段を下りていく彼方だった

その後顔を洗い、服を着替え、朝食を済ませた2人は母の運転する車に乗り、美容室へと向かった

着いた先の美容室で髪をセットしてもらい、ようやくすべての準備が整った




そして再び家に戻ってきた



「男の子は準備が簡単でいいわね!せっかくきれいにしてもらったんだし、写真撮りましょう!!」

「私も一緒に撮って欲しいです!」

「あら、花音ちゃん!そうね!みんなで撮りましょうか!お父さんー!おじいちゃーん!」

「家族写真か、たまにはいいな」

『めんどくさ』

「そういうこと言うんじゃない」


こうして家族みんなで写真を撮る真田家であった



「さて、そろそろ行くか」

『そうだな』

家で少しくつろいだ2人はそろって家を出た



『この道歩くの、久々だな』

「俺は大学もこの道だからな」

会場は中学の体育館のようだ



そうして歩くこと数分



「人が多くなってきたな」

『ああ』

学校が近づくにつれてスーツ姿の男や、振袖を着た女の子が増えてきた

「彼方君!真田君!!」

「おお、柳生か、似合っているな」

「真田くんたちも、とてもお似合いですよ」

会場に到着してはじめに声をかけてきたのは柳生だった

「彼方、正月ぶりじゃのう!」

『おお、雅』

ポンと彼方の肩を叩き現れたのは仁王

「お前さんら早う受付してきんしゃい」

「受付か、そうだな行くか」

『ああ、じゃあ、また後で』

「やっぱ俺も行くぜよ」

「私も行きましょう」

そうして4人は体育館内へと向かった

受付を済ませ4人がしゃべっていると

「お!!!彼方じゃねえか!!いつ来たんだよぃ!」

ブン太が走りながらやってきた

『今受付済ませてきたところ』

「うわっ!真田サラリーマンみてぇだな!!」

「なんだと!」

『ふっ』

弦一郎を見るなり丸井が言ったそのセリフに、こらえきれず吹き出す彼方

「笑うな彼方!」

『そういうブン太はスーツ全然似合ってねえな、まさに新成人って感じ』

「お前はホストみたいだよぃ」

『ホストならあいつだろ』

「ああ、確かに」

「なんじゃ、二人して」

白髪にスーツの仁王は誰が見てもホストのようだった

「ブン太、ジャッカルはどうした?」

「店忙しいから欠席だってよ」

『蓮二は?』

「柳君は実行委員ですよ」

『ああ。そっか』



【きゃー!】



体育館の入口で女子の黄色い悲鳴が上がった

「なんじゃなんじゃ」

「おや」

『おお』

みながその声の先を注目する

「精市じゃないか!」

「やあ、みんな、元気だったかい?」

悲鳴の原因はどうやら幸村だったようだ

「さすがはテニス部部長、人気は健在じゃのう」

『アメリカ行ってたんだって?』

「ああ!彼方!久しぶりだね!あんまりかっこよくなってたから気がつかなかったよ」

『見え透いたお世辞どうもありがとな』

「お世辞なんかじゃないよ?まあ、彼方は昔も今も、カワイイが正しいけどね」

『触んな』

「もう、つれないんだから」


【きゃー!!】


ニコリと微笑みながら彼方の顎を持ち上げる幸村

「相変わらず幸村のスキンシップは激しいのお、羨ましい限りじゃ」

「アメリカ行ってさらに激しくなったんじゃねえの」

「せ、精市・・・」

そんな2人を遠巻きに見る仁王、丸井そして真田の3人

「みんな揃っているな」

「柳、実行委員ご苦労だな」

そこへ柳も合流した



【きゃー!!テニス部が揃ったわよ!】
【やっぱりみんなかっこいいわ!】
【彼方くーん!!】


『はは・・・』


【手振ってくれた!】
【違うわよ、私に振ってくれたのよ!】


名前を呼ばれ手をふっただけの彼方だったが、それが火種となって喧嘩が始まってしまった

