世界で一番恋してる

□夜
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「お!!待ってました彼方君!!」

『先に払うのか?』

「ああ!あとこの出欠表に丸付けて!適当に席に座ってて!」





1月9日 夜





「彼方!真田!こっちじゃ!」

「早いな仁王」

『何もう皆いるじゃん、俺ら最後?』

目的地の居酒屋に弦一郎と彼方が到着した頃にはもうすでにテニス部メンバーが揃って席についていた
どうやらこの店、今日は貸切らしい

「彼方!さっきぶり!さ、俺の隣に座りなよ!なんなら膝の上でもいいよ」

『柳生、隣いいか』

「え、ええ・・・私は構いませんが。幸村君そんなに睨まないでください」

柳生の隣に腰を下ろす彼方
そして柳生を睨みつける幸村

「じゃ、反対側は俺が座らせてもらうぜよ」

そうしてちゃっかり仁王が彼方の隣に座った

「君たち、昔より大分図々しくなったねえ」

笑顔で言う幸村だが、その目は笑っておらず、背後からモヤモヤとした黒いオーラが見えたとか見えないとか・・・


「なあ彼方、酒飲むよな?つか飲める?」

「そうじゃ彼方、お前さん強いんか?」

唐突に丸井と仁王が彼方にそう聞いた

『飲めるよ。嫌いじゃないし、それなりに強いと思うけど』

「あんまり飲むなよ彼方。お前酔うと厄介だからな」

『厄介ってなんだよ弦一郎、お前こそ、3口で吐くくせに」

「うっ」

どうやら過去にそういった失態があったようで
思い出したのか顔を青くする弦一郎

「お前らほんとに双子かよぃ」

「弱いのお真田」

「あまり無理して飲んではいけませんよ」

「ノンアルコールもあるらしいぞ弦一郎」

そんな弦一郎にメニューを開きながら言う柳

「じゃあ、俺もノンアルコールかなあ」

『精市飲まねえの?強そうなのに』

「俺まだ未成年だからね」

「そうか、精市は誕生日遅かったな」

誕生日が3月5日の幸村だけが唯一お酒が飲めない


そんなこんなでワイワイと話していると幹事らしい男が乾杯の指揮をとり始めた

各自飲み物を注文し、グラスを手に
幹事の「乾杯!」の合図と共にお互いのグラスをぶつけた

「よっし!!ガンガン飲むぞー!!」

「ノリノリじゃのうブン太」

「だってよ仁王!元は取らねえと!!」

『ちっちゃいな』

「なんだよ彼方!ほら!飲め飲めぃ!!」

「ブン太!あまり彼方に飲ませるな!」

最初のイッパイを一気に飲み干した丸井は彼方のコップに早々とビールを注いだ

「いいね皆飲めて」

「幸村君、あと数ヶ月の我慢ですよ」

「いいんじゃないかのお、別に今日くらい飲んでも」

「仁王君!」

「未成年者の飲酒を知りつつも制止しなかった場合は、酒類を販売・供与した関係人は、50万円以下の罰金に処せられるのだが、それでも構わないのだな仁王」

「な、なんでそんな詳しいんじゃ参謀・・・冗談じゃき」


顔を背けて一口ウイスキーを口にした


「ところで彼方。今こっちにいないんだったよね?一体どこに住んでるの?」

グラスを持って彼方の近くに移動する幸村
乾杯のあとすぐに、席はぐちゃぐちゃになっていた

『ああ、精市には言ってなかったっけ?今大阪に住んでんだよ』

「大阪!またなんて野蛮なところに・・・そんなところで一人暮らしなんて危ないじゃないか」

『ひとり暮らしなんて言ってないし。ルームシェアしてんの』

「!聞いてないぜよ!誰と住んどるんじゃ!」

「その人はちゃんと信用のできる人なのですか!」

「俺らの知っている人の確率は・・・」

「いいじゃんルームシェア!楽しそうだなあ!」

どうやら彼方がルームシェアをしていることは誰一人知らなかった様子

『・・・弦一郎、言ってなかったのか?』

「あ、ああ、必要ないかと思って・・・」

「超重要じゃ!」

そして責められる弦一郎

「で、相手は誰なの?俺の知っている人?」

「そうじゃ、そこが問題ぜよ」

「知っている人ならまだ安心なのですが」

『白石だけど。元四天宝寺中の、いただろテニス部に』

「「「「「!?」」」」」

白石という名前を聞いて皆固まった

『そんな固まるようなやつか?』

「予想外の人物すぎて開いた口が塞がらんぜよ」

「し、白石君でしたか・・・意外ですね」

「マジかよぃ!」

『ああ、たまたま同じアパートの隣に住んでてさ。家賃もったいないしどうせなら一緒にって』

「大丈夫なんかのお」

『なにが』

「仁王君が考えているようなことはないと思いますけど」

「確かに、合宿中もそのような素振りは全くなかった」

「なんのデータだよぃ、それ」

「白石か・・・ふふっ、彼もすみにおけないな」

「顔笑ってないぜよ幸村」

『・・・(言わないほうがよかったな、なんかごめん蔵ノ介)』

幸村の手の中のグラスに少しヒビが入った




それから皆で中学時代の思い出話や、現在何をしているかなどをツマミに酒を飲み続けた

『あー、俺おかわりもらってくる』

「彼方少し飲みすぎじゃないか?」

『平気。そんな飲んでないよ』

少しフラフラしながら彼方はバーカウンターへと消えていった

「大丈夫かのお」



そして数分後



「あれー?彼方どこいったぁ!」

「丸井君、飲みすぎですよ」

「柳生も飲めよー!烏龍茶じゃなくってよぉ!!」

柳生に絡む丸井
大分出来上がっているようだ

「そういえば酒取りに行ったきりじゃのお」

「俺探してこようかな」

「心配だな、俺も行こう」

仁王、幸村、弦一郎の3人でカウンターへと向かった

「彼方くん超かっこいい!!」

「うんうん!!彼女とかいないの!!」

『ん?いないよ?』

「じゃああたし!彼女になる!!」

「何言ってんのよ!私よ!」

『喧嘩しないでよ、みんな好きだからさ』

「「「きゃー!!」」」




「どういうことじゃ」

「この状況は見た事無いね」

「彼方!!」


3人の目の前には、ソファに座り、数人の女子(と若干男子)をはべらせている彼方の姿があった

『ん?弦一郎』

「全く!貴様酔ってるな!!こっちへ来い!」

女子の間から彼方を無理矢理引っ張り出す弦一郎

『弦一郎!!』

「なっ!おい!?」

「「!?」」

「「「きゃー!!」」」

弦一郎に腕を引かれた彼方はそのまま弦一郎の首に腕をまわし、
唇にキスをした

当然周りにいた人たちは驚愕の表情だ

「(酔うとこうなるから嫌なんだ)もう帰るか」

『いやだ!まだ飲む!席戻るからさあ』

彼方にキスされたにも関わらず、冷静に彼方を抱きとめる弦一郎
過去にも何度か同じようなことがあったらしい
故にキスなど慣れっこなのだ

当の彼方は『運んで』と、弦一郎にしがみついたままだ

「いつもはこんなやつじゃないんだが・・・悪いな連れて行く」

驚き固まる女子(一部男子)たちに頭を下げ、もとの席まで彼方を運ぶ弦一郎だった






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