「モテモテじゃのう」

「ファンクラブは健在のようだぞ」

『・・・』


【仁王くんが彼方くんの肩に手を!!】
【柳くんも置いてくれないかしら!】


「・・・」

無言で女子のリクエストに答える柳


【きゃー!!やってくれたわ!】


「やらんでいいぜよ参謀」

『これのなにが嬉しいんだか・・・』

「わかってないのう彼方は」

『?』

一人だけわけがわからないと、首をかしげる彼方だった

「ずるいじゃないか君たちだけ。俺にも触らせておくれよ」

『寄るな変態』

両手をワキワキさせながら近づく幸村に、彼方は暴言を吐き捨てて弦一郎の後ろに避難した

「そっけない態度がまたそそるね」

めげない幸村だった

そんな2人に再び女子の悲鳴が上がる

幸村が逃げる彼方を地味に追いかけまわしていると、体育館内にアナウンスが響いた


「まもなく式が始まりますので、新成人のみなさまは、自由に席にお座りください。」

「ほれ幸村、もう終いじゃ」

「残念だよ。続きは俺の家でしようね」

『何をだよ』



そしてそれぞれ席に着き、偉い人のありがたいお話を数時間延々と聞いた



そして式も無事終了。



「長かったなー!!あ!そうだ!彼方!!写真撮ろうぜぃ!!」

体育館からでた彼方達にデジカメを向ける丸井

「ええのお、記念にもなるし。賛成じゃき」

「いいですねえ、さ、彼方君、逃げないでこっちへ来てください」

『だから俺、写真とか嫌いなんだって』

「彼方今日くらいはっ」

「成人式という今日この日は二度と来ないのだぞ、とお前は言う」

『・・・わかったよ』

「彼方!こっちに来て俺と一緒に撮ろう!もちろんスーツは乱れ気味でね」

『死ね変態』

誰もが恐れる、神の子幸村にこんなことを言えるのは、後にも先にもきっと彼方だけだろう

そうして写真撮影が始まった

そんな彼らを、遠巻きで晴れ着姿の女子たちが必死になってシャッターを切っていた



そんなこんなで写真も撮り終え、もう解散するかというところで

「お前ら!二次会来るだろ!!?」

元クラスメイト数人が声をかけてきた
どうやら夜に二次会が開かれるらしい

「飲み放題の居酒屋で、一人予算5000円!くるだろ?つか来いよ!お前ら来れば人も集まるし!!」

人集めのためかよ、と彼方がぼそりと呟いたが、誰にも聞こえてはいないようだ

「いいじゃん!行こうぜぃ!!楽しそうだし!うまいもん食えそうだし!」

「ブン太は相変わらずくいもんのことばっかりじゃのう」

ノリノリの丸井

「んじゃ、時間と場所教えるから、絶対来いよな!」

「わかった。メモしておこう」

「弦一郎、若者がメモに頼るなんてよくないよ。暗記しなきゃね」

「う、うむ」

そうしてクラスメイトに時間と場所を聞き、スーツを着替えるために一旦解散することになった

「それではまた後程」

「現地集合でいいかのお?」

「いいんじゃないか?わざわざ集まる必要もないだろう」

「そうだな弦一郎」

「彼方、俺と離れるのはさみしいと思うけど、少しの間だけ、我慢しててね」

『さっさと消えろ』

最後に彼方が幸村に暴言を吐き、一同は解散した






そして話は夜の居酒屋へと続く・・・・

























『俺の分のお金、頼むね、弦一郎お兄ちゃん』
「なにっ!?貴様こういう時だけ弟ぶりよって!!!」
『(出してはくれるのか・・・)』
「(お兄ちゃんと呼ばれたのはいつぶりろうか・・・やはり悪くないな)」
『さっさと歩けよ弦一郎』
「貴様・・・」




